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報酬は1年分の肉!物々交換系クラウドソーシング「肉ラウドソーシング」がめざす地方創生プロジェクト

@DIME 10/6(木) 11:40配信

◆地方への人材循環を促進して出会いを提供するプラットフォーム

 仕事交流サイトを提供する「ウォンテッドリー」が9月1日から開始した「肉(ニク)ラウドソーシング」プロジェクトのキックオフが都内で開催された。

「肉ラウドソーシング」とは、首都圏に在住で地域のプロジェクトを手伝いたいという希望者に仕事をしてもらうことで、地元の肉や野菜などを報酬として提供するというもの。人不足、アイディア不足で悩む地方の団体や企業、個人事業者と、地方創生のプロジェクトに携わりたいという首都圏在住者を、特産物を介してマッチングさせる物々交換系クラウドソーシングだ。

「ウォンテッドリーは全てのビジネスパーソンに『出会い』を提供するプラットフォーム。

 テレワーク、Iターン、Uターン、パラレルワーク等、働き方が多様化する中で、企業の直接雇用だけではなく、フリーランスや業務委託など様々な形の出会いを提供している。

 地方創生への機運が高まる中、地方への移住に関しては、仕事がないなどの理由から、断念する方々が多く、地方への人材循環が進んでいないことが実情で、地方側からは『首都圏の人材が優秀なことはわかっているが、自社の予算感と比較すると、依頼できる金額を出すことができない』などのコスト面の問題もある。出会いを提供するプラットフォームとして、地方の課題を解決すべく今回の肉ラウドソーシングを展開することになった」(ウォンテッドリー 逆瀬川 光人さん)

「肉ラウドソーシング」プロジェクトの第一弾は北海道十勝市の19町村に所在する企業、団体の3案件。キックオフでは「十勝清水コスモスファーム」の安藤 智孝さん、北海道大樹町 地域おこし協力隊でカミクマワークス代表の中神 美佳さん、北海道帯広市出身でプロジェクトの運営に関わっている、面白法人カヤック 人事部長の柴田 史郎さんが、応募検討者に向けてのプレゼンテーションを行なった。

◆案件1・「十勝ぼうや牛」1年分で新商品のパッケージデザインをしてくれる方(十勝清水コスモスファーム)

「コスモスファームは父親が始めた牧場で、クラウドシステムを活用して2400頭の牛を管理しているが、2400頭のうち2100頭はホルスタインのオス。ホルスタインのオスを主に町内から集めて育てて食肉として地元のJAに出荷している。

 兼業が多いヨーロッパと違い、日本ではメスだけ集めて牛乳を搾る酪農家と、肉としての牛を扱うウチのような畜産農家にきっちりと分業されている。日本で牛というと和牛と乳用牛で、黒い牛は和牛でオスもメスも肉用。しかしホルスタインのメスは牛乳になるが、オスは祖父の時代まで産業廃棄物として処分していた。オスが食肉牛として市場に流通し始めてまだ40年程度。和牛は高めの価格の肉、スーパーに並んでいる国産牛という表示がホルスタインのオスが多い。うちでは『十勝若牛』のブランド名で主に関西圏で販売している。

 5年前、仕入れの際に偶然1頭だけブラウンスイス牛が混じっていた。ブラウンスイスは日本に4000頭しかいなくて北海道はそのうち1200頭。日本で広まらないのはミルクの量があまり出ないためだが、ミルクはとても濃厚でチーズやヨーグルトの加工品に向いている。だがブラウンスイスのオス牛はいまだに廃棄されている状況だった。少ない種だといつオスが生まれるかわからないので誰もやらなかったが、命を無駄に捨ててしまうのは忍びないとうちでチャレンジすることに。

 地元のJAでは買ってくれないので出荷先に困ったが、オレイン酸の数値は和牛並みに高く、赤身のうまみがぎっしり入っており、和牛と違ってサシが入らないが噛めばうまみがあふれるので、無添加のコンビーフに加工した。ブラウンスイス牛の肉と脂と沖縄の塩だけで製造し、常温で2年間持つ。プライベートブランドの『十勝ぼうや牛』としてブラウンスイス牛のオスの肉はおいしいと2年間に渡り発信してきた。

 今後、常温商品をもっと増やしていきたいと考えている。ヒレとサーロイン、リブロ―スだけで出来ている牛はいない。今まで捨てられていた部位をなんとかしたいという思いもあり、日本で生まれたブラウンスイスなので日本人の舌に合うものをと、去年開発したのが牛肉南蛮味噌。地元十勝の本別町で戦前から無添加で味噌を作っている渋谷醸造さんの南蛮味噌とうちの牛肉を粗めに挽いたミンチを合わせ、常温流通が可能なほど糖度をあげた。ごはんに合うし、マーボーナスなどの炒めものにもよく合う。

 70~100gほどに小分けして税込で500円程度の価格にし、一般流通に乗せたいのでそのパッケージのデザインをしていただける方を募集したい。地元だとデザイナーの選択肢がない狭い世界なので新しいものは生まれにくい。しかし首都圏にもネットワークを広げたくても、どういう接点で仕事を頼むかが難しかったので、今回このプロジェクトに参加することにした。ぶっ飛んだようなデザイン、ネーミングなど遊んでみたいと思っているので、デザイナーでなくても、遊び感を一緒にできる相手を探している。

 お礼は年4回、十勝清水コスモスファームの特産品セット(一例:コンビーフ48缶、肩ロース10kg)。1年分はどのくらいかご本人と話して、場合によっては牛半頭もOK。17部位に分けた牛肉を年に4回に分けて送ることもできる。プレカットなども応じる。ゲストハウスがあるので遊びに来てもらって、牛の世話など現場を見てインスピレーションを刺激してもらう特典という名のガチな労働も付けられる(笑)」(安藤さん)

◆案件2・「太平洋が見える晩成温泉の100回入浴券」で温泉のサイトを制作してくれる方(晩成温泉)

「北海道大樹町は人口5700人ほど。私が生まれたときは8000人ほどだったのでどんどん過疎化が進んでいる。過疎が進むのは若者がいなくなるからだが、地元では仕事が少なくレジ打ちとか芋の仕分けとかしかない(笑)。過疎化が深刻になる中、地域おこし協力隊という制度を知り、地元に掛け合って採用していただき昨年春に地元にUターンした。現在はシティプロモーションやふるさと納税や移住促進の活動などを行っている。

 首都圏に住んでいて地方に移住したい若い人にどういうニーズがあるか調査したところ、移住前から地域のプロジェクトに関わりたい、接点を持ちたいと思っている方が多かった。自分のスキルが通用するか、貢献できるか試してみたり、事前に地元と接点を持つことで知り合いも増やしたいという希望を持っている。移住場所もすでに有名になった場所ではなく、これから何かが始まりそうな面白そうな火種がある地域を皆さん探していることがわかった。

 そういった方々も含めて募集したいのが、晩成温泉のサイトを制作してくれるウェブエンジニアの方。晩成温泉は全国でも珍しいヨード泉。ヨードチンキと同じ成分があり、殺菌効果も高く術後のリハビリや皮膚病にもいいし、温まり方も違うので疲れも取れる。十勝の隣にある日高はサラブレッドの産地だが、以前サラブレッドを育成している牧場が晩成温泉に馬を入れたいと打診してきたことがある。実現しなかったがそれほどいい泉質を誇る。

 大樹町は、約30年前に「航空宇宙産業基地」の候補地とされて以来、官民一体となって宇宙のまちづくりを進めてきて、流行のグランピングも少しずつ広がっている。でも観光が手つかずで、晩成温泉は唯一の観光施設なのにウェブサイトがなかった。それを一緒に制作してくれる人を1名募集する。町の顔として全国にしっかりと情報発信していきたい。

お礼は温泉100回入浴券。首都圏在住の方ならほぼ一生無料で入れる(笑)。建物は古いので近々建て替える計画はある。おみやげも中途半端なのでもう少しいろいろなものを作りたいと考えている。ウェブ制作以外でも大樹町と関わりたいと思っている方は、他にも案件があるので、興味がある方はぜひ声をかけて欲しい」(中神さん)

◆案件3・「十勝の季節の野菜便」で十勝さらべつ熱中小学校のPR活動をしてくれる方(十勝さらべつ熱中小学校 設立準備委員会) 

 北海道更別村は人口が3200人ほどの町で、冬場にジーンズを凍らせる「フローズンパンツ」や、トラクターを使った競技「国際トラクターBAMBA」というイベントでも知られる。

 地域を盛り上げるまちおこしプロジェクトとして2017年4月に「十勝さらべつ熱中小学校」を開校予定で、そのPR活動に関わるスタッフを募集している。熱中小学校とは廃校や空き施設を活用して20代~80代の地元の人たちに出会いと学びの場を提供する活動で、北海道から九州まで10の地域が連携した全国レベルの地方創生プロジェクトとして注目されている。

 熱中小学校の教室では、IT企業などの社長、大学教授、デザイナー、技術者などの講師陣が様々なトピックの講義を行っているが、サテライトオフィス事業や宿泊事業、観光コンテンツ開発、地域の特産品開発などの事業の計画も進められている。募集するPR活動の内容は、地元だけではなく首都圏からも参加者を募ったり、プログラムとして地元の人が講師を務めたり、2016年10月のオープンスクール、来年4月の開校に合わせたPRなど。5年の計画で1.5億円の予算があり、社団法人化されるため、比較的自由に活動ができるという。お礼は更別村の季節の野菜を1年間届ける。

◆肉ラウドソーシングの今後の展開

「11月に10案件を追加する予定で、来年は全国展開も考えている。企業の福利厚生でこのシステムを使うというプランもあり、BtoB向けの販売もできるのでは。また、試作品のワインを飲んでネーミングを考えたり、自治体の課題に対してアイディアを出して報酬としてチーズや肉を食べられるみたいなイベント的な企画も面白い」(柴田さん)

「今回は十勝市からのお声掛けで肉ラウドソーシングの実施に至ることができた。今後も物々交換系クラウドソーシングを他の地方公共団体で展開していく予定。現状のウォンテッドリーの利用企業やユーザーは、首都圏が中心となっているが、一方で、地方事例の増加に伴い、問い合わせも伸びてきている。今後は、地方展開を強め、地方企業へも首都圏のスタートアップ同様に優秀な人材との出会いを提供していきたい」(逆瀬川さん)

【AJの読み】自分のスキルを地方のため活用できるうえ、おいしい肉をいただける

 説明会は下北沢の書店の一画で行われたが、満席で大盛況だった。依頼をする側の安藤さんや中神さん、運営の柴田さん、集まった応募検討者ともども20~30代が多かった。若い世代が中心となって、何か面白いことをやって、異業種間交流や地域間交流を活発にしようという熱意が垣間見られた。自分のスキルを地方貢献に役立てて、都会ではとても価値の高い対価をいただく。片肘を張らないイマドキのWin-Winスタイルは、他の地方からも注目が集まるかもしれない。

文/阿部 純子

@DIME編集部

最終更新:10/6(木) 11:40

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北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。