ここから本文です

現代のファッションは、ナルシシストを生み出している?

ハーパーズ バザー・オンライン 10/6(木) 11:54配信

肩パッド入りで“You F*cking Asshole”と胸に書かれた1,000ドルもするTシャツや、同じような肩で黒いスパンコールのアニマルが付いた4,000ドルのセーターが売り切れ状態になっている。こういうトップをストリートで見かけた人がどんな反応をするかはよくわからないが(前者を見た人はおそらく侮辱されたと思うだろうけど)、こういう服を着た写真がインスタにアップされたら、どんな反応が返ってくるかは、簡単に想像がつく。写真の左下に、数字が出ている。

ファッションブランドは、今日のカジュアルな(でも、広く蔓延している)ナルシシズムの需要に露骨に応えているのだろうか。インスタグラムには現在、1日あたり3億人のアクティブユーザーがいる。つまり、それだけ大人数が、現代の「私を見て」文化に参加しているということだ。

ソーシャルメディア、特にインスタグラムのおかげで、ナルシシズムは、“うぬぼれ”心のあるポケモンのように巷を席巻している。でも、ここで「ニワトリが先か、卵が先か」の問題。人は初めから“ナルシシスト”で、やっと今、それを発揮できる場所を見つけたということなのだろうか、それとも、ソーシャルメディアが“ナルシシスト”を育てているということなのだろうか。
 
「たぶん、両方でしょう」と、臨床心理学者で、『Psych Alive』誌シニア・エディターのリンダ・ファイアストーン博士は解説する。「私から見れば、ナルシシズムとは、自分自身に対して快感を覚えたいと必死に求めることで、単に気分がいいこととは違うのです。確固たる自意識ではなく、頻繁に強化していく必要のある自意識なのです」。2回タップして強化する(「いいね!」)より、簡単な方法はない。

もしも、この2~3年間のストリートスタイルの記録(インスタの写真)が何か教えてくれたことがあったとしたら、それは、写真を撮り、それを最も頻繁にアップした人たちが、何の臆面もないカササギ(=おしゃべりな人)であり、自慢気なクジャクだということだ。そして、インスタグラムは、ストリートスタイルをファッション業界通年の事業に仕立て上げた。 
 
そのスタイルに興味を持って評価することと、ただ目立ちたいがために目立つ必要性があることには、違いがある。「ファッション好きの人がみんなナルシシストなわけでも、見せたいがために着ているわけでもないと私は思うのです」と、ファイアストーン博士。「ナルシシズムは、単にトレンドに注目したり、外見に気を使ったりすることとは違います。目立ちたいという欲求なのです。実のところ、良く見えることすら必要ないのです」

このところのファッションは、目立つことがすべて。バレンシアガの誇張されたプロポーション、マーク・ジェイコブスの超高いプラットフォーム・シューズ、グッチのスパンコールやネコやレイヤー。「お願いだから読んでちょうだい、見てちょうだい、質問してちょうだい」と頼んでいるようなフレーズが書かれたヴェトモンのシャツやジャケット。いま、フォトグラファーやソーシャルメディアサイトに注目されたかったら、ある程度の奇抜さや皮肉や狂った感じがなくてはならない。
 
「ナルシシズムが人格障害のレベルに達したら、それはとても深刻な症状ですが、私たちがいま気軽にナルシシスト、うぬぼれ屋と呼んでいる人たちのほとんどは、そこまでの症状ではないと思います」と、ファイアストーン博士。「でも、彼らが、注目を浴びたがる、中身よりイメージにこだわるなど、ナルシシストの特徴を示しているのはたしかです」。インスタグラム時代より前に、女性は、Tシャツに書かれた“You F*cking Asshole”のフレーズを支持していただろうか? もう、そんな時代があったなんてことすら、覚えていない人の方が多いのかもしれないけれど。

最終更新:10/6(木) 11:54

ハーパーズ バザー・オンライン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ハーパーズ バザー

ハースト婦人画報社

2017年1・2月合併号
2016年10月20日発売

特別定価:700円

1867年にNYで誕生した世界初の女性
ファッション誌『ハーパーズ バザー』。
厳選された情報を美しいビジュアルと
ともに発信しています。