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イーストウッド監督が、あの感動実話の裏側をえぐる、『ハドソン川の奇跡』 [FRaU]

講談社 JOSEISHI.NET 10/4(火) 19:00配信

「クリント・イーストウッド監督作品」。映画ファンの間で、それは傑作を保証するフレーズです。現在86歳のこの巨匠の才能は衰え知らず。2009年1月、NYのハドソン川に不時着した旅客機の実話を描いたこの最新作でも、巨匠は観る者のハートをがっちりつかむ演出力をみせてくれます。

155人の乗客・乗員が全員無事だった「奇跡」の事故。機内でのパニックや、管制室や救助に向かう船の緊迫の攻防など、あらゆる角度から再現されますが、本作のポイントは別の部分にあります。瞬時に川への着水を決断したサレンバーガー機長。その判断は正しかったのか? 近くの空港に着陸できたのでは? という調査が彼を悩ませていくのです。その苦闘と、事故当日の記憶が、映画の中で見事にシンクロ。世間から英雄視される自分と、何度も悪夢に見舞われる日常のギャップを、トム・ハンクスが抑えた表情で名演します。

感動の実話を映画化するとき、どこかに出てしまいがちな「あざとさ」は、本作にはほとんど感じられません。イーストウッド自身が作曲した音楽もいつもながら繊細の極みですし、クライマックスの感動シーンは、まるで日本の「わび・さび」の世界……。濃密な内容ながら、上映時間が96分というのも驚きです。匠の仕事としての映画を堪能してください。

『ハドソン川の奇跡』丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他 全国ロードショー中

最終更新:10/4(火) 19:00

講談社 JOSEISHI.NET