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トヨタ・KIROBO mini(キロボミニ)開発者に聞く「パートナーとのお別れの時はどうなるんでしょう?」

clicccar 10/4(火) 9:00配信

今冬から3万9800円(税別)で発売されるトヨタのコミュニケーションパートナー「キロボミニ」。トヨタが大々的に発表するクルマでない商品ってちょっと思い付かない。
そこに込められた思いや狙いはどこにあるのか、開発者で、MS製品企画部 新コンセプト企画室 主査の片岡史憲さんへ独占インタビューに応じていただきました。

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ーー片岡さん、お久し振りです。

片岡「以前もお会いしてますよね。」

ーーはい、エスティマ・ハイブリッドの子供達のストーリーをつなぐプロジェクトでお会いさせていただいています。あのプロジェクトは今回のキロボミニにつながっているんでしょうか?

片岡「ええ、私の中ではつながっています。トヨタとしてはつながってないですが(笑)。あのときの経験がキロボミニに十分活かされていると思います。」

ーー最初に、こうしたコミュニケーションパートナーが必要、販売しようとと思ったのはなぜでしょう?

片岡「キロボが宇宙から帰ってきたとき、お年寄りが『あれが欲しいんだけど売ってくれないのか?』と詰め寄られたり、子供や女性が非常に興味を持ってくれたり、例えば私の義理の父がなくなった義理の母がああいうの欲しいなと言ったり、コミュニケーションの相手というのは必要とされていると感じましたね」

ーーしかし、それが『自動車メーカーのトヨタ』として必要なんでしょうか?

片岡「いま若者のクルマ離れとか言われている、その若者がキロボミニをきっかけにトヨタを知ってもらう。軽自動車の女性ユーザーがキロボのおかげでトヨタのクルマ購入のきっかけになる。逆にこれまでトヨタ車に乗っていただいてたお客様が免許を返納したけどキロボミニを手元に置いてもらう、といったことで新しい循環が生まれるのでは、販売店とのつながりができていいのではと思っています。」

ーー今回のキロボミニは、昨年のモーターショー出展時と比べ、変わっているところはあるのでしょうか?

片岡「販売するにあたり、落としたときに割れないとかの、品質を含め、中身は総替えです。また、量産化のためにVAIOさんの技術によって生産のことも考えて変えています。けれどコンセプトや、やりたかったことなどはまったく変わっていません。」

ーーでは、製品化に向けて、妥協した部分などはありますか?

片岡「ハードに関してはまったくありません。むしろよくしたくらいです。ソフトに関してはまだまだ今もやっているところですが、例えば、5歳児という前提ですが、ずーっと受け答えが馬鹿なままじゃ飽きちゃうので成長をどう見せればいいんだろうか、とか、自分の中で今でも考えているところです。本当は子供の成長は長い時間をかけて感じられるものだけどキロボミニのお客さんがそう思ってはくれないだろう。そんなに待てないんですよ。今日一日だけでも、あ、あれを覚えてくれた、となると次の日も何かちょっと話したい、また覚えてくれるんじゃないかな、とか思ってくれるはずです。」

ーー5歳児だったら間違ったりもするんですか?

片岡「間違いますよ! トヨタの技術者だったら真面目に『間違わないように』とか『キチッと』作るかも知れないんですけど、まあ、私もトヨタの技術者でもあるんですけど(笑)、僕はそういう『間違う』とか好きなんですよ。それでないとコミュニケーションパートナーとして面白くないんですよ。当たり障りのない答とか、ぜんぜん外してないのか、ボケもツッコミもないのか、とならないようにしてます。トヨタが作ったからトヨタっぽい真面目になっちゃったね、じゃなくて、ちょっと笑ってしまうようにしたい。それがグローバルビジョンである『笑顔にする』ということに合ってると思うんですよ。」

ーーそれは実現できたんでしょうか?

片岡「そのための機能は、ハードウェアに入っています。人の表情を見て感情を推定することができ、それによって話しかけます。喜び度何パーセントとかの認識ができて、喜んでいるようであったら喜ぶ。悲しんでいるようだったら悲しむ。そうすることで、寄り添うことができるわけです。」

ーー寄り添って、笑顔にさせるところまでやってくれるんですよね?

片岡「極力そうしようと思っていますが、なにぶん5歳児なもので、意図的に持っていけないケースはあります。ただ、そのズレたところでも笑顔になってくれればしてやったり、と思っています。」

ーー表情で笑顔であるとか悲しんであるとかを認識できるんですね。いわゆる顔認識によって個人の特定はしないとのことですが、特定しないのであればそのデータは他に活用できそうです。そうしてサーバに集まった多くの情報はキロボミニとユーザーのコミュニケーション材料としてしか使わないんでしょうか?

片岡「キロボミニで集めた情報を僕は『鍵付きダイアリー』と呼んでいます。もしそうでなければSNSになってしまいます。愚痴だって言えなくなる。人とのコミュニケーションのためにはそういう吐き出すことが必要だと思うんです。なのでそのため(ユーザーとキロボミニの)コミュニケーションだけに使うのが必要なんですよ。それにトヨタの信頼にも繋がります。」

ーーそうか、その鍵がかかってないと、本音が出ない。そうするとキロボミニの目的である本当のコミュニケーションができなくなるんですね。

片岡「だから基本は一対一で使ってください、と思ってました。けれど、いろんな話をするうちに、家族で使ってもらう想定があってもいいかなと思い始めました。家族の食卓にキロボミニが座っている。家族の一員になって、親が子供に叱ったとき『だよねー』と言ったとしたらそれで子供は反省するかもしれない。親も言い過ぎたと思うかもしれない。円滑にすることができるかもしれない。そして家族の記憶を残しておくこともできるかもしれない。そういうバージョンも必要かもね、と思っています。」

ーーパートナーとして連れ添うということは、いつかお別れが訪れるでしょう。その時のことなどは想定されていますか?

片岡「正直言ってまだ考えていませんが、もしかしたら嫌な言い方ですけど位牌のようにその人の思い出が詰まっているという風にするのもいいのかも知れない。何が好きだったとか、何を言っていたのか、というのを家族が聞くのもいいかも知れない。聞かないほうがいいかも知れない。さっき言ってた『ダイアリーの鍵』を開けることができるのもアリかなとも考えられます。けれど、まだ決まっているわけではないです。」

ーー結構、人の人生に直結するような難しい問題にもなりそうですね。

片岡「そうなんです。だから今回、先行販売ということでいろんな反応を見て、意見を聞きたいんですね。直せるところは直して、共創の概念でお客様と一緒に創り上げていくことにチャレンジしていきたい。お客さんとのコミュニケーションで気づいていくことができて全国展開に繋げていきたいと思っています。」

ーーありがとうございます。



個人的には、私も今年母を亡くし、父が一人なので、買ってあげたいなと思ってきました。直接のコミュニケーションを毎日できないパターンが多くなった時代が必要としたアイテム、パートナーなのかも知れません。けれど、企業人がマーケティングから開発を進めたというよりも、世の中から自然に必要とされるものが、自初的に出てきたようにも感じます。ちょっと「神」を想像させるような片岡さんの風貌、柔らかな眼差しからもそう思わせるのかも知れません。

* * * * *

キロボミニには幕張メッセで10/4(火)~7(金)に開かれるCEATEC2016のトヨタブースで会うことができます。数は限られますが、先着順に個室でコミュニケーションを取る体験もできます。

そのほか、トヨタブースでは水素社会の提案としてMIRAIのカットボディや水素燃料電池で働くフォークリフトを展示してあります。



(clicccar編集長 小林 和久)

最終更新:10/4(火) 9:00

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