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『過激派オペラ』早織&中村有沙が語る、壮絶な撮影現場と過激なラブシーンに挑んだワケ

リアルサウンド 10/5(水) 16:01配信

 劇団「毛皮族」を主宰する江本純子が、自伝的小説『股間』を自ら映画化し、初監督を務めた『過激派オペラ』が現在公開されている。本作は、劇団「毛布教」を立ち上げた“女たらし”の演出家・重信ナオコが、旗揚げ公演『過激派オペラ』のオーディションで女優・岡高春に出会い、成功と挫折を味わう模様を描いた青春群像劇だ。リアルサウンド映画部では、W主演の早織と中村有沙へのインタビューを企画。過酷な撮影現場の様子や、初めて挑んだ過激なラブシーン、本作で得た経験などについて、じっくりと語ってもらった。

■中村「“中村有沙”を出しちゃいけないという思いが強かった」

ーー二人はどのような形で今回の作品に参加することが決まったのでしょうか?

早織:事前にいただいた脚本がとても面白かったので、ぜひやりたいと思い、オーディションに参加させていただきました。オーディションは1次審査と2次審査があって、1次審査は監督やプロデューサーの方たちとの面談のような形でした。「ナオコと春、どちらの役がやりたいですか?」などを聞かれたりしましたね。2次審査は脚本をもとに役を演じて、それを見てもらいました。

中村有沙(以下、中村):私もほとんど同じです。早織さんは割と早い段階からナオコ役だろうという感じがあったと思うんですけど、私は最初、春役ではなくナオコ役で受けていたんですよ。でも両方の役をやってみて、最終的に春役になりました。

早織:この作品は脚本に手加減がないんですよね。簡単なところに落ち着かなくて、それがすごく面白おかしかったんです。ただ単にラブシーンがたくさんあるということではなく、そのラブシーンを懸命に演じることで生まれる“滑稽さ”があって、私はそこに惹かれました。

中村:私も、これが映画になるとどうなるんだろうというワクワク感をすごく感じました。まったく想像できないものがたくさん詰まっていたので、挑戦してみたいと思わされましたね。

ーー完成した作品をご覧になっていかがでしたか?

早織:「へ~!」という感じでした(笑)。私がこれまでに経験してきた映画の現場と違って、リハーサルの期間がすごく長かったんです。それは、江本監督が演劇界出身ということが大きいと思うんですけど、6日間ぐらいみっちりと役者陣それぞれが役と向き合う期間がしっかりありました。江本監督は確固たるビジョンを持っておられたと思いますが、クランクインしてから現場でもアイデアがどんどん生まれていたので、完成形がなかなか想像できなかったんです。撮影時の細かいことも思い出せなくて(笑)。

中村:そうそう! だからインタビューで答えづらいんですよ(笑)。現場では、流れの説明だけがあって、あとは好きにしていいよみたいなことも結構あったので。だから私も「こんな感じになったんだ!」というのが率直な感想でした。撮影はさらっと進む感じではまったくなくて、私も今まで経験したことがないような現場でした。例えるなら、みんなでやっていることを、“いつの間にか撮られている”というような感覚ですかね。

早織:私はそれまで“撮られる”という経験をかなり重ねてきていたので、おそらくその時の意識が癖になっていたんですよね。何か表情で説明しようとしてしまうというか。でもそれは、監督が求められていたこととは違ったので、私の癖が抜け切らない時は、「もうあんたの顔は撮らないから」とか散々言われてしまいました。だから、細かな表情をどうするかとかはもう考えずに、ただナオコとしてその場所に立って生きていた気がします。いわゆる“演技”ではありませんでした。

ーー話を聞いているだけで、ものすごく過酷な撮影だったということが伝わってきます。公開決定のタイミングで早織さんが「あーもう監督に会いたくない。でも忘れられない、あの創作に向かう非情な非常な愛。」というコメントを寄せられていたのも非常に印象的だったのですが…。

中村:やっぱりそこを…(笑)。

早織:もちろん映画の話を、今このように聞いていただきたいのでそう書いているんですけどね(笑)。撮影現場は本当に精神問答のような感じだったんです。映画を観ていると、撮影最中の自分の精神状態が蘇ってきて、ゾッとする瞬間もあります。ずっと脂汗をかいていました(笑)。それに、私の素質としては、演出家の才能は皆無ということがナオコになったことを通してわかりましたし、集団をまとめる力もないなって。大勢の前で大きな声を出すのもすごく苦手なんですよ。強いプレッシャーを感じてしまいます。

中村:カリスマは生まれ持つ資質だってことを思い知らされました。私はそもそも舞台の経験があまりなかったので、声を張るところからのスタートで。江本さんに「声が違う!」とか言われて(笑)。春は女優なので自分と重なる部分もあったんですけど、私も早織さんと同じで、もう春としてじゃなきゃ立っていられませんでした。“中村有沙”を出しちゃいけないという思いが強かったです。自分ではいろいろ計算しながらやろうとしたんですけど、結局どうにか必死にやっていくのが精一杯でした。

■早織「有沙ちゃんにはめちゃくちゃ甘えさせてもらった」

ーー2人とも若くして芸歴10年以上のキャリアを積まれていますが、今回初めて共演してみていかがでしたか?

