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一人っ子政策変更の中国で顕在化した新たな3つの問題

Wedge 10/5(水) 12:22配信

 中国では、長年続いた「一人っ子政策」が全面的に変更され、16年1月からすべての夫婦に子供2人の出産が許可された。変更は、急速に進む人口老齢化への対応が目的だが、様々な問題点が改めて明らかとなってきている。

 第1の問題は、子供の養育費の高騰だ。たとえば都市部では共働きが普通なので、出産後にヘルパーを雇うと1カ月8000元(約12万円、1元=約15円)、粉ミルク代が1年1万元(約15万円)かかる。託児所に預ける場合は私立で最低月額2000元(約3万円)が相場。

 所得水準から考慮すると、ヘルパーを雇えるのは高収入世帯(共働きで年収13万元=約195万円)、託児所の費用負担も「中の上」収入世帯(同年収7万7000元=約116万円)以上でないと難しい。前者と後者の合計は40%程度だが、出産適齢世代の比率はもっと低く出産の障害となる可能性がある。

 出産政策を管轄する国家衛生・計画生育委員会主任は「光明日報」紙の取材に対し問題を認めている。教育部は政策変更に伴い費用の安い公立幼稚園やコミュニティに委託した託児所等の設立を進めるとするが、実施はこれからだ。

政策の効果には疑問も

 第2の問題は、出産増に対応する医療サービスの不足だ。医師の過重負担などにより中国では小児科医が減少傾向にある。ここ5年で小児科医は10万5000人から10万人に減少、児童千人当たり0.43人と衛生部が目指す同2.06
人から程遠い。医療分野も管轄する国家衛生・計画生育委員会は、第13次5カ年計画(16-20年)中に各省市に児童専門病院を、人口300万人以上の地区級市の総合病院に小児科を設立する計画だが、これにも時間を要する。

 第3の問題は、各種福利厚生制度の変更が追いついていないことだ。もともと晩婚カップルへの休暇や補助金の優遇のため設計されていた制度を、2人目の出産にも対応させる必要がある。しかし休暇制度についての現状は、先行する地方で120~180日程度の出産休暇が実施され始めた段階だ。

 政府は新政策により新生児が毎年250万人増加し、 50年までに生産年齢人口が累計3000万人増加すると予測するが、前述の問題に加え、社会の意識が「少なく産んで手をかけて育てる」方向に変わっており、ことはそう簡単ではない。人口問題の権威、蔡・中国社会科学院副院長もセミナーで「人口老齢化は今後も加速する可能性がある」と政策の効果に疑問を呈したと伝えられる。

大西 康雄

最終更新:10/5(水) 12:22

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