ここから本文です

ショーン派閥とブレット・ハートの緊張関係――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第194回(1995年)

週刊SPA! 10/5(水) 9:10配信

 ブレット・ハートとショーン・マイケルズの“暗闘”は1995年4月の“レッスルマニア11”あたりからはじまっていた。それはWWE世界ヘビー級王座をめぐる闘いであり、WWE内部の権力闘争でもあった。

 ショーンはディーゼル(ケビン・ナッシュ)、レーザー・ラモン(スコット・ホール)、123キッド(ショーン・ウォルトマン)、ハンター・ハースト・ヘルムスリー(現在のトリプルH)らとクリックなる派閥を結成。“数の理論”でバックステージでの影響力を強めていった。いっぽう、ブレットは仲間と群れることを嫌い、つねに単独行動を選択した。

 夏のスーパーショー“サマースラム”(19959年8月27日=ペンシルベニア州ピッツバーグ)のカード編成とそのレイアウトには、わかる人にはすぐにそれとわかり、わからない人にはまったくわからない、きわめて政治的な思惑がうごめいていた。

 全9試合中、第1試合と第2試合、セミファイナルとメインイベントの4試合がすべてショーン派閥クリックがらみのシングルマッチになっていた。オープニング・マッチの白使(新崎人生)対キッド(パワーボムから白使がフォール勝ち)、第2試合のトリプルH対ボブ“スパークプラグ”ホーリー(ペディグリーからトリプルHがフォール勝ち)の2試合は、クリックが製作総指揮・監督のビンス・マクマホンに対してマッチメーク上でのなんらかの発言力を行使したことを示唆していた。

 セミファイナルにラインナップされた王者ショーン対挑戦者ラモンのインターコンチネンタル選手権“ラダー・マッチ”は、前年3月の“レッスルマニア20”で実現した“伝説のラダー・マッチ”のセルフカバーだった。試合は24分58秒の耐久マッチの末、リングの上空にセッティングされたチャンピオンベルトを捕獲したショーンが王座防衛に成功した。

 試合終了後、ショーンとラモンはベビーフェースらしくリングのまんなかでクリーンな握手を交わし、1万8062人の大観衆はスタンディング・オベーションでふたりに大きな拍手を送った。クリックにとってはまさに計算どおりの展開だった。

 メインイベントにラインナップされた王者ディーゼル対挑戦者メイベルのWWE世界戦は、ディーゼルがトップロープからのフォアアーム(エルボースマッシュ)という新技で超巨漢メイベルにフォール勝ち。十八番ジャックナイフ(投げっぱなしパワーボム)を“温存”しての完勝モードだったが、試合内容的にはやや課題を残す一戦だった。

 セミファイナルでラダー・マッチで対戦したショーンとラモン、メインでタイトルマッチをおこなったディーゼルの3人が3人ともベビーフェースだったという点がクリックの政治力を表していた。ベビーフェース・サイドのトップグループががっちりと徒党を組んでしまえばビンスとの関係は“対等”だった。この状況はやがて大きな問題へと発展していく。

 ブレットはこの日、全9試合中、第7試合という微妙なポジションでニューカマーの“悪い歯医者さん”アイザック・ヤンカム(グレン・ジェイコブス=現在のケイン)とシングルマッチで対戦。ジェリー・ローラーが実況ブースから飛び出していってこの試合に乱入し、結果的にブレットはやや不本意な反則勝ちを収めた。

 J・ローラーがエージェント陣によってバックステージに“連行”されたあとは、新顔のドク・ヘンドリックス(マイケル・ヘイズ)がカラー・コメンテーターとして実況ブースに座った。80年代を代表する伝説のタッグチーム、ファビュラス・フリーバーズのリーダー格だったヘイズは、現役選手としてではなく、TVショーのプロデューサー捕としてWWEと契約したばかりだった。

 ブレットは9.24PPV“イン・ユア・ハウス3”(ミシガン州サギノー)ではジャン・ピエール・ラフィエット、10.22PPV“イン・ユア・ハウス4”(カナダ・マニトバ州ウィニペグ)ではI・ヤンカムと、それぞれ新顔とシングルマッチで対戦した。

 ショーン派閥クリックによるタイトルマッチとトップグループの独占という状況からはあえて一線を画す姿勢をはっきりと示した。(つづく)

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。

日刊SPA!

最終更新:10/5(水) 9:10

週刊SPA!

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊SPA!

扶桑社

2016年12月13日号
12月06日発売

¥390

・[転売で儲ける](秘)メソッド
・[ゲス不倫ブーム]知られざる波紋
・[痛すぎる発言]ランキング
・冬のボーナス[有名企業50社]対決