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「プロレスラーという夢をまだ追い続けている」全日本プロレス最年少三冠王者・宮原健斗【最強レスラー数珠つなぎ vol.2】

週刊SPA! 10/2(日) 9:10配信

 「最強レスラー数珠つなぎ」――毎回のインタビューの最後に、自分以外で最強だと思うレスラーを指名してもらい、次はそのレスラーにインタビューをする。プロレスとはなにか。強さとはなにか。この連載を通して探っていきたい。

⇒【写真】宮原健斗氏

 この連載を始めるに当たり、必ずいつか名前が挙がるであろうと確信していた選手の名前が、2回目にして挙がった。全日本プロレス最年少三冠王者・宮原健斗。

 漫画『SLAM DUNK』にこんなシーンがある。スポーツ誌の女性編集者が、新米編集者に聞く。“王朝”山王工業の河田雅史をどう評価するか? 新米の答えは、「大っきくてウマい」。素人丸出しの答えに女性編集者の怒りを買うのだが、宮原の試合を初めて見たとき、この言葉が脳裏をよぎった。186センチという長身にも関わらず、凄まじいスピードとテクニック、そして爆発力を持つ。今回は、“大っきくてウマい”宮原の強さの秘密に迫りたい。

――佐藤光留選手のご指名です。「こんなに追い風が吹いている人を見たことがない」とのことですが、ご自身ではどう思われますか。

宮原健斗(以下、宮原):全然まだまだですね。もっと大きな嵐を起こせるようにしないと、世間は動かないです。あと千倍くらいです。

――以前、インタビューをさせていただいたとき、ドライなかただなと感じました。昨年、潮崎豪選手らの大量離脱があったとき、「情はなかった」と。

宮原:プロレスラーとしては、情とかそういうものに重きを置いていないですね。あくまでブレないようにしていました。プロレスラーという夢を僕はまだまだ追い続けているので、その夢に対してピュアなままでいたかったんです。

――ほかにドライなところとして、「プロレスラーが嫌い」と(笑)。

宮原:そうですね、私生活ではまったく絡まないです。プロレスラーが近くにいると、どうしてもスイッチが入ってしまうんですよ。スイッチのオンとオフを大事にしているので、プロレスラーといても楽しさは感じないです。

――プロレス観を熱く語ったりもしないですよね。

宮原:大事なポイントで言おうと思っているので。無駄打ちはしたくないんです。

――このインタビュー、無駄ですか(笑)。

宮原:そういうわけじゃないですけど(笑)。いろんなものが高まったときにマイクで言うとか。そのときにお客さんが賛同してくれればいいだけで。まあ、自己プロデュースですよね。プロレスラーとして、僕はそういう性格なんでしょうね。

――自己プロデュースということだと、Twitterで毎日、自撮り写真をアップして“自撮り王子”と呼ばれています。でも、プライベートは謎な感じがするんですよね。

宮原:僕のプライベートはファンタジーです(笑)。ディズニーランドと一緒ですよ。ミッキーマウスのプライベートって分からないじゃないですか。そういう存在でいたいんです。

――全日本プロレス、かなり盛り上がっています。以前はガラガラだと聞いていたのが、いまは常にフルハウスに近いような印象があります。

宮原:まだまだですよ。11月に両国国技館も控えていますし。今年の全日本プロレスはそこに向かっているので、宮原健斗としても、どういうものを持ってその日に臨めるかが始まっています。両国はとにかく大きいですし、世間に届かせたい。プロレス界に対しても勝負だと思っています。

――盛り上がりの要因として、会社はどんな戦略があったのでしょうか。

宮原:人それぞれポジションがあると思うんですよね。僕がやるべきことは、会場を盛り上げることなので、僕は僕自身のスキルアップに集中しています。大きいものを見ないで、僕自身がスキルアップをすれば自然と会社も盛り上がると思うんです。技術だけでなく、表現者としてスキルアップしたいですね。

――表現者というと?

宮原:いろんなエンターテイメントを見て学ぶんですけど。歌手のかただったら、歌声で何かを伝えるじゃないですか。僕は体を使って、リングの上で何かを伝えたいんです。インタビューでプロレス観を語るとかではなく(笑)。

――なるほど(笑)。参考にしているエンターテイメントは?

宮原:歌手のかたの表情を見るのが好きです。お客さんを見る目線とか。あとは前にシルク・ドゥ・ソレイユを見に行ったんですけど、隙がないですよね。開演の30分くらい前から、盛り上げる体勢が出来ている。お金を頂いているからにはお客さんに満足してもらって帰すということに関しては、ジャンルは関係ないと思います。

――今年2月に三冠王者になられて、変わったことは?

宮原:自分としてはあんまり変わっていないんですよ。ただ、周りの目が変わったんじゃないかなと。覚悟とか責任感とか、周りの目が強くなったと同時に、僕も意識としては強くなっていると思います。

――以前はそこまで目立つ選手ではなかったと聞きます。

宮原:なんとなく出来る選手でしたね。客観的に見ると、そつなくこなしている選手だったと思います。

――いつ頃からエースと呼ばれるようになったんですか?

宮原:呼ばれていないですよ、まだ(笑)。自称“ポジティブ・進化形”ですから。僕はなんでも自分発信なので、まだまだ世間は認めていません。

――成長速度が速い、とご自分でもおっしゃっていますが。

宮原:自分でしか言ってないです(笑)。言ったことに対して、追いつこうとしています。「俺はスピードが速いんだ」と自分に言い聞かせて、その言霊に追いついていくというのが僕のやり方です。

――スランプはありましたか。

宮原:全日本に上がる前は、もどかしさがいっぱいありました。フリーになったとき、試合数がすごく少なかったので、モチベーションを保つのが大変でしたね。プロレスラーは試合をしてナンボだなと、そのとき思いました。いくら練習をしても披露する場所がないと、なんのために練習をしているのか疑問に感じてきて、練習に対するモチベーションがなくなっていって。悪循環ですよね。

――どう乗り越えたのでしょうか。

宮原:敢えて考えずに練習に打ち込んでいたら、全日本から救いの手が伸びた感じです。だから全日本には恩義も感じているんですよ。けっこういい奴ですよね(笑)。

――プロレスラーになりたいと思ったのはいつ頃ですか。

宮原:小学校3年生くらいのときです。父親がプロレス好きで、その影響ですね。小学校の卒業文集にも、将来の夢はプロレスラーと書いていました。

――子供の頃、やっていたスポーツは?

宮原:中学時代は野球、高校時代は柔道です。大会で優勝したとかは、まったくないんですよ。プロレスラーになるための、体作りのためにやっていました。運動神経は普通でしたね。体も細くて、身長は少し大きいくらいで。

――高校卒業後、健介オフィスに入門されました。健介オフィスを選んだのはなぜですか。

宮原:全日本やNOAHと迷ったんですけど、フィーリングです。フィーリングとかタイミングを大事にしているので。高校在学中に受けて、一度落ちているんです。それでもう一回受けなきゃというのがあったんですよね。固い考えで、他に行くっていう選択肢が自分の中でなくなったんです。

――かなり厳しい団体だと聞きますが、トレーニングはいかがでしたか。スクワット千回やったとか。

宮原:それはプロレスの練習生として当たり前だと思いますよ。メジャーと呼ばれる団体だったら当然のことだと思います。周りは厳しいって言いますけど、僕はとくにそういう意識はなかったですね。

――いまはどんなトレーニングをされていますか。

宮原:他の選手と変わらないことです。自重トレーニングだったり、ウェイトトレーニングだったり、スパーリングだったり、走り込みだったり。まんべんなくやっています。

――メンタル面でのトレーニングもされていますか。

宮原:イメージは大事にします。イメージに向かって体を動かす感じですね。自分が行きたい場所とか、動きの場所をイメージします。リング上だけでなく、こういうポジションに行きたいとか、プロレス界での夢とか、全部を含めてですね。

――こだわりや、譲れないことは?

宮原:自分のプライドを持って、入場からお客さんに見せるということは意識しています。幕を開けた瞬間に自分のピークというか、スイッチをトップギアに持っていっている部分はあります。そこから表に出る人間になる感じがしますね。

――「強さとはなにか」をテーマにしている連載なのですが、強さとはなんだと思いますか。

宮原:プライドじゃないでしょうか。人それぞれ、いろんな強さがあると思うんですよ。見た目なのか、内側の問題なのか。ある人が弱いと言っても、違う人が強いと言うこともあるし。そういう中で、自分自身がプライドを持ってブレないことだと思います。僕自身のことを強いと思ったことは、あまりないですね。進化の途中ですから。まだまだ終着駅には着いていないです。

――どこまで進化したい?

宮原:身なりもそうですし、もっとカッコよくなりたいです。カリスマって、人ごみの中でもその人が現れた瞬間、場の雰囲気が変わるじゃないですか。その人がだれだか知らなくても。その域までいきたいですよね。いまはまだ千分の一です。

――これから全日本プロレスをどうしていきたいですか。

宮原:認知度をもっともっと上げていきたいです。全日本プロレスという名前は変わっていないですけど、中身がころころ変わっているので。地方にプロモーションに行くと、馬場猪木という名前がいまだに出るんですよ。力道山まで出てくるとお手上げです。街頭テレビなんて言われると、もういいやと思いますけど(笑)。そういう人たちにもう一度プロレスを見てもらうきっかけ作りをしていきたいですね。

――では、次の最強レスラーを指名していただけますか。

宮原:宮原健斗で。

――(笑)。それはそうだと思うのですが、敢えてご自分以外でお願いします。

宮原:じゃあ、同じユニットのジェイク・リー選手を。

――それは同じユニットだから……? ジェイク選手のどんなところが強いと思われますか?

宮原:身長が高くて、ルックスがいい。あと若さもある。表現者にとって、見た目は大事です。とくに身長が高いのは、プロレスラーにとって武器ですよ。お客さんになにかを伝える第一印象として、強いと思います。

――ありがとうございました。11月の両国国技館大会、楽しみにしています。

宮原健斗は掴みどころがない。ドライかと思えば、時折、熱い思いを見せる。ポジティブの権化のようでいて、ネガティブな発言もする。ナルシストに見えて、謙虚。ひとつ一貫しているのは、飽くなき向上心だろう。最年少三冠王者になり、名実ともに全日本プロレスのエースとなったいまでも、自分は千分の一にも達していないという。上へ、上へ、と向かっていく宮原が、今後どのようなレスラーになるのか。全日本プロレスをどこまで盛り上げるのか。楽しみでならない。

<取材・文/尾崎ムギ子 撮影/安井信介>

【PROFILE】

宮原健斗(みやはらけんと)/全日本プロレス所属。1989年2月27日、福岡県福岡市生まれ。高校卒業後、佐々木健介主宰・健介オフィスに入門。2013年にフリーとなり、全日本プロレス、NOAHに出場。2014年1月、全日本プロレスに入団し、2016年2月、史上最年少で三冠ヘビー級王座を奪還。現在、V5。Twitter:@KentoMiyahara

■全日本プロレス・公式サイト:http://www.all-japan.co.jp/

日刊SPA!

最終更新:10/2(日) 9:10

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