ここから本文です

一般社団法人 日本音楽著作権協会 | ビジネスパーソン研究FILE

就職ジャーナル 10/7(金) 10:00配信

ビジネスパーソン研究FILE
一般社団法人 日本音楽著作権協会

にしさか・もえ●送信部 ネットワーク課 係長。京都大学教育学部卒業。2006年入社。裏方として人を支える役割が好きだったため、世の中の仕組みを支えるインフラ系の仕事に興味を持つ。金融業界や鉄道業界などを回ったのち、現社に出合う。「音楽は社会が変化してもなくならないもの。その著作権を守り、音楽業界を支えていく仕事はこの会社だけができること」と感じて入社を決意する。
■ 入社後、音楽利用者への対応を担当。4年目以降、権利者側の対応を手がけ、仕事の意義を実感

一般社団法人日本音楽著作権協会(以下、JASRAC®)は、音楽著作権の管理を行っている。楽曲や歌詞の著作権を持つ作詞者、