ここから本文です

<「こち亀」連載終了>最終回の掲載号を買漁る大人たちに違和感

メディアゴン 10/4(火) 7:30配信

柴川淳一[著述業]

***

1976年から40年にわたる長期連載でギネス記録にもなった「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が、2016年9月17日発売の「週刊少年ジャンプ」2016年42号で終了・完結となった。

最終回が掲載された約217万部とされる「少年ジャンプ」42号が完売したというニュースを見て、感じたことがある。

筆者が書店へ行った時には、すでに在庫はなく、残念ながら購入することができなかったのだが、よく考えてみれば、「少年ジャンプ」は、誌名に「少年」が冠せられた漫画雑誌だ。基本的には「少年」が読者であるのだから、筆者のような老年の読者が「こち亀ノスタルジー」で買漁るべきではないように感じた。

むしろ、筆者ごとき老年の偽物少年漫画ファンが買ってしまうことで、いたいけな「少年ジャンプファン」の手に届かない状態を増やしてはいけないのだ。

もちろん「こち亀」には年齢を問わずファンは存在しているのだから、本当のファンなら事前に最終号は書店に予約するだろうし、金持ちなら、例えそれが完売事後になろうとも、赤塚不二夫の大ファンだった三島由紀夫氏のように、出版社に直接ハイヤーで乗り付けて「最終号を売って欲しい。金に糸目は付けない」と言うかも知れない。ネットオークションだって利用できる。

そのようなファン心理は十分に理解できる行為なので、悪いことではない。しかし、「少年ジャンプ」42号を完売に至らしめたのが、これまで熱心なファンでもなかった大人たちによる「最終回の掲載誌を記念で購入」なのだとしたら、やっぱりちょっと違うんじゃないか、と思う。

仮に、筆者が幸運にも、書店の店頭で「少年ジャンプ」42号の最後の一冊を見つけることができたとしよう。しかし、その時、筆者の背中越しにその最後の一冊を恨めしそうに見つめる「少年」に気づいたとしたら、きっとその宝物は彼に譲るべきなのだ。

1995年には公称653万部というギネス記録の発行部数を達成した「少年ジャンプ」のピークを支えたのは、現在のアラフォー以降の世代である。連載の回転率の早い「少年ジャンプ」の中で、青年・中年・老年になってから買っても、少年の頃と同じ連載を読むことができる「こち亀」はノスタルジーの一言では片付けられない貴重さがあったことも事実である。

その意味では、筆者を含め、「少年ジャンプ」42号を買うことができなかった多くの中年・老年の少年漫画ファンたちは残念に感じたであろうが、一方で、「こち亀終了」の報を聞き、何年か(何十年か)ぶりに「少年ジャンプ」を購入するような多くの大人たちに、なんとも言えない違和感を今更ながら感じてしまったのである。

考えてもみれば、買ったところで「こち亀」以外は読まず、あとは記念に保存するしか使い道はないのだろうから。

柴川淳一[著述業]

最終更新:10/4(火) 7:30

メディアゴン

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。