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エネルギー源は「妄想」。糸井重里氏を感嘆させたお母さんの「平気力」 『すごいお母さん、EUの大統領に会う』 (尾崎美恵 著)

本の話WEB 10/1(土) 12:00配信

「すごいお母さん」が四国・香川にいると、「ほぼ日刊イトイ新聞」で大ブレイク。その「お母さん」こと尾崎美恵さんが初めての著書を刊行しました。
四国の一主婦が、学んだフランス語を武器に四国の魅力を欧州に売り込む。
夢をあきらめない、エネルギッシュな生き方の秘訣はどこにあるのか聞いてみました。

――本のタイトルが「すごいお母さん」と「EU大統領」という異色の組み合わせで興味をそそられます。本当にEUの大統領に会いに行かれたのですか?

 はい、前欧州議会議長のヘルマン・ファン=ロンパイさんにお目にかかりました。知的でとっても素敵な方でした。今年(2016年)、英国の離脱で世界中の話題になったEU(欧州連合)ですが、私がブリュッセルに行ったのは2014年の1月です。ファン=ロンパイさんは俳句の世界では有名な方で、素晴らしい句集を2冊出されており、東日本大震災の後、日本人に向けてこんな句を詠まれています。「嵐去り 後に残るは 優しき心」

 もともと私は2008年に「四国夢中人」というNPOを立ち上げ、その企画でフランス人のブロガーを四国に毎年招待していたのですが、2012年のテーマが「俳句巡り」だったんです。今、世界中で俳句は静かなブームになっており、このときも四人の欧州俳人を呼んで正岡子規や尾崎放哉、種田山頭火の史蹟をめぐりながら俳句を作ってもらいました。とても立派なフォト句集が出来上がったので、それをファン=ロンパイ大統領に差し上げようと思い立ったわけです。フランス語で手紙をお送りしたら、「喜んでお会いしたい」とランデブー承諾のお返事が来ました。もう、行くしかないでしょう。

 でも実をいうと、日にちだけは決まっていたものの、時間と場所が知らされたのは、私が羽田空港でチェックインを済ませた後でした。だから、本当に「会えるんだ」と実感が湧いたのは、ブリュッセルに向けて飛行機が離陸してからでしたね(笑)。

――娘さんがそのことをご自分のブログに書かれたのが、「ほぼ日刊イトイ新聞」でインタビューが掲載されるきっかけになったと聞いています。

 帰国して1カ月くらい経ったときに、長女が他に何にも書くことがなく、母親のことでも書こうかと思ったのだそうです。出産直後だったので授乳しながら眠いのを我慢しつつ「ママ、EUの大統領に会ってくるわ!」というタイトルの文章をブログにアップした。そうしたら翌朝、「すごいアクセス数になっている」とびっくりして電話がきました。ふだん書いているものとは桁違いなアクセス数だったそうです。それが、どんどんSNSで拡散し、「ほぼ日」の編集者の目に留まり、面白そうなお母さんがいるから会いに行ってみようということになったとか。予期せぬ反応に、親子共ただただ呆然でした。

――「ほぼ日」のことはご存知でしたか? 「すごいお母さん、EUの大統領に会う」というタイトルで数回に分けて掲載され、人気コンテンツとして長く紹介されています。

 もちろん糸井重里さんのことは存じ上げていましたが、「ほぼ日」はまるで知りませんでした。糸井さんには「ほぼ日」の記事が話題になってから、お目にかかりました。今回の本にも帯文を書いてくださったんです。「勇気より、平気がすごい。」というコピーで、よくぞ私の本質を一行で表現してくださったと感動しています。

 インタビューに来てくださった「ほぼ日」の女性編集者が同じ丸亀の出身だったので、つい盛り上がり、いろいろ話したことが、また多くの方に読まれたようで……。

 昔から丸亀で出会った外国人に声をかけて自宅に呼んだり、家族が帰宅するまで、有線で英語やフランス語を流し、外国のポスターを貼って「家の中だけ外国」にしていた話などがウケたようです。そう、私は43歳のときに岡山大学大学院の仏文科に入学したのですが、そのときの話なども。

 長男の通う幼稚園のシスターがフランス人で、小さなサークルでフランス語を習っていました。それが、父の死をきっかけに「このまま何もしないでは死ねない!!!!」と思って、いきなり岡山大学を訪ねたんです。アポなしでたまたまノックした部屋にいらした教授がいい方で、「香川県の丸亀から来た主婦です。主婦でも大学院で勉強できるものですか?」と聞いたら、「もちろんできますよ、試験、ぜひ頑張ってください」と言ってくれました。その言葉を励みに4カ月間死に物狂いで勉強して、大学院に合格したんです。

 長女に言わせれば、「その時から、もう母は空から降りてこない」ということに(笑)。

――「四国夢中人」はどんな活動をしているのですか?

 国籍、世代、業種を問わず、いろんな人を巻き込んで四国を元気にしていこうという活動です。基本的には私一人で、人手もなくお金もないのですが、企画を立て、駆けずり回っていろいろな援助をかき集め、実現してゆくうちに、さまざまな人たちがサポートしてくれるようになりました。

 最初にお話ししたように、海外から四国に興味を持ってくれるブロガーを呼んで、茶の湯や盆栽、俳句、遍路などをテーマにツアーを組み、その魅力をブログやSNSで発信してもらう。あるいは、フランス人なのに日本の鉄道に異常に詳しくガイドブックまで作ってしまったフリーペーパーの「鉄ちゃん」編集長や、日本の大衆演劇を研究している大学の先生を招聘するような企画をしています。

 一方で、パリの「ジャパンエキスポ」に四国を紹介するブースを出展したり、四国遍路の講演をパリ日本文化会館で開催したり。昨年(2015年)の2月にはテロ事件の直後だったのに310人入る大ホールが満員になりました。フランス人は驚くほど「四国遍路」に興味を持っているんです。合わせて開催した「讃岐うどん」のワークショップも大人気だったんですよ。

 まあ、こうした活動をすべて、ほとんど「タダ」で成り立たせる、というのが「四国夢中人」代表である私のミッションといえます。

 毎回ゼロから新たなことにチャレンジするので、すべてが大変ですが、活動に参加したフランス人たちが、今度はフランスや日本で開催するプロジェクトを無償でサポートしてくれるようになる。そんなふうにサポーターが増えていくのが、一番うれしいことです。詳しくは、ぜひ本を読むか、サイトを見てください(四国夢中人)。

――なぜそんなにお元気なのか、そのエネルギー源を教えてください。

 エネルギー源は、妄想を絶やさないこと。

 妄想を声に出し、形にしていくことで、自分の中からパワーが湧いてくるのかもしれません。

 今、新しいプロジェクトを始めつつある瀬戸内海の島々には、私よりもずっと高齢で元気な方々がたくさんいます。負けていられないです!

 四国に一度もいらしたことのない方も多いでしょうし、瀬戸内海の島を訪れた方はもっと少ないと思います。放っておけば住む人がどんどん減少してしまう瀬戸内海の島々に人を呼ぶにはどうすればいいのか。

 名づけて「瀬戸内海をパラダイスに」計画。ぜひ、私の妄想に力を貸してください!

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最終更新:10/1(土) 12:00

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TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。