早織:私はすごく淡白というか、執着心に乏しいところがあるんですが、ナオコは人に対して執拗にアプローチをしながら、好きになった人をとことん追いかけ回す。私とは真逆の性格の人間でした。なので、ある意味自分の中で拒否しているような部分を掘り下げていく必要があったんです。有沙ちゃんにはその過程ですごく助けてもらいました。休みの日まで私のセリフ合わせに付き合ってもらったりとか、めちゃくちゃ甘えさせてもらいましたね。ひとりではいられない心境になっちゃったんですよ。誰かを巻き込まずにはいられない、みたいな。本当は共演者に向かって言いたくないんですけど、「あなたのここが嫌い」とかを言い合ったりもして(笑)。

中村:そういうのありましたね(笑)。リハーサルでもそういうことが結構あったから、「毛布教」メンバーで巻き込まれずにすんだ子はいないですよね。

早織:例えば、江本さんが私に対して怒ったりしている時って、みんながその光景を見ているし、聞いているんですよ。江本さんはキャストひとりひとりが自立していくことを求めていたので、江本さんが私に言うことは、ほかのみんなにも言われる可能性がありました。

中村:確かに自立していないとやっていけない現場ではありましたね。一瞬の甘さも許されなくて、少しでも緩んだら、空気が一瞬で変わってしまう。私ですらそういう感じだったので、みんなを引っ張るナオコ役の早織さんは、その何倍も大変だったと思います。私なんか、すごく甘いなと思いましたね。

早織:私、これまでの自分が甘いとは思っていなかったんですよ。でも、その自分への過信が甘かったなって。鼻っ柱をバーンとへし折られたみたいになりました。

ーー「毛布教」メンバーをはじめ、共演者も個性豊かな方々が集まっていますよね。特に印象に残っている方はどなたですか?

早織:私、安藤玉恵さんがすごく好きな女優さんだったので、今回お会いできてうれしかったです。共演しているのは1シーンだけなんですけど、撮影に入る前に私たち2人の状態を見て、「心中お察しします」って(笑)。

中村:それまでの撮影の様子を聞いて「そっか……」って感じでね(笑)。あのシーンは本当に一瞬だけだったんですけど、そこで強烈な印象を残せる玉恵さんは本当にすごいです。あと「毛布教」のメンバーは1人につき5時間かかるぐらいエピソードが盛りだくさんですね(笑)。

早織:確かに(笑)。今回の映画の中のキャラクターって、演じる本人からも引き出されている部分があるんですよ。(桜井)ユキちゃんとかは、すごくしっかりしているけど、ちょっと抜けているところもあったりとか。

中村:(森田)涼花ちゃんとか、まんまの人もいますからね。涼花ちゃんとはこの作品の撮影のあとも同じ舞台に出ていたのでずっと一緒だったんですけど、プライベートで接してみると、あのマイペース感は役のまんまだなって。

早織:マイペースだけど、優しくて仲間思いな感じとかね。ナオコに関しては、本来の監督のイメージとは離れて、私の情けない部分が出てきてしまっています(笑)。

ーー「毛布教」メンバーみんなが下着姿になって、ホースで水を掛け合いながら町へ出て行くシーンはとても印象的でした。

早織:よかった! それはすごく嬉しいです。

中村:でも、私あのシーンで服を脱げなかったのが心残りなんですよ。

早織:えっ、脱げなかったの?

中村:服が足に引っかかっちゃってるんですけど、あれはリアルです(笑)。でも楽しかった!

早織:撮るまでは大変だったけど、すごく楽しそうに見えるよね。あのシーンは1回濡れちゃうともうダメだから、何があっても続けるという感じでとても緊迫感がありました。

ーー早織さんはバッサリと髪を切って外見的にも大きな役作りをされていますよね。

早織:最初から髪は短くするんだろうなとは思っていたんですけど、あそこまで短髪にするとは私自身も想像していなかったんですよ。でも、監督が「潔い髪型がいい」と仰って、監督がそう言うなら私としてもそうしたいと言って、バッサリと切らせてもらいました。中学生の頃、ボーイッシュな女の子に憧れてベリーショートにしていたんですけど、それ以来の短さでした。懐かしく感じつつも、大人になって短くするとまた違う感覚でしたね。若い頃の父親に似てると思いました(笑)。

■早織「ラブシーンのほうが監督からの叱責が少なかったので逆に助かった」

ーー“女たちが繰り広げる15分に1度の剥き出しの愛ーー”と作品のコピーにあるように、過激なラブシーンも本作の大きな見どころのひとつだと思います。このようなラブシーンに挑むにあたって、抵抗や迷いはありませんでしたか?

