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巨大な通販市場と化した「ふるさと納税」への素朴な疑問

オルタナ 10/4(火) 13:50配信

「ふるさと納税」が大流行だ。もともと、出身地や個人的に愛着がある自治体に「納税」し、赤字に苦しむ自治体を支援しようという趣旨だった。総務省のまとめによると、2014年の「ふるさと納税者」は43万人と、6年で10倍以上に増えた(オルタナ編集長・森 摂)。

だが、この状況にはいくつかの素朴な疑問がある。そもそも、この制度は「納税」とうたっているが、その実態は「寄付」だ。2,000円を超える部分について、一定限度額まで、原則として所得税と合わせて全額が控除される。

これでは、官が民(NGO/NPOなど)への寄付を奪うことにならないだろうか。ただでさえNGO/NPOへの寄付は伸び悩んでいる。市民の金銭的な余裕が一定だと仮定すると、そのパイを奪い合う構図が起きているのではないか。

第二に、「ふるさと納税」が、巨大な通販市場と化したことだ。実際、ふるさと納税紹介サイトが複数できており、トップページには豪華な返礼品がずらりと並ぶ。

その1位は「若狭米こしひかり15kg(福井県小浜市、寄付金額10000円)。2位は「佐賀牛切り落とし1Kg(佐賀県嬉野市、寄付金額10000円)。3位は「牛の里ビーフハンバーグ(北海道白老町、寄付金額10000円)だ。

お手ごろ価格の上、税額控除まで付いてくるのだから、人気なのは当然だ。だが、この価格設定で本当に自治体にお金が落ちるのだろうか。例えば福井産こしひかりのネット販売価格は5キロで3320円なので、15キロで9960円。ほとんど利益は出ないだろう。

朝日新聞の記事(「控えめ返礼品あだに…ふるさと納税赤字、地方自治体でも」)によると、今春に各地の自治体に情報公開請求をしたところ、全国1741自治体のうち1271自治体が黒字だったという。

だが、この収支には返礼品は含まれていない。寄付金額のうち返礼品の原価が5-10割を占めていることを考えると、本当に黒字の自治体はごくわずかだろう。

だとすると、ふるさと納税の恩恵は一部生産者だけとなり、自治体を支援するという本来の趣旨から大きく外れていることになる。何のための通販事業なのだろうか。地元業者が潤うと、法人所得税が増えるというロジックも無くはない。であれば、ふるさと納税ではなく、もっと広範な地域の生産者支援に特化した方が良いだろう。

三つの目の問題は、結局、「何のための納税なのか」という根本的な問題だ。地方自治体のメンツなのか、通販金額を競う状況が続いているように見受けられる。だがその内情は火の車で、本当は止めたいという自治体も少なくないのではないだろうか。

そんな思いでいたところ、NGOのピースウィンズ・ジャパン(大西健丞代表理事)が近々、犬や猫の殺処分を無くすため、ふるさと納税制度を活用することを聞いた。寄付先は広島県神石高原町で、いわば「ガバメントクラウドファンディング」になるそうだ。

ふるさと納税は、このように地域や社会の課題を解決する手段として活用するのが望ましいのではないか。モノで釣るのではなく、コトに共感してもらい、お金を出してもらう。単に自治体の財政を支援するのではなく、自治体がやろうとしてできなかったことを支援する。日本で健全な寄付市場を育成するためにも、そろそろ方向転換した方が良いだろう。

最終更新:10/4(火) 13:50

オルタナ

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