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"パンクロック"という言葉を定義づけたザ・ラモーンズ―その結成から解散まで

ローリングストーン日本版 10/1(土) 16:00配信

今から40年前、1枚のアルバムがリリースされた。『ラモーンズの激情』―これこそが"パンクロック"という言葉を定義づけた作品だった。パティ・スミス、テレヴィジョンらとともに、ニューヨーク・パンクを牽引したザ・ラモーンズ。ジョーイ、ディー・ディー、ジョニー、トミー、そのオリジナルメンバーはもうこの世にはいない。

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ステージ上では団結そのもの。家族といってもよかった。4人の男はライダースジャケット、擦り切れたジーンズ、スニーカーという同じ衣装をまとい、同じダークカラーの頭で同じ姓を名乗った。まさに一心同体。ライヴでは曲間に何も挟まないことが多く、ベースのディー・ディー・ラモーンが「ワンツースリーフォー」と狂ったように早口に叫んで次のナンバーのテンポを決める時でさえ間を置かなかった。ギターのジョニー・ラモーンとドラムのトミー・ラモーンが超高速で力強いリズムを刻むと、オーディエンスは胸にチョップを受けたかのように、のけぞりそうになった。ジョニーとディー・ディーは股を大きく開いてプレイし、威圧感を与えた。その間に立っていたのがリードヴォーカルのジョーイ・ラモーン。ノッポのシンガーは濃いサングラスをかけ、ボサボサの髪をその上まで垂らして冷たい世間から身を守りながら、バンドの陽気で騒々しい不遇と悲痛の物語を歌った。ステージで共にプレイするラモーンズには楽しみがあり、スピリットがあり、明らかな共通点があった。

だが、ステージを離れると仲間ではなくなった。全員でバンに乗り込むが、ホテルや次のライヴ先まで無言で移動した。特にジョニーとジョーイのふたりは、バンド活動が続いた22年間の大半で口をきかなかった。パンクの生みの親ではなくとも、初期ロックンロールにインパクトを与えたエルヴィス・プレスリーと同様、パンクを事実上形成したグループなだけに、なおさらその真実は痛ましかった。ラモーンズはそのスタンス、サウンドと姿勢、王道のポピュラーミュージックへの反骨心と拒絶により、ビートルズより後に出たどのバンドよりも多くのバンドをインスパイアした。セックス・ピストルズ、クラッシュ、ニルヴァーナ、メタリカ、ミスフィッツ、グリーン・デイをはじめ、彼らのサウンドや信念に大きな影響を受けたバンドは枚挙にいとまがない。ラモーンズが作り上げたモデルは、ほぼ誰もが追従できるものだった。それは基本的なコード、挑発的な態度、そしてノイズで荒廃あるいは覚醒を招くというスタイルだった。

功績を残したが、その代償は大きかった。音楽界の大半は彼らを拒否、時として猛烈に拒絶した。単なる冗談のように見られることもあった。非常にメロディアスな曲を作っていたが、シングルでもアルバムでもこれといったヒットには恵まれなかった。無関心と数々の障害の中で何年も活動を続けたが、ふたりのメンバー間の亀裂は深まる一方だった。今でこそラモーンズは敬意を払われるようになり、銅像が立てられ、通りにその名がつけられ、記念館が建設されている。大統領のエンブレムを黒くした、彼らのロゴ入りTシャツを着たファンもあちこちで見かける。だが、4人のオリジナルメンバーは既にこの世にいない。最近になって評価が見直されたことを、誰ひとり喜ぶことができなかった。ラモーンズというバンドは世界を変え、そして去っていった。

ラモーンズのメンバーに血縁関係はなかったが、共にニューヨークのクイーンズ区フォレストヒルズという郊外の街で成人した。この共通点は大きかった。ユダヤ人の中流階級が大多数を占める街で、反逆的な若者のけだるさやいら立ちが醸成された。ラモーンズのメンバーはプレスリー、ビートルズ、ローリング・ストーンズといった50年代や60年代のヒーローより数年若かった。そのため、バブルガム・ポップ、初期へヴィメタル、サーフミュージックなど、幅広い分野からヒントを得ることができた。それ以上に、オリジナルメンバーのほとんどが人に支配されて過ごした経験を持ち(それは時に人を狼狽させ、さらには恐怖さえ抱かせるものだった)、あるいは自分の居場所はここではないという根強い思いを抱いていた。「ラモーンズみたいなバンドに入る人間は、安定した環境で育っていない」とディー・ディーは書いた。「だって、パンクロックはそこまで洗練されたアートの形態じゃないからな。自分のことをクリエイティヴだと思っている、怒ったガキどもから生まれたものなんだよ」

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最終更新:10/1(土) 16:00

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