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「オートファジー」が生命の根源に直結している理由

JBpress 10/6(木) 6:20配信

 東京工業大学栄誉教授の大隅良典さんが、ノーベル医学・生理学賞を受賞しました。心からお祝い申し上げます。

オートファジーの仕組み(図)

 受賞理由となった「オートファジー」は、酵母から人類まで、実に幅広い生物の細胞内で起きている現象です。それだけ「生きることの根源」に直結した、普遍的なメカニズムといえます。

 オートファジーの作用を一言で表すなら、細胞内の「ゴミ掃除」です。

 あらゆる生き物の体は、細胞でできています。人体は、約60兆個もの細胞の集合体。一方、酵母は、1個の細胞が1個体になる「単細胞生物」です。

 人間でも酵母でも、細胞の中には、タンパク質の分子が高濃度で存在しています。タンパク質はとても傷みやすい分子で、熱や酸化反応によって簡単に変性してしまいます。

 でも生きている以上、細胞の中では、熱を発したり酸化を進めるような“危険”な化学反応が、ひっきりなしに行われている。つまり細胞内のタンパク質は、どんどん劣化していく運命にあるのです。これを放っておくと、傷んだタンパク質分子が溜まり、細胞は機能不全に陥りかねません。

 実際、神経の細胞でオートファジーが働かないようにした実験用マウスは、神経変性症状が生じることが分かっています。これは人間でいうなら、パーキンソン病のような病気に当たる症状。オートファジーは、劣化したタンパク質を取り除くことで、こういった病気を防いでいると考えられます。

■ 掃除の方法には2つのタイプがある

 オートファジーはこんなふうに起きます。まず細胞の一角に、「オートファゴソーム」と呼ばれる小さな袋が生じ、タンパク質などを包み込みます。この袋は次に、「リソソーム」という別の小胞と合体します。リソソームはタンパク質などの分解酵素を含んでいるため、オートファゴソームに取り込まれた中身はすべて、バラバラに壊れるのです(図)。

  (*配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで図をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48055)

 オートファジーは、タンパク質分子よりもっと大きな成分、例えばミトコンドリアのような細胞内の小器官も分解します。このときは、オートファゴソームの中にミトコンドリアが丸ごと取り込まれている様子が、顕微鏡で観察できます。取り込んだものは何でも壊す、ダイナミックなお掃除システムなのです。

 近年の研究で、オートファジーには、ランダムに起きるタイプと、古くなったターゲットを狙って壊すタイプがあることがわかってきました。

 前者は、たまたま膜の中に入ったものを、古いものも新しいものもまとめて壊すやり方で、例えて言うなら温泉の「源泉掛け流し方式」です。掛け流しの湯船は、お湯の供給量と同じ量を常に排水していますね。そうやって中身を常時入れ替えることで、湯船の中がきれいに保たれます。単純な割になかなか有効な方法といえるでしょう。

 後者は、不良化したミトコンドリアなどに特別のマーキングをして識別し、オートファジーへ取り込む方式。温泉の例で言うなら、湯船に浮かぶゴミを直接すくい上げるやり方といえます。効率は高いですが、それだけ複雑なシステムが必要になります。この2つのタイプを併用して、細胞内の鮮度を保っているわけです。

■ リサイクルされるアミノ酸量は、食べる量より多い

 人体の中では、毎日200グラム弱ほどのタンパク質が分解されています。この半分程度、1日100グラムぐらいが、オートファジーによる分解と見積もられています。

 タンパク質は、アミノ酸という小さな分子が数十個から、ときに数千個も連なって作られる、巨大な分子。オートファジーは、これを元のアミノ酸へバラします。そしてバラバラになったアミノ酸は、新たなタンパク質合成の材料として使われる。つまりオートファジーはゴミ掃除であると同時に、体内の「リサイクルシステム」でもあります。

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最終更新:10/6(木) 6:20

JBpress

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