ここから本文です

セブンアイ、系列の百貨店サテライトは半分以上を閉鎖予定。オムニチャネル化の余波か?

HARBOR BUSINESS Online 10/2(日) 9:10配信

「そごう柏店」がついに閉鎖された。セブン&アイホールディングスの旗艦店ともいうべき大型百貨店、筆頭にの閉店に至るまでは前回の記事で追ったとおりだ。(参照:「そごう柏店がついに閉店。止まらぬセブンアイ系百貨店の閉店ラッシュの背後にあるもの」)

 しかし、そごう・西武が閉店させるのは大型百貨店のみに留まらなかった。大型店に加えて、2017年末までに全国に展開する百貨店の中小型店・サテライトショップのうち、半分以上にあたる10店舗を閉鎖することも発表しているのだ。

 こうした動きに対して、業界では驚きの声があがっていた。

◆「中小サテライト店舗」増加の流れに反するセブンアイ

 郊外のショッピングセンターや、百貨店がない街の駅前で、小型の百貨店を見かけた人も多いであろう。

 近年、百貨店業界では、中小型店の展開に力を入れる企業が増えている。

 その代表格は、三越伊勢丹グループが展開する「エムアイプラザ」「イセタンミラー」や、髙島屋が展開する「髙島屋フードメゾン」などであるが、地方百貨店においても藤崎(仙台市)、天満屋(岡山市)、井筒屋(北九州市)などが中小型店を急速に増やしているほか、百貨店系列のスーパーマーケットが事実上の百貨店のサテライト店として機能し、百貨店の商品を購入できたり、贈答品を承っているという事例も少なくない。

 それだけに、そごう・西武の動きは、時代の流れと逆行するものであるとも言え、さらに、「そごう・西武」は親会社であるセブンアイホールディングスの店舗内への出店を行うことで出店経費を押さえつつ好立地の小型店を獲得することに成功していたのだから、驚きの声があがることも無理はない。

 それでは、セブンアンドアイホールディングスが「小型百貨店事業の大部分から撤退」する決め手となった要因は、一体何であろうか。

◆小規模店展開に失敗していたそごう・西武

 そごう・西武の中小店舗の歴史はまだ浅く、その誕生は2011年のこと(それ以前の1990年代まではそごう・西武ともに地方都市駅前を中心に小型店を数多く出店させていたものの、いずれも経営再建の過程で2000年ごろに閉店していた)。

 2011年4月にセブンアンドアイ系列のショッピングセンター「アリオ上田」(長野県上田市)に小型店1号店となる「西武 上田」を開設したのが始まりだ。なお、なお、1号店に上田を選んだのは、上田市が当時セブンアンドアイホールディングスCEOであった鈴木敏文氏の出身地に近く、またかつてアリオ上田の出店地そばに西友が運営する百貨店「上田西武」が出店していたという縁もあり、故郷に百貨店を復活させたいという鈴木会長の想いもあったと言われている。

 以降、イトーヨーカドーの店舗内を中心に、仙台市泉区、埼玉県久喜市、東京都昭島市など、百貨店がなかった都市にも出店を行うことでそごう・西武の新たな顧客を獲得することを目指し、2016年に「セブンパークアリオ柏」(柏市)に出店した「そごう・西武 柏」まで、「西武」もしくは「そごう・西武」の屋号で中小店舗13店を展開してきた。しかし、一部店舗を除いて思ったように収益が伸びず、出店開始から僅か5年で縮小へと舵を切ったことになる。

◆中小店舗切り捨てと「オムニチャネル化推進」

 結果的にそごう・西武の中小型店は収益が伸びなかったとされるものの、そごう・西武にとっては百貨店店舗から遠隔地の顧客獲得に繋がり、既存の大型百貨店への来店客を増やすことに繋がるほか、イトーヨーカドーとしては、百貨店で専売される高級品やこだわりの商品をスーパーマーケットやショッピングセンターでも販売することができるため、一定のメリットがあったと考えられる。

 その一方で、セブンアンドアイホールディングスは、2015年11月より百貨店を含むすべての店舗で取り扱っている主な商品を、インターネットで注文してイトーヨーカドーやセブンイレブンなどの系列各店舗の店舗で受け取ることができるという「オムニセブン」を開始した。これにより、百貨店の商品をわざわざ店頭に並べなくともオムニセブンの百貨店商品売場「e.デパート」で購入できるため、グループ内では採算性の低い「そごう・西武」の事業縮小(というより、セブンイレブン以外の小売事業縮小)の一環で、開設したばかりの殆どの中小店舗を閉鎖しても問題ない、という判断に至った可能性も考えられる。

 しかし、従来の百貨店の顧客がこれを機に百貨店の商品をインターネットで購入することが増えるとは考えづらく、また、品揃えが限られる中小店舗こそが「オムニチャネルへの窓口」として機能していたという側面もあるため、結果的にそごう・西武の多くの顧客と事業の多様性が失われることになってしまった。

 先進国のなかでも、大手小売りのEC対応が遅れているとされる日本。セブンアンドアイホールディングスの事業計画では、2016年2月期に1,418億円だった「オムニセブン」の売上高を今後3年間で7倍にまで大きく増やす計画だ。

 しかし、実店舗を極端に縮小することで、身近な実店舗が「セブンイレブン」のみになってしまったならば、百貨店の顧客になりうる層を「オムニセブン」の百貨店商品売場「e.デパート」へと誘導することができるかどうかは疑問である。こうしたかたちでEC事業の拡大を推し進めるセブンアイの経営姿勢は、果たして本当に将来を見据えたものであると言えるのであろうか。

 なお、中小型店舗のうち、閉鎖する百貨店の代替店舗や、そごう・西武の中小店舗群のなかでは最も規模の大きい「そごう・西武 武蔵小杉」など3店舗は今後も営業を続ける。

 閉鎖店舗の一覧はこちら(参照「都商研ニュース」:「そごう・西武、中小10店舗を2017年夏までに閉鎖へ-仙台泉、葛西、上田、松本など」)を参照。

<取材・文・撮影/都市商業研究所>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中

・エブリワン・ココストア九州、2016年末までに「RICストア」に改称-人気のベーカリーも存続

・プランタン銀座、2017年3月より「マロニエゲート銀座」に統合

・スターバックスコーヒー、山口市に出店へ-全県庁所在地への出店果たす

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:10/7(金) 14:57

HARBOR BUSINESS Online

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。