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ロビンソン・クルーソーの実在モデル、「誤った前提」と研究者

ナショナル ジオグラフィック日本版 10/3(月) 7:31配信

モデルとされている人物は5本の指にも入らない

 英国の作家ダニエル・デフォーが1719年に小説『ロビンソン・クルーソー』を発表した当時、実在する海賊のサバイバルを描いた物語は文学の主要なジャンルの一つだった。デフォーはこうした物語の影響を受け、乗っていた船が沈没し、孤島に流れ着いた英国人を主人公にした小説を書いた。内容は典型的な漂流記だったが、この物語はたちまち人気となり、最初の1年間に何度も重版されるほどだった。

【写真】1715年に沈没したスペイン船から見つかった金貨

 1731年にデフォーが死去した後、ロビンソン・クルーソーのモデルは無人島で4年半を過ごしたスコットランドの海賊アレクサンダー・セルカークではないかと、一部の読者が主張し始めた。現在でも、セルカークとクルーソーの関連性を指摘する声は多く聞かれる。

 しかし、英国ロンドン大学キングスカレッジの海軍史教授で、ロビンソン・クルーソーを研究するアンドリュー・ランバート氏は、実在のある人物をモデルにしたと考えるのは「誤った前提」だと述べている。なぜなら、クルーソーの物語は「さまざまな海賊のサバイバル物語を複雑に組み合わせたもの」だからだとランバート氏。

 米国オーバーン大学の英語学者で、ダニエル・デフォーの研究者でもあるポーラ・バックシャイダー氏は「セルカークが、クルーソーの主要なモデルだなんてことは決してありません。トップ5にも入らないでしょう」と話す。「ロビンソン・クルーソーは長編小説です。セルカークの体験が主なネタ元でないと考える理由はたくさんあります」

 バックシャイダー氏によれば、航海中に遭難した人や孤島に置き去りにされた人のサバイバル物語はほかにいくらでもあるという。こうした物語の主人公(男性も女性もいた)の中には、島の先住民たちと交流したり、商売をしたりして過ごした人もいた。セルカークの無人島での生活より、こうした物語の方がロビンソン・クルーソーの物語と共通する点が多い。

 たとえば、ロバート・ノックスという人物をみてみよう。ノックスはセイロン(現在のスリランカ)で遭難し、捕虜となって20年間を過ごした(クルーソーが孤島で生活した期間に近い)。

「彼はトウモロコシの商売を始めました」とバックシャイダー氏は話す。「ウールの帽子も製造していました。しかも、デフォーは彼と面識があったんです」。デフォーが多くの人から影響を受けたことを示唆する話はほかにもある。

 デフォーにとって、セルカークの物語はいくつものサバイバル物語の一つにすぎなかったのだろう。それなのに、セルカークこそが、クルーソーの唯一のモデルだと考えられていることに、デフォー研究者たちはあきれているという。バックシャイダー氏によれば、セルカークの話を聞くたび、研究者たちは「クスクス笑っています」という。

 ではここで、セルカークの驚くべき体験を紹介しよう。ロビンソン・クルーソーの物語とは異なる点をいくつか、そして、奇妙な共通点をひとつ挙げてみる。

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最終更新:10/3(月) 7:31

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