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映画『アングリーバード』で実践されたSony Pictures Imageworksのアニメーション・メソッド

CGWORLD.jp 10/6(木) 12:10配信

2016年10月1日(土)から映画『アングリーバード』が全国で絶賛上映中だ。シリーズ累計のダウンロード数が約30億という、言わずと知れた大ヒットモバイルゲームを原作とする初めての劇場アニメーション長編である本作。主人公レッド(CV:坂上 忍)をはじめとするキャラクターたちの表情豊かで、そして非常にパンチのある動きも大きな魅力となっている。制作を手がけたSony Pictures Imageworksにて、アニメーターとして活躍中の若杉 遼氏に、本プロジェクトにおけるアニメーション工程について話を聞いた。

<1>テストリールに込められた動きのエッセンスを徹底的に研究する

ーー本作のアニメーションを制作されたSony Pictures Imageworks(SPI)では、常時複数のプロジェクトが稼働していると思うのですが、若杉さんが本作に参加されることになったきっかけを教えてください。

Sony Pictures Imageworks/若杉 遼氏(以下、若杉):以前は米サンフランシスコを拠点に活動していたのですが、ビザの問題でいったんアメリカを離れなければいけなくなったんです。そこでバンクーバーなどに拠点をかまえるプロダクション数社に応募したところ、Sony Pictures Imageworks からオファーをいただいたのがきっかけですね。その時点で、具体的に『アングリーバード』プロジェクトのアニメーターを探していると言われ、面接の際もアングリーバードの制作状況についての説明なども受けました。

ーーご自身の関わられたアニメーションの制作尺(ショット数)と作業期間を教えてください。

若杉:尺としては関わったショットの総計で1分ほどだと思います。作業していた期間は、2016年4月から11月までの約8ヶ月ですね。

ーーご存知の範囲でかまいませんので、本作のアニメーション班の全体的な編成(人数など)を教えてください。

若杉:アニメーターの人数ですが、当初は確か40人ほどで、最終的には70人ぐらいまで増員された気がします。ただ最近のSPIにおけるプロジェクトの規模からすると、これでも小さめですね。構成としては、アニメーションチームは、一番上にスープ(スーパーバイサー)が立ち、その下にそれぞれ10人程度のチームに別れており、それぞれリードアニメーターがアサインされます。私のようなアニメーターは、直接普段からやり取りをするのはリードアニメーターで、リードアニメーターと相談してショットをチェックに出そうとなると、そこからスープや監督に見てもらうというながれになります。

ーーご自身が担当されたパートで手応えのあった点、苦労した点などを具体的にお聞かせください。

若杉:私のチームのリードアニメーターが本当に良い方でした。まだ経験が浅い自分にも良いショットを担当させてもらえたので、どのショットも高いモチベーションを保ちながら本当にやりがいがありました。苦労した点としては、個性豊かなキャラクターが数多く登場するのですが、それぞれの性格や設定を正確に理解した上で演技に反映する必要があったことですね。理解するだけでも相応の時間が必要になるわけですが、3ヶ月くらい経ったあたりから、最初のテイクからそれぞれのキャラクターの演技や動き、また監督が求める動きをつくれるようになりました。最終的には見せる前からOKが出るかどうかも、つかめるようになりました(笑)。

ーーそれはすごい!

若杉:もうひとつ苦労したのが、作業が後半になるにつれて、スケジュールが本当に厳しくなっていったことですね。ショットのクオリティは、言わずもがな時間との勝負で、良い出来映えにするにはセンスだけでなく手が早くないとダメです。そうした意味でも本当に鍛えられました。

ーー最終的に約70人のアニメーターが参加されたとのことですが、がかなり多いように感じました。チーム内でのキャラクターづくり(性格等の設定と、それに基づく動作の特徴等)はどのように行われたのでしょうか?

若杉:SPIに限ったことではありませんが、映画の制作では本格的な作業に着手する前にプリプロダクションという準備段階が設けられます。そこで、各キャラクターの動きの特徴などが細かく定められていき、具体的な動きのテストなども行われます。『アングリーバード』プロジェクトでも、同様のことが行われていたようです。私が参加したタイミングでは、すでに様々なテストショットが用意されていました。スープにそうした映像や資料を見せてもらいながら、キャラクターごとの細かいルールや動き方などの説明をうけました。また制作期間中には、自分が携わっているショット以外のアニメーションも上がってくるのでそれらを見ているうちに自然とレッドたちが自分の一部になっていきました。

ーー具体的に重宝した資料などはありますか?

若杉:モデルシートが非常に良く出来ていたので、それを参考にしながらポーズや表情を勉強していました。私は絵を描くのが好きなので、時間があればアングリーバードのキャラクターを自分でも描いていました。そうしたことも意外と役立っていたのかもしれませんが、どうでしょう(笑)?

ーー本作アニメーションは、目や口を動かし、動き自体も緩急が大きいトリッキーな動きが多いですよね。そうした誇張表現のメソッドはどのように学ばれたのでしょうか?

若杉:その典型がチャック(CV:勝 杏里)の動きですよね(笑)? チャックのような非常に高速で動きまわるキャラクターのアニメーションを手がけるのは初めての経験でした。そこで、まずは同僚が手がけた良いショットをコマ送りしながら研究しました。タメツメの付け方、ポージング、それらを成り立たせている具体的な技法などなど。今でもそうですが、良いと思ったショットはストーキングして(笑)、コマ送りで観るようにしています。本当にマジックのタネ明かしを見ているようですよ。それをやっているうちにある種のルールみたいなものが自分の中で構築されて、最終的にはつくりたい動きを実現できたかなと思ってます。チャックのような動きは、実際に自分で体現できるものではなく、カートゥーンのルールがあります、コツというか。そういうのは上手い人からしか学べないので本当に勉強になりました。

ーーアクティングにおいて、若杉さんが意識されていることを教えてください。

若杉:私が一番大事にしているのはエネルギーです。喋っているショットであればその喋りのトーンと体のエネルギーがちゃんと合っているのか、そこを一番注意深く見ます。特に頭と腰は一番わかりやすく出ると思うので、そこがしっかり合っていれば違和感のない演技がつくれると思います。表情に関しては瞬き、眉毛の動き全てに意味を考えます。“この瞬きの部分で感情が変わる“など、具体的にやればやるほど、それが正解なのかどうか判断がしやすくなります。レビュー時にスープなどから“ココのまばたきを抜いて“と言われるとショックですね、言われた直後は「それがないと式が成り立たないのに!」などとつい思ってしまいます(苦笑)。

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最終更新:10/6(木) 12:10

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