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森山直太朗 世界に一つの「ギターにもぼろ」

NIKKEI STYLE 10/4(火) 7:00配信

 著名人が、お気に入りのモノについて語る連載「私のモノ語り」。今回の語り手は、「さくら(独唱)」や「夏の終わり」などタイムレスな名曲を紡ぐ、シンガーソングライターの森山直太朗さん。今年でデビュー15周年を迎えますが、音楽活動を続ける上で欠かせない相棒のひとつが、アコースティックギターです。母親である歌手の森山良子さんがギターを家に置いていたこともあり、幼い頃からギターとは友達。楽曲制作からライブでの演奏、プライベートでの使い道などなど、様々な場面で手にするギターとの関わり方や思いについて語るうち、森山さんの音楽やものづくりへの真摯な姿勢が透けて見えてきました。[前編はコチラ]

■母が物置に放置していたホコリだらけの名器を救出

 この前お話しした「ぼろ」が、今の僕のプライベートで大切な「モノ」の代表だとすれば(前編「『ぼろ』に和む 森山直太朗、曲に重ねるシンパシー」参照)、アコースティックギター(以下、ギター)は僕のやっている活動、生業(なりわい)の象徴のような「モノ」です。歌う時にギターがなくても歌えますが、持っていた方がもっと頑張れる。まだまだへたっぴですが、僕の歌の支えになってくれるものです。

 曲を作るときもギターはとても役立ってくれます。だからこそ、自分の手癖みたいなものが出てしまうこともあり、あえて手放すこともあります。物書きの人なら、今日はいつもと違って鉛筆で書いてみるとか、違う場所で書くような感覚かもしれません。そうすると違うアイデアが浮かんだりするんですよね。

 僕とギターの出合いは、本当に小さい頃。母が入手したであろう、マーチン・ギターのOOO-42(以下、トリプルオー)が最初だったと思います。このギターは、エリック・クラプトンがアンプラグド・ライブで弾いたり、僕の尊敬するニール・ヤングが愛用する名器ですが、こだわりのある人が選ぶギターでもあって、万人受けするタイプではないのかなという印象です。

 たとえば、同じマーチンでも、(ドレッドノートシェイプの)D45やD28は、リーバイスジーンズでいうところの501のように、長年誰からも愛される定番中の定番。それに比べてトリプルオーはリーバイス502(ごく短期間生産されたがすぐに廃盤となった)のようなポジションだったりする。……学生時代にアメカジ(アメリカン・カジュアル)やジーンズに凝ったので、ジーンズで例えてしまいましたが、かえって分かりにくかったかもしれませんね(苦笑)。

 さて、トリプルオーは僕が音の良しあしがわかる前からあったし、ゆえにその価値もわからなかった。中高生はサッカーに打ち込んでいて、存在すら忘れていました。でも大学に進学してギターを弾いて歌うようになると、「そういえば、トリプルオーが家にあったな」と思い出した。マニア垂ぜんの、戦前のお宝リーバイスが家にあるようなものですから、大至急家に帰って母に尋ねました。そうしたら、「物置かしら……」なんてのんきなことを言うんですよ。ホコリまみれのトリプルオーを見つけて、またまた大至急で知り合いの方にメンテナンスをお願いしました。そこに持って行く間は、あたかも救急車に乗っているみたいな気持ちでしたね(笑)。

 一命をとりとめたとわかり(笑)家に帰ったんですが、「今では値がつかないような貴重なギターなんだから大事にしなきゃだめだよ」と母にお説教しましたね。

 トリプルオーにはこんなエピソードもあるし、今回持ってこようかなと思いました。が、これまでにも語ったことがある話だし、せっかくなら新しいモノがいいなと。だから、このギターの話をちゃんとするのはここが初めてなんです。

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最終更新:10/4(火) 7:00

NIKKEI STYLE

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