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藝大生の必要経費 最後の秘境「東京藝大」探検記(3)

デイリー新潮 10/6(木) 6:30配信

 生きるだけでもお金はかかる。中でも芸術の世界は、お金のかかりかたも浮世離れしているらしい。『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』の著者、二宮敦人さんに藝大生のお金の使い方について、聞いてみた。

■楽器の値段は豪邸と同じ

 音楽学部(音校)であれば、何と言ってもまず楽器が高い。

「100万単位ですからね。ある学生さんは浪人が決まった時、ローンを組んで新しいホルンを買ったそうですよ。やはり良い楽器を使わないと、受験でも不利だそうです。定価が130万円で、少しまけてもらって100万円ほどだったとか」

 彼は、受験勉強と練習の合間を縫ってバイトを続け、月3万のローンを払い続けたそうだ。

 ほかの楽器、たとえばハープだと、「ちゃんとしたもの」は300万円くらい、「高い」のは1000万円くらいだというが、これはまだ安い方だそうである。特に高いのは、ヴァイオリンとか、ピアノだ。

「ヴァイオリンは、ものによっては億です」

 もはや豪邸のレベルなのだ。持ち歩くだけでも恐ろしくなりそうである。さらにパイプオルガンになると、価格ばかりでなくそのサイズも超巨大。奏楽堂に据え付けられているオルガンは、ホール全体が一つの楽器であるという考えのもと、可動式の天井まで備えた一大設備となっている。ここまでくると個人で所有できるものではない。

 楽器単体の値段もあるが、それだけでなく専攻によってかかってしまうお金というものもあるそうだ。

「打楽器専攻の学生さんなんですが、持っている楽器の数が凄いんです。シンバル8枚に、ボンゴ、マリンバも2台、電子ドラム、ドラムセット、トライアングル、マレット(バチ)……そこまで思い出してもらってメモしたのですが、まだまだありそうでしたね」

 取材日もリュックから太鼓のバチを10本取り出して見せてくれたという。

「打楽器の幅は広いので、演奏会ごとに何種類もの楽器が必要になってしまうそうですよ。もし足りない楽器があれば買うか、借りるか、あるいは作るかして調達しなくてはならないそうです。さらに、その一つ一つの楽器の奥がまた深い。たとえば太鼓のバチでも、メーカーや種類が異なると、ぽーん、どーん、ほーん、くらいは音が変わるそうなんですよ」

 だから複数必要になってしまうわけだ。それにしても音が異なるのは、どうしてなのだろう? 

「バチの先端はゴムを糸で巻いて作られているんですけど、ゴムの作り、糸の巻き方が様々だそうです。それも、簡単にマネできるような巻き方ではなくて」

 たとえば1本1万2千円というフランス製のバチは、糸の巻き方が幾何学模様のようで、どう巻いたらこうなるのかさっぱりわからない。その巻き方を日本人で解明できる人がいないので、壊れたらフランスに送って直してもらうしかないとか。

 楽器によっては、それを運ぶだけでもお金がかかる。たとえばコントラバスを持っての移動では、コントラバス用の指定席まで買わないといけないので、お金が倍かかってしまう。コントラバスを手に入れるだけでも150万円から500万円を払うというのに、買ったら買ったで一苦労だ。

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最終更新:10/6(木) 6:30

デイリー新潮

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