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日本ハム、首位に立ったのはわずか14日間。「配置転換」の妙が化学変化

ベースボールチャンネル 10/4(火) 18:10配信

優勝を明確なターゲットにできた武田勝の名言

 最後は西武プリンスドームに日参した。自分はどうにもならないくらい泣き崩れるだろうなと思った。それくらい2016年のパ・リーグ優勝はものすごいことだった。

 ファンの仲間たちと半ば冗談、半ば本気で「ソ・リーグ」(あまりにも突き抜け、孤高の存在になっていた)と呼んでいた雲の上のソフトバンクに追いつき、マッチレースの末、見事勝ち切ったのだ。

 最大ゲーム差11.5だ。
 これははるかにかすんで見えない。マッチレースになってからも8月下旬に一瞬だけ上に立ち、すぐ抜き返された。そのうちに「マイナス0.5ゲーム差」という(上なんだか下なんだかわからない)謎の順位に頭を抱えたりした。

 敵地ヤフオクドームの天王山(9月21、22日)に連勝するまでは心のどこかに恐怖感があって「優勝」の2文字が言えなかった。言うと逃げる気がして「それ」とか「あれ」とか言ってたのだ。「それ」は果てしなく遠かった。「あれ」は険しい道のりだった。ペナントレースのトータルでファイターズが首位に立った日数はたった14日間だそうだ。

 やっと安心して「優勝」の2文字を口にできるようになったのは、武田勝の引退会見が行われた9月23日だ。ベンチ前の円陣でぶち上げた名言「俺のために優勝しろ」。あれでやっとほぐれた。硬くなることなく「優勝」にフォーカスできた。それまでは追いかけること、競り負けないことだけでいっぱいいっぱいだ。どんなに強調しても足りないが、ソフトバンクは最強だった。

君臨することなく、チームの一員だったスーパースター

 単純な戦力比較ではファイターズにまったく勝ち目がない。
 それは年俸総額を比較しても明らかだ。実力があり経験があり、野性味まで兼ね備えたラインアップが先方には揃ってる。うちが誇れるのは若さくらいのものだ。若さには「爆(は)ぜる」勢いがある。ひとつのきっかけで爆発的に成長する。西川遥輝と高梨裕稔を思い浮かべていただきたい。

 それからもうひとつ、「かけ算」が可能になるのだ。戦力の足し算ではなくかけ算。「化学変化」と表現してもいい。まだ個々の選手が未完成である分、柔軟性がある。使い方(使われ方)次第で、自分も変化し、まわりも変化する。

 今季、用兵の妙は「配置転換」にあったと思う。投手主体で回してきた大谷翔平を、マメで登板を回避した後、打者で使い続けた。「打者大谷」はチームの主軸になった。僕はよくメディアが「いつまでマメを理由に投げさせないのか?(実際はマメじゃなく、どこか悪いんじゃないか?)」と騒ぎ出さなかったと思う。大谷は「相手投手の最も警戒する打者」として、また「積極的な走塁で点を線にする存在」としてチームを活気づける(実際、僕は「走者大谷」もカウントしての「三刀流」をイメージした)。

 増井浩俊と吉川光夫の配置転換も面白かった。「クローザーとして結果の出なかった増井」を先発に回し、マーティンに固定した。これが成功したと思ったら、終盤、マーティンが故障し、「先発として結果の出なかった吉川」をクローザーに持ってきた。結局、吉川の抑え起用は不首尾に終わるが、絶えずこういう組み替えを試し、投手陣全体の「化学変化」をはかるのだ。

 もちろん大谷翔平というスーパースターの大活躍あっての優勝だけど、大谷も「かけ算」や「化学変化」の一員であったと思う。スーパースターは君臨するのでなく、常にチームメイトに声援を送る存在だった。

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最終更新:10/4(火) 18:10

ベースボールチャンネル

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