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トランプ、ドイツ銀、原油価格……。マーケットのリスクをおさらいしておく

HARBOR BUSINESS Online 9/30(金) 9:10配信

 9月21日は、日米の金融政策に関して重要な日であった。

 日本銀行は日銀金融政策決定会合で、新しい枠組みである「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入を決定した。その主な内容は、第1に、長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」、第2に、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」である。(参照:「金融緩和強化のための新しい枠組み:『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』」※pdf)主要な操作変数が、「量」から「金利」へと変更された。

 そして、米連邦準備理事会(FRB)は、米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利据え置きを決定した。労働市場が一段と改善しており、年内に一回の利上げを行う可能性を強く示唆した。

 9月21日まで、FRBの要人発言や経済指標の発表から、FRBによる利上げの可能性が高まると、ドル高となり、米長期金利が上昇し、新興国・資源国通貨が下落し、原油やコモディティの価格が下落する傾向が見られた。一方、利上げの可能性が低くなると、上記の逆の動きが見られた。9月21日の利上げ据え置き決定により、マーケットが崩れることは無かったが、もしも利上げしていたら、新興国・資源国への悪影響は大きかっただろう。すなわち、9月21日時点では、米国の利上げに対する新興国・資源国の「耐性」は、まだ、ついていなかったと言えるだろう。

 日銀が従来のマイナス金利付き量的・質的金融緩和の効果や副作用について「総括的な検証」を行った上で、何もしなかったとしたら、あるいは、FRBが利上げを強行していたら、マーケットは拙い状況に陥っていただろう。以下、日米中央銀行の金融政策の他に、最新のマーケットに潜むリスクを点検してみたい。①米大統領選のトランプ候補当選リスク、②ドイツ銀行の破たんリスク、③原油価格変動リスクを対象として、考えてみたい。

◆米大統領選のトランプ候補当選リスク

 米大統領選であるが、マーケットにとって、トランプ候補とクリントン候補を比較して、どちらが好ましいか?

 トランプ候補は、保護主義的であり、ハト派のイエレンFRB議長の金融政策に反対の立場であり、マーケットにとっては、トランプ候補は好ましいとは言えないだろう。

 一方、クリントン候補は、薬価の高騰問題の解決が製薬会社へ影響することは考えられるが、イエレンFRB議長の金融政策に反対しているわけではない。マーケットにフレンドリーなのは、相対的な評価となるが、クリントン候補であり、もしもトランプ候補が当選すれば、マーケットへの(下方への)インパクトは大きいだろう。

 9月26日(日本時間27日)、米大統領選の第1回テレビ討論会がニューヨーク郊外ヘンプステッドで行われた。討論会終了後にCNNテレビが行った世論調査によると、クリントン氏の方が良かったが62%で、トランプ氏の27%を大きく上回った。(参照:Breaking News)

 大統領候補の討論会は、10月9日にミズーリ州セントルイス、19日にネバダ州ラスベガスで行われる。

◆ドイツ銀行の破綻リスク

 現在、最も注意すべきは、ドイツ銀行の破綻リスクである。社債や国債、貸付債権などの信用リスクに対して、保険の役割を果たし、信用リスクを回避する手段として破綻保険証券「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)」というものがある。9月29日時点、ドイツ銀行のCDSは237と、高い数値となっており、破綻懸念が増している。

 6月29日、米連銀が大手国際金融機関33銀行の自己資本計画書に対する評価、いわゆる、ストレステストを実施したが、ドイツ銀行は不合格であった。「保有資産を過大に評価している。リスク管理および管理体制に欠陥がある。その結果、ドイツ銀行の提出した自己資本計画は信頼性に限界がある」と、ドイツ銀行は評価された。

 ストレステスト対象33行の内、30行が合格した。モルガンスタンレーが条件付き合格で、2016年末までに内容を修正して再提出が求められた。ドイツ銀行の米国法人およびスペインのサンタンデール銀行の米国法人が不合格で、自己資本計画を却下されている。

 9月29日時点、ドイツ政府は、住宅ローン担保証券(MBS)の不正販売をめぐり米司法省から最大140億ドルの支払いを求められているドイツ銀行の救済を否定している。英生保事業の売却によってドイツ銀行の経営不安もやや落ち着いているが、マーケットに対してドイツ銀行は大きなリスクとなっている。

◆原油価格変動リスク

 9月28日(日本時間29日)、石油輸出国機構(OPEC)は、アルジェリアの首都アルジェで臨時総会を開き、加盟14カ国の原油生産量を日量3250万~3300万バレルに制限することで合意した。金融危機後の2008年以来、約8年ぶりにOPECが減産することになる。

 減産の合意という結果に、サプライズを感じた人も多いと思われる。これまでイランが増産余地を確保したいと主張してきており、減産の合意は難しいと予想されていたからだ。日経新聞によれば、OPEC加盟国のすべてが減産するのではなく、一部の加盟国に例外措置を認める方向であるようだ。増産を続けたいイランや、政情不安などで産出量を大きく落としているリビアとナイジェリアについても、例外措置を認める方向。減産のかなりの部分をサウジアラビアが担う必要が出てくると見られている。

 原油価格変動リスクに関しては、資源国・新興国にとっては、原油価格が高い方が良いと思われる。原油価格の下落は、資源国・新興国の通貨安や財政悪化につながる。OPECの減産合意により、原油価格上昇および資源国・新興国の通貨高へと進むため、年内の米国の利上げに対する「耐性」、すなわち、「抵抗力」が高まり、FRBが利上げしても、資源国・新興国発のマーケットの混乱を最小限にくい止めることができるのではないか。

 FRBの利上げが最もマーケットに影響を与えるものと思われるが、米大統領選、ドイツ銀行、原油にも注意を払いたい。

<文/丹羽唯一朗>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/30(金) 9:10

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