中村:そういうシーンをちゃんと撮らないと成り立たない作品だなというのは、脚本の段階から感じていたので、抵抗はまったくなかったですね。ナオコと春のやりとりが映像化されたら、ただエロいだけじゃなくて、すごく面白くなるんじゃないかなって。だから2人のシーンはそんなに色っぽい感じにはなっていないんです。江本さんも絶対にそういう感じでは撮らないだろうなと思っていたので、そこはもう信頼していましたね。撮影もすごく楽しかったです。

早織:初めて挑戦することだったので、もちろん緊張もしましたし、やっぱり難しいとも思いました。でも、抵抗とか遠慮とかって、誰が誰に対して感じるのかなとかを考え始めたら、もう気にしなくていいやって思えたんですよね。思い切ってやれる環境を与えてもらえたことが貴重だなって。裸になるということは自分を曝け出すことになるので、変な嘘もつけないじゃないですか。そこに挑戦できたのも、私にとってはすごくありがたかったですね。有沙ちゃんとのラブシーンも、私たちはお互い一生懸命臨んでいただけだという気がします。

中村:本人はあまりなんとも思っていないんですよね。逆にスタッフさんが気を遣ってくださるというか(笑)。スタイリストさんをはじめ、スタッフさんたちがしっかり考えてくれて、きちんと環境を整えてくれたので、私たちは皆さんを信頼して、もうやるだけって感じでした。

早織:私はラブシーンの撮影時のほうが劇団員たちとのシーンより監督からの叱責が少なかったので、逆に助かったという思いもありますね(笑)。「毛布教」の稽古や舞台は感情や動きが大変で、監督の演出は厳しかったです。でも冒頭の、地面でグルグル回りながらのラブシーンはキツかったですね。地面がコンクリートなので、どれだけスタッフさんが掃除してくださっても細かい砂利があったりするのでかなり痛くて。何度もできないと思ったので、集中してやりましたね。ああいうシーンのアイデアも江本さんならではなので、発想がすごいですよね。涼ちゃん(森田涼花)の顔を舐め回すシーンとかもすごい(笑)。涼ちゃんが一応ちょっと舌を出したりして頑張って応えようとしているのが、可愛くておかしいんですよね。

中村:「掃除機みたいな感じでやって!」って言われて頑張るんですよね。メンバーも「え?」って感じになりながら(笑)。

ーー今回の作品で得た経験は、自身の今後の活動にどう繋がっていくと思いますか?

早織:今回の経験を通して、意識の改革が起きたというのは確実にありました。これからより一層、一つひとつの仕事に向き合っていきたいですが、やっぱりすぐ、劇的には変われないですよね。私は今回の撮影が終わった時、お芝居が嫌いだという感情も経験しました。人が演技をしているのを見ても、何が楽しいのかわからなくなってしまったというか……。「“楽しい”って何だっけ?」って。自分がそれまで感じていたことって本当だったのかな、上っ面だけだったんじゃないかなというような問いがどんどん湧いてきてしまって、すごく気持ちが停滞してしまったんですよ。次の仕事が控えていたので、マネージャーさんからは一旦気持ちを切り替えて、次の仕事に集中するようにとアドバイスをもらいました。何年後かに振り返った時に、この作品に出演したことで私はこう変われたんだって思うかもしれないですけど、まだ全然その変化の過程なので、今後この人はどうなっていくんだろうと見守っていただけたらありがたいです。

中村:「“楽しい”って何だっけ?」っていうの、すごくわかります。今まで自分は何に対してそういうことを感じてきたんだろうって、私もすごく考え込んでしまいました。今回の作品を通して、私自身本当にたくさんのものを得たんですけど、果たして今それを活かして仕事ができているかというと、自分でも疑問に思うところがあります。江本さんは“個性”をすごく大事にしてくださる方ですが、結局自分の個性ってなんだろうとか、本当に自問自答が多い現場でした。そういうことも含めて、私はやっぱり芝居が好きで、続けていきたいんだなということを自覚できたので、いろいろな人に迷惑をかけてしまいましたが、この作品に出会えたことは自分の中でも本当に大きな経験になりました。

宮川翔

最終更新:10/5(水) 16:36

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