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ディカプリオ主演映画原作 ミズーリで起きる残虐な警官殺し

Book Bang 10/6(木) 8:00配信

 初秋を迎えたミステリー界は早くも話題作続出。翻訳ものでは、ミステリ文庫の創刊四〇周年記念企画ということで、スウェーデンのコンビ作家の大作『熊と踊れ』やCWA(英国推理作家協会)賞を受賞した『生か、死か』等を揃えた早川書房のスタートダッシュが目につくが、筆者の気になったのは同じ早川作品でも話題作に交じってさりげなく刊行された新鋭の長篇であった。

 著者の長篇第四作で、ディカプリオ主演で映画化というお墨付きはあるものの、本邦紹介はこれが初。聞き慣れぬ名前であるのも当然だが、二〇一〇年に作家デビューするまでは音楽や映画業界に従事していたとのこと。初めてメガホンを執った昨年公開の映画BoneTomahawkは食人族の出てくるウエスタン・ホラーだそうで、いかにもマルチな才能を持った人の作品っぽい仕上がりと聞く。

 で、本書だが、主人公のジュールズ・ベティンガーはアリゾナの警察に勤める五〇歳の黒人刑事。やり手だったが、市長の身内を自殺させたのが祟って、酷寒のミズーリの警察に飛ばされる羽目に。だが州北東部にあるその町、ヴィクトリーは「ミズーリでトイレを流すとその街にたどりつく」といわれるほど、凶悪犯罪の横行する場所。

 着任早々、女性の連続屍姦事件にぶち当たるが、その捜査もろくに進まぬうちに、同僚の警官たちが次々と残虐な手口で殺され始める……。

 映画と同様、小説のほうも血腥(ちな まぐさ)い暴力描写が読みどころ。小説第一作もウエスタン・ノワールだったようで、どうやら西部劇ベースの演出が持ち味らしい。ベティンガーたちが破局後の世界を思わせる巨大な廃墟に乗り込んでいくクライマックスにご注目。もちろんミズーリというアメリカ中部の町の風俗描写やベティンガーとクセモノ揃いの同僚たちとの関係劇も、都会の警察ものとはひと味違う迫力が味わえよう。クライムノベル・ファンはぜひ!

[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)
※「週刊新潮」2016年9月22日号 掲載

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最終更新:10/6(木) 8:00

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