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核実験直後の北朝鮮で初の航空ショーが開催。その「狙い」とは?

HARBOR BUSINESS Online 10/3(月) 9:10配信

 5回目の核実験実施を行なったことで、さらなる制裁も検討されるなど国際的な圧力が強まる北朝鮮で、9月24日、25日に同国初となる航空ショー「元山国際親善航空祝典」が開催され、航空マニアや北朝鮮マニアである日本人25人を含む外国人1000人が参加した。現地ガイドの説明では、開催地である元山から約1万5000人、その他の地域からの北朝鮮人約1000人が参加したという。

⇒【画像】航空ショー会場の模様

 ちなみに、今回の航空ショーの会場となった元山は、多くの拉致された日本人が最初に連れてこられた場所であり、今でも港には万景峰号92が停泊しており見ることができる。

 航空マニアにとって、最大の楽しみはどんな飛行機が登場するのかだった。というのも、北朝鮮は、キューバ同様に経済発展から取り残りされてきた結果、進化しない古代魚シーラカンスのような状態となり、航空機や鉄道、自動車など旧時代のものが現役で活躍している。そのため、最近では、様々な分野のオタクから「動く博物館」と注目され、世界中のオタクたちが訪朝しているのだ。彼らは北朝鮮という国自体はあまり関心はなく、あくまで興味は航空機などのそれぞれの嗜好対象だったりするわけだ。

 一方の北朝鮮研究者やオタクは、今回の航空ショーで外国マスコミへ初公開された元山の新空港「葛麻(カルマ)空港」にも注目していた。同空港は、軍用空港だったものを旅客用空港へリノベーションし、昨年11月に開港させたものだ。少し前の昨年7月には首都平壌の空港をリニューアルするなど近年、北朝鮮は空港インフラ、航空機活用に力を入れている。

 さまざまなジャンルの愛好家が集った北朝鮮の元山航空ショー、果たしていかなる様子だったのか?リポートしていこう。

◆旧ソ連機を中心に、なぜかラジコンも!?

 航空機は、すでに他国では勇退したものが多くマニアにはたまらない光景だったと思われる。

 航空ショーでは、「ツポレフ134」、「ツポレフ154」、「イリューシン18」、「イリューシン62」、「イリューシン76」、「アントノフ24」」などの旅客機や「ミグ29」、「ミグ21」、「SU25」などの軍用機(いずれも旧ソ連製)、80年代に持ち込まれたとされる米製ヘリコプター「MD500」などが飛行披露され、さらにはなぜか米「F16」や仏「ラファール」を模したラジコンも飛ばしていた。航空ヲタク注目の「ミグ19」は展示のみだった。

 日本から4泊5日ツアーで参加したstsyblue氏は、「24日午後に平壌から6便飛んだ 臨時便で元山入りしました。飛行時間はたった30分とあっという間でしたが、この日のために新塗装されたイルージョン62のいい揺れを味わえました。元山空港へ到着後はターミナル内を少し見学してから徒歩で会場へ向かいました。驚いたのは、会場は滑走路を横切った先に設置されており、歩いて滑走路を横断するときに滑走路の真ん中で寝そべって撮影させてもらいました」と語り、もちろん規制されている中ではあるが、それなりに満喫できたようだ。

 会場は一番手前が外国人、規制線が敷かれた後ろに北朝鮮人の並びで見学となった。1000人来場したという外国人は、ヨーロッパ人が中心だが、8月末、東京でイベントを開いた「DPRK360」のアラム・パン氏(シンガポール)の姿も確認できた。

「1機飛んでは、戻ってくるまで15~20分ほどあり、その間、暇でした。同時飛行は数えるほどで、ほとんど1機ずつ飛んでいきました。戦闘機の一回転もなく、3機同時飛行も機体と機体の間が空いており、他の航空ショーと比べると迫力にやや欠けました。ですが、初めての航空ショーだったためか最初は機体へ触れてはいけないなどの禁止事項のアナウンスが繰り返されていましたが、途中からグダグダになり、ミグ29の空気取り入れ口『エンジンカウル』の中に手を入れたり車輪に触れたりと他の航空ショーではできないこともできたりして楽しめることも多かったですよ」(stsyblue氏)

◆ミグ21女性パイロット登場で大盛り上がり

 会場の一番奥には航空機や軍用機の模型、帽子、記念品などの売店が青いテント内に並び休憩時間などに買い物できるようになっていたという。中でも目立って多かったのはビール販売店だ。売り子は9月9日まで平壌で開催されていた「大同江ビール祭り」と同じCA風ユニフォームの女性とまさにビール祭り再開催状態に。使えた通貨は中国人民元や米ドルで、元山では平壌の店ではあまり使えない米ドルが使えるなど違いを感じることができた。

 2日間の航空ショーでもっとも盛り上がりを見せた場面がある。それは、ミグ21の2人の女性パイロットの登場だった。「金正恩党委員長が指導された…」との紹介が流れると、後列の北朝鮮人観客たちがオオオという大歓声と両手を上げ、出発を見送り、到着時には、規制線を超えてミグ21を追いかけるように滑走路へ向かって大移動を始めた。

 この現象は「モランボン楽団」などの音楽公演でも金正恩党委員長が映像に登場すると全員が一斉にスタンディングオーベンションをすることで知られ一種の義務のような「お約束」である。それでもなお、外国メディア側も盛り上がらずにはいられない。なにせ2人の女性パイロットがミグ21の前で記念撮影に応じてくれたので多くの北朝鮮人や外国メディアが彼女たちを取り囲み大盛り上がりだった。

◆航空ショー開催の「狙い」

 今回の北朝鮮初の航空ショーは、外国メディアにも取材させて国連制裁は効いていないことを誇示したい狙いがある。さらに北朝鮮は、2年前から元山と観光地である金剛山をセットしたリゾート開発への投資を説明会等で呼びかけており、元山を世界へ向け露出させ知名度を高めることで投資を募りたい思惑もある。

 ただ、台所事情はやはり厳しいようで、「飛行間隔が空いていたのは、当初予定していたより飛ばす機種数を減らしたためで、ラジコンも予定外に飛ばしたと思われます。どうやら航空燃料の不足などが影響してショーは縮小開催されたようです」(北朝鮮事情に詳しい関係筋)という。

 国内的には、飛行機嫌いの金正日時代と違い金正恩時代は、空軍や航空機産業へ力を入れるという新時代を強くアピールし国威発揚に利用しているのだろう。

 縮小されたとはいえ開催したことに意義を見出している北朝鮮にとって今回のイベントは成功だったと言えるのかもしれない。

<取材・文/中野鷹 写真提供/stsyblue>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:10/4(火) 14:07

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