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雨のパレードは、日本の音楽文化のステージを上げるーーそう予感させるライブを観た

リアルサウンド 10/6(木) 14:00配信

 メジャー1stシングル『You』の発売を記念して東名阪で行われたワンマンツアー「You & I」。池下CLUB UPSET、渋谷CLUB QUATTRO、阿倍野ROCK TOWNと、4月の初ワンマンツアーよりも各地で規模を拡大した今回のツアーは、見事に全会場が即時ソールドアウト。今年は感度の高いリスナーが彼らのことを気にし始めている雰囲気がヒシヒシと伝わってきていたが、この日のライブはその理由を明確に示すものとなった。

 まず彼らの最大の特徴と言えば、そのサウンドである。「バンドでありつつ、バンドサウンドじゃない」という発想の下、ステージにはギター、ベース、ドラムの他にアナログシンセやサンプリングパッドが並び、同期を使うことなく、それらを生演奏することで独自の楽曲を紡いでいく。また、その音像はアトモスフェリックで、リズムの構築は非常にミニマル。ここ日本において「バンドがクラブミュージックの影響を取り入れる」というと、今もエレクトロの流れを汲み、EDMともシンクロするようなクリアなサウンドが多い印象なので、雨のパレードはまだ「一歩先」と言えるのかもしれないが(少なくとも、メジャーシーンにおいては)、世界的に見れば彼らこそがど真ん中であることは間違いない。実際のライブはアンビエントなシンセによるイントロから、「new place」で幕を開けると、SPD-SXとNord Padを用いたディープハウス風の「epoch」や、GAPとのコラボ曲「1969」などで、居心地のいい異空間とも言うべき雰囲気を生み出していった。

 もうひとつ、このバンドの大きな武器と言えるのが、福永浩平のボーカル。ソウルフルで、ウォームな、魅力的な声の持ち主である。「encore」のようなアッパーな曲では自由に体を揺らして音の波を泳ぎ、ピアノをフィーチャーしたバラードの「morning」では、しっとりとリリカルなメロディーを歌い上げたりと、多彩な表情も光る。

 しかし、「音圧で押す」という選択をしていない分、「フィジカルなライブバンド」という意味においては、まだ成長の途上にあると言うべきだろう。特に、彼らの曲のベースは空間的なアプローチが多く、それが音源での浮遊感につながっているわけだが、最近の曲はギターもクリーンのカッティングやエフェクティヴなプレイが多いし、ドラムも基本音数が少なめなので、このアレンジでしっかりとグルーヴを出すには、かなりの演奏技術が必要。もちろん、これは彼らの理想としているものの高さゆえであり、そう期待させるだけのバンドだということだ。

 なんてぼんやり考えている中、新曲として披露された「stage」という曲が、今後の可能性を感じさせる一曲であった。ここまで書いてきた雨のパレードらしさはそのままに、BPMを少しだけ上げ、音数を少しだけ増やした攻めの一曲で、中でもシャウト気味な福永のボーカルはいつになく高い熱量を放つ。前述したインタビューでは、ライブにおけるジャック・ガラットのロック魂に対する共感も語っていたが、この曲はまさにステージからフロアをロックするナンバー。その勢いそのままに「10-9」、さらには「Tokyo」と続けた終盤の流れは非常に素晴らしかった。

 ラストは「辛い状況にある人を救える曲を作りたかった」という「You」。「ホントは〈生きていくんだ それでいいんだ〉って言いたいんだけど、今の僕だとまだ説得力がないから、今書ける言葉で書きました」と、以前インタビューでも話していたように、玉置浩二の「田園」の歌詞を引用しながら語ったこの曲は、バンドとオーディエンスを精神的につなげる一曲であり、時間が経つほどにその重要度を増していくことだろう。さらに、アンコールではインディーズ時代に発表した『new place』から、鍵盤ハーモニカをフィーチャーした「夜の匂い」を披露して、この日のライブが終了。途中のMCでは「いつか幕張でワンマンやるから」と頼もしいことを言ってもいたので、これからのさらなる活躍が非常に楽しみだ。彼らがそれを成し遂げたとき、この国の音楽文化のステージがまたひとつ上がる。このバンドはそういうバンドなのだから。

金子厚武

最終更新:10/6(木) 14:00

リアルサウンド