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中国に世界2位の鉄鋼メーカー誕生へ…経営統合の裏で労働者を悩ませる“現実”とは

オトナンサー 10/5(水) 17:33配信

 中国鉄鋼大手の宝鋼集団(上海市)と武漢鋼鉄集団(湖北省)が経営統合し世界2位の鉄鋼メーカーが誕生する、というニュースが大きく報じられました。

 報道を受けて、中国の鉄鋼業界で長らく問題になってきた「過剰生産」が解消されると期待する声も聞かれます。これまでは、中国の余剰生産分が東南アジアなどで安価に販売され、国際的な値崩れを引き起こしているとの見方が強かったからです。

 統合が世界の鉄鋼市場に及ぼす影響については今後も目が離せませんが、当の中国国民にとって今回の統合はどのような意味を持っているのでしょうか。

 オトナンサー編集部では、近著に「中国人の『財布の中身』」(詩想社新書)があり、中国の社会情勢に詳しいノンフィクション作家の青樹明子さんに話を聞きました。

労働者にとっては「国がなくなる」意味合いも

 まず、中国鉄鋼業界の過剰生産について青樹さんは「国内景気の減速で鉄鋼需要が急速に減少する中、なぜ供給過剰という状況が生まれたのか。それには、国有企業の『体質』が無関係とは言えません」と話します。

 社会主義体制下で生まれた国有企業は本来、資本主義の市場原理とは無縁でしたが、現在の中国は市場原理を導入し、「矛盾を抱えた状態」(青樹さん)といいます。鉄鋼産業はこれまで、国内経済のけん引役でしたが、景気が減速する現在、「非効率な生産体制はやめよう」という声が民間からも上がっているそうです。

 それでは今回の経営統合はスムーズに進むのでしょうか。青樹さんは「一筋縄では行きません」として、中国で職場組織を意味する「単位」制度を引き合いに出します。

 かつて中国の都市労働者が所属していた「単位」は、単なる職場組織ではなく、給与や住宅の配給、社会保障などの生活サービスを労働者に提供していたそう。「これは単位が中国人にとって『国そのもの』であることを意味します。外国から見れば中国人ですが、国内では両社の社員を『宝鋼の人』『武漢鋼鉄の人』と見ています。業界再編は、そこで働く労働者にとっては自分の国がなくなることを意味し、日本国内のリストラとはワケが違うのです」(青樹さん)。

 また青樹さんによると、武漢鋼鉄は武漢市民の誇りであり、同社に就職することが市民の名誉でもあるとのこと。同市の労働者は当然のように、自分の子どもが同社に入社することを希望し、女性は同社社員と結婚することを夢見ていたといいます。

 しかし、昨年から始まった経営統合に伴うリストラで現状は一変。同社に入社した30歳の独身男性は統合の話が持ち上がってから、それまで多かった縁談話が途絶えてしまった、といったニュースが地元で話題になっているそうです。

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最終更新:10/7(金) 18:28

オトナンサー

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