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プロが証言する! 「転職の35歳限界説」の真相

NIKKEI STYLE 10/1(土) 7:00配信

 一昔前は「有利な転職ができるのは20代のうち」「35歳を過ぎると転職は難しくなる」と言われていました。今もそう思い込んでいる方は少なくないようです。しかし、転職する層が「管理職」や「経営幹部」などに広がっていくのに伴い、年齢の壁は崩れてきています。30代後半以降の方々にどんな活躍の場が広がっているのか、昨今の傾向と事例をお伝えします。
「求人マーケット」は表には出なくても存在する
 転職エージェントに相談に訪れる方々の中には、キャリアコンサルタントに対し、こんな不安を口にする方が少なくありません。
 「30代後半になると、やはり転職は厳しいでしょうか」
 「自分はもう42歳ですから、求人はあまりないですよね」
 これは、以前に言われていた「35歳が転職の限界」とする説にいまだにとらわれているパターンです。しかし、転職市場ではそれはすでに過去のものとなっています。
 もちろん、不安に思う気持ちも理解できます。転職を検討しはじめたとき、まず「リクナビNEXT」などの大手の転職サイトで情報収集をしてみると、「20代が多く活躍する職場」といったフレーズを打ち出す募集広告が多く目につくでしょう。そこで「やはり年齢が高いと受け入れられないのか」と不安を感じるかもしれません。
 しかし、そのようなメディアを通じた公募とはまったく別の「求人マーケット」が存在します。何らかのスペシャリティーを持つ人材、マネジメントノウハウを持つ人材のマーケットです。そうした「即戦力」「エグゼクティブクラス」の人材採用は、私たちのような転職エージェントを通じて行われるケースが多いのですが、ここでは年齢を問わず転職に成功しています。
「一歩後ろにいる企業」で、自分の価値を発揮できる
 最近の採用の傾向・事例について、実際に採用現場を見ているキャリアコンサルタントたちの声を聞いてみましょう。
 リクルートエグゼクティブエージェントで、経営幹部の採用支援を手がける渡部洋子さんは、「管理部門のスペシャリストやマネジャー経験者は、『半歩~一歩後ろを歩んでいる会社』に目を向けると活躍のチャンスがある」といいます。
 会社は成長ステージに応じて、経理・財務・人事・法務などあらゆる面で「管理の仕組み」を整えていく必要があります。例えば、昨今ありがちなケースを挙げると「グローバルの売上比率が高まり連結はしているが、ガバナンスがちゃんと働いていない」という企業は多いようです。
 今まで自分がいた会社では当たり前に機能していた仕組みを、成長途上の会社ではこれから整えようとしている。その導入から運用を担える人材として、「先行企業で経験を持つ人」が求められ、重宝されるというわけです。
 半歩~一歩後ろから走ってくる企業では、自身の経験・スキルが大きな価値と認められる――これに気付いていない人は意外に多いようです。
 もちろん、管理の仕組み作り以外でも、「今の会社では皆当たり前にしていることが、別の会社では希少な価値として歓迎される」というケースは多々あります。40代・総合商社出身の方の事例をご紹介しましょう。仮にAさんとします。
 Aさんは、総合商社のエネルギー関連部門に属し、海外駐在も含め多数のプロジェクトを経験してきた人物。実績が評価され、経営企画部門への異動辞令を受けました。いたって順調なエリートコースです。ところが、Aさんには抵抗感がありました。デスク上で巨大プロジェクトのキャッシュフロー計算や計画策定に取り組むよりも、「現場」で腕まくりをして推進していくほうがおもしろいし、自分らしいと考えていたのです。
 転職活動に踏み切ったAさんが選んだのは、エネルギー分野のベンチャー企業。設備建設に際しての地権者や自治体との交渉、設備・機器の買い付け、事業計画の策定、さまざまな協力者を巻き込んでのプロジェクト推進など、これまでの経験をそのまま生かせるステージです。商社時代は「自社社員は皆やっていること」でしたが、新しい会社では「Aさんにしかできないこと」。多大な信頼を寄せられ、活躍していらっしゃいます。
 Aさんは、現場に立ち続けたいという希望を実現しただけでなく、「仲間から頼られる」「事業や会社に大きな影響を及ぼし、成長に貢献する」というやりがいを手にしたのでした。
メーカーなら、分野をまたいでの転職チャンスも
 製造業経営幹部職への転職支援を行っているコンサルタント、山室広幸さんは、「海外拠点のマネジメント経験があれば、電機から機械、機械から化学など、分野を越えた転職も可能」といいます。
 多くの企業がアジアを中心とした海外展開を図る中、海外の子会社やグループ会社で財務への責任を担い、組織マネジメントを行った経験を持つ方は、業界の枠を越えて転職できる可能性が広がっています。また、技術系については、コアスキルを同業界で生かすだけでなく「異分野で活用する」という選択肢もあります。
 例えば、電機メーカーで組み込みソフトを手がけてきた方であれば、自動車業界に移り「車載」の分野へ転身する道も。また、家電メーカーでの筐体設計経験者が、PB製品開発に力を入れている大手流通企業に転職し、商品設計を担うという事例も生まれています。
 今の会社では活躍の場を失いつつあるコアスキルが、異業界の「旬」な分野で生かせる可能性もありますので、ぜひ視野を広げていただきたいと思います。
 昨今、話題になっている「AI(人工知能)」「IoT(インターネット・オブ・シングス)」「M2M(マシン・ツー・マシン)」といったキーワードでも、各種メーカーから知見を持つ人材を求める声が出てきています。新しく部門を設置し、その責任者やメンバーを募集する動きも見られます。
 ただし、募集する側も、どのような技術を用いてどのようなプロジェクトを推進するかなど、まだまだ手探り状態の企業が多いようです。新技術を生かして会社や事業をどのように変えていけるのか、その全体図を描ける方が求められています。
 ――このように、事務系/技術系問わず、企業側が求める経験・スキルを持つ人物であれば年齢は問わないという求人はたくさんあります。今後、「管理職」「経営幹部」の転職マーケットが広く浸透していくにつれ、さらに幅広い年代の方に「再スタート」のチャンスが拡大していくでしょう。
 「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は10月7日の予定です。 連載は3人が交代で担当します。 *黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント *森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント *波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント社長
波戸内啓介(はとうち・けいすけ)リクルートエグゼクティブエージェント社長 1989年リクルート入社。営業部門、企画部門責任者を経て、リクルートHRマーケティング関西など、リクルートグループの代表取締役社長を歴任。2011年リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長に就任。 リクルートエグゼクティブエージェント(http://www.recruit-ex.co.jp/)

最終更新:10/1(土) 7:00

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