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グーグル新スマホ「ピクセル」の強みはAIアシスタント

ニューズウィーク日本版 2016/10/6(木) 16:08配信

<消費者のためのAI革命を先導するグーグルのスマートフォン「ピクセル」とスマートスピーカー「グーグル・ナウ」> (写真は、ピクセルと一緒に発表されたナウ)

 グーグルはサンフランシスコで4日、発表イベントを開催し、スマートフォン「ピクセル」をはじめ、ハードウエアの新製品や新サービスを一挙に公開した。先月アップルが行ったiPhone7の発表と比べられるのは当然の成り行きだが、アップルとの比較はグーグルにとって望むところだ。グーグルのピクセルはスマホ史上最高のカメラを内蔵するなど、iPhoneに対抗するものだからだ。

 だが、重要なのはスマホ本体よりもそれを動かすソフトのほうだ。ピクセルにはグーグルの次世代AI秘書「グーグル・アシスタント」が搭載されている。併せて発表されたスマートスピーカー「グーグル・ナウ」にも搭載されたアシスタントは、アップルの「SiRi」、マイクロソフトの「コルタナ」、そして何よりもアマゾンのスピーカー「エコー」に搭載された「アレクサ」に真っ向から勝負を挑む消費者向けAIだ。

【参考記事】Pixelに見る新しいGoogleの哲学:「垂直統合への移行」と「厳しすぎるプライバシー保護よりAIの利便性」

 グーグルはこの日、ストリーミング端末「クロームキャスト」の4Kバージョン、スマートルーターシステム、新型のVRヘッドセットも発表したが、最大の目玉はピクセルとグーグル・ホームだった。グーグル・ホームは小型の空気清浄機のような外観。エコーと同様、音声で指示すると音楽を流し、質問に答え、家電と接続すれば、オン/オフ制御もやってくれる。

 アシスタントの機能はピクセルの売りの1つであり、グーグル・ホームの唯一のセールスポイントだ。もしもあなたがクロームキャストで映画を見て、「グーグル・プレイ」で音楽を聞き、「グーグル・カレンダー」でスケジュール管理をしているなら、アシスタントは大いに役立つ。アシスタントに一声掛ければ、それらすべてを使えるからだ。自宅にグーグルの子会社ネスト製の賢いサーモスタットを取り付けているなら、エアコンの操作もアシスタントがやってくれる。フィリップス製のヒューなど賢い照明システムを使っているなら、部屋の明かりのオン/オフもアシスタントにお任せだ。

自分だけのグーグルを構築

 アマゾンのエコーに内蔵されたアレクサも同様のタスクをこなせるし、アレクサのプロトコルは公開されていて、何百ものアプリが開発されている。一方、エコーより40ドル安い129ドルのグーグル・ホームには、グーグルのデータすべてにアクセスできる強みがある。iPhoneのSiRiのような役割を果たすアシスタントを内蔵したピクセルもそうだ。「目標は、ユーザー1人1人のためにカスタマイズされたグーグルを構築することだ」と、グーグルのスンダー・ピチャイCEOは発表イベントで宣言した。

【参考記事】人材流出が止まらぬグーグル自動運転車プロジェクト、何が起きてるのか?



 エコーやグーグル・ホームのようなデバイスは今はまだニッチ製品だ。アマゾンによると、14年以降エコーは推定350万台売れた。これは、iPhoneの1週間の出荷台数とほぼ同じだ。だが近い将来、音声認識のAI秘書は、ユーザーとコンピューターの対話に革命をもたらすだろう。音声応答システムは、既に多くの消費者向けアプリの標準になっている。一声掛けるだけでタスクをこなすAI秘書が普及するのは時間の問題だ。グーグルやアマゾンのような企業が開発したAI秘書ならなおさらだ。この2社は膨大なデータを抱えており、それを活用すべくAI開発に何十億ドルも投資してきた。

【参考記事】人工知能が加速させるボイス革命

 今のところエコーのアレクサやグーグル・ホームのアシスタントは、雑学クイズに答えてくれたり、賭けで遊ばせてくれたりする程度だが(4日には、グーグル・ホームをコイン投げゲームの代わりに使うデモもあった)、用途は日々広がっている。既にエコーは配車サービスのウーバーでタクシーを呼んだり、ドミノ・ピザを注文したりしてくれるし、お薦めのレストランも教えてくれる。

 ただし、気になる問題がある。AI秘書にプライバシーをすべてを把握されてもいいのだろうか。AI秘書は常にオンの状態で、言うことすべてに聞き耳を立て、通勤ルートからお気に入りのTV番組、頻繁にコンタクトをとる友人まで、生活のほぼすべてを知り尽くしている。

すべてを知っている秘書

 我われは既にグーグルなどのサービスに大量の情報を提供している。このデータをもとにこちらのニーズを先取りして、タスクをこなす気の利く秘書がいればさぞかし便利だろうし、それに飛びつくユーザーは多いかもしれない。確かに、最初は薄気味悪い感じだろう。グーグル・マップが通勤ルートの渋滞に気付くと、アシスタントがいつもより30分早く起こしてくれたり、グーグル・カレンダーが母親の誕生日には花を注文してくれたりするのだから。

 それでも、こうした消費者向けAI革命が私たちの生活を変えるのは間違いない。グーグルかアマゾンかアップルかマイクロソフトか、それにもちろんフェイスブックか、いずれかのAI秘書があなたに寄り添うことになるだろう。秘書に知られてはまずい時のために、くれぐれもオフにする方法を確かめておくことだ。

マーク・パートン

最終更新:2016/10/6(木) 16:08

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