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『アングリーバード』プロデューサーが語る、日米アニメの違い「アメリカは一段階遅れている」

リアルサウンド 10/1(土) 18:23配信

 『怪盗グルーの月泥棒 3D』のスタッフが手掛けるアニメーション映画『アングリーバード』が本日10月1日から公開された。全世界30億ダウンロードのゲームアプリを映画化した本作は、飛べない鳥たちが平和に暮らす島・バードアイランドを舞台に、怒りんぼうのレッド、おしゃべりでお調子者のチャック、身体はデカいがビビリのボムの3羽が、ピッグ軍団に盗まれた大切な“タマゴたち”を取り返すために、大冒険を繰り広げる模様を描く。リアルサウンド映画部では、本作のプロデューサーであり、『怪盗グルーの月泥棒 3D』でもプロデューサーを務めたジョン・コーエン氏にインタビューを行い、本作の制作理由や、アメリカと日本のアニメの違いを語ってもらった。

ーープロデューサーとして、どのような形で制作に携わったのですか?

ジョン・コーエン(以下、ジョン):僕の役割は、制作の全体図を捉えながら、クリエイティブな面で作品をプロデュースしていくことなんだけど、今回はオリジナルのストーリーを考えて、脚本にするところまで行っているんだ。それ以外にも、監督やキャストなどのスタッフ決めから、マーケティングや配給に至るまでのすべてを把握する必要があって……2010年から『アングリバード』の企画は動き始めたんだけど、これまで長い年月をかけて制作していったんだ。

ーー原作はモバイルゲームということもあり、物語を膨らませていくのは大変な作業だと感じました。

ジョン:僕がストーリーを考えるにあったて最初に行ったことは、『アングリーバード』のどんなところがみんなに支持されているのか確認する作業だった。ゲームには様々な魅力があると思うんだけど、特にみんなが良いと思っていたのは“鳥なのに飛べないこと”や“それぞれ個性的な能力を持っていること”、あとは“敵と戦うためにパチンコを使用すること”だったんだ。逆に言えば、そこ以外の部分については、ほとんど白紙に近い状態だったから、自由にオリジナルの世界を作ることができた。新しいキャラを登場させることもできたし、既存のキャラクターに個性的な性格を与えることで、ゲームの良いところを踏襲しつつ、映画ではまた一味違った世界を描けていると思うよ。ファンの多い作品なのに、新しいクリエイティブにもチャレンジすることができたことは、とてもラッキーなことなんだ。

ーーバードアイランドに住む鳥たちは、レッドを除いてほぼ全員が怒らない鳥たちでした。疑い深く怒りっぽいレッドと、いつもハッピーな鳥たちの考え方のコントラストが面白かったです。

ジョン:バードアイランドはハッピーな鳥たちしか住んでいない島で、彼らにとっては怒る鳥なんて存在してはいけないような存在なんだ。だから、物語の序盤でレッドはアンガーマネジメントクラブ(怒りをコントロールできない人のためのセミナー)に入れられてしまい、そこでチャックやボムと出会う。現実世界で最悪なことは刑務所に入れられることだと思うんだけど、それに匹敵するくらい、あの世界ではアンガーマネジメントクラブに入れられることが最悪なことなんだ。でも、僕がすごく面白いと思うのは、そんな風に社会にうまくハマれないはみ出し者たちが、物語の中心にいるということ。普段なら絶対に関わり合わないだろう彼らが、事件をきっかけに一風変わった家族みたいな関係を築いていき、卵を取り返すために力をあわせて頑張っていく展開はすごくワクワクするよね。

ーー鳥たちがそれぞれ持つ特殊能力をはじめ、性格もバラバラで面白かったです。アメリカのアニメーション作品は、多様性を意識していると強く感じるのですが、あなたはどう感じていますか?

ジョン:今回の作品もダイバーシティを意識しているところはある。作り手である僕らとしては、年代や性別に関係なく、全世界の人々に観てもらえることを考えているからね。多様性や家族愛などの強いメッセージ性を作品に持たせることで、子どもたちがそこから学んで成長していくことは嬉しく感じているよ。でも、確かにそういったメッセージ性も大事だが、僕自身の映画経験からすると、作品が持つ創造性も重要だと考えている。映画を体験してもらう人に、何かインスピレーションを与えられるようなクリエイティビティが、どの作品にも備わっているべきだと思うんだ。僕自身も、今まで見てきた映画から与えられたインスピレーションが、映画作りの原動力になっているからね。

ーー『怪盗グルーの月泥棒』では、ミニオンズという大ヒットキャラが生まれましたね。

ジョン:映画の中心に魅力的なキャラクターがいれば、そのキャラと観客の感覚を通じ合わせることができるんだ。怪盗グルーの場合は、グルーとミニオンズ、あと三人の女の子たちを通して、観客とコネクションを持つことができたんだけど、劇場でその光景を見た時は思わず感動してしまったよ。今回の作品においても、コミュニテイのはみ出し者のレッドが、あることをきっかけにリーダーとなり、困難を乗り越えた末に友達になっていく。怪盗グルーの時は観客の予想を上回る感動を与えることができたと思っているのだけど、おそらく本作も、想像以上の感動に包まれて、みんな劇場を後にするんじゃないかな。

ーー画面いっぱいに写っているたくさんの鳥や豚が、個々にきちんと差別化されて描かれていたことに驚きました。アメリカでは、どんどんアニメーションのテクノロジーが発展していると思いますが、それによって表現に差異を付けるのが難しくなっている面もあるかと。これからのアニメーションには、どんなことが課題だと考えていますか?

ジョン:アニメーションの技術は常に進化していて、次から次へと新しいものが生まれてくる。そして、どんな表現にも対応できるだけの技術も、すでに揃っていると言えるね。これからなにができるのか考えた時に思うのは、視聴者のタイプにとらわれず、色んなジャンルの作品を作ることなんだ。具体的に言えば、大人向けのアニメなどがもっとできればいいと思っている。そういう意味では、アメリカと比べて日本のアニメーションはすごく進んでいるよね。色んな年代に向けた多種多様な作品を作ることができている。日本と比べると、アメリカのアニメーションは一段階遅れていると感じるよ。

ーー日本のアニメをどのように評価しているのですか?

ジョン:『千と千尋の神隠し』『時をかける少女』など、日本のアニメーションは大好きだよ。作品のアート性が高いと思うし、人の目を引く細やかな演出が特に素晴らしいね。『となりのトトロ』に出てくる少女たちの、些細な動きや描写はすごく魅力的に感じたよ。言葉にできない微妙なニュアンスではあるのだけど、そこに僕らの作品との大きな違いを感じるんだ。これは僕が日本のアニメの大ファンだから言えるのかもしれないが、僕にとっては手でドローイングされる古典的なセルアニメが、大きなベンチマークになっているのかもしれないね。

泉夏音

最終更新:10/1(土) 18:23

リアルサウンド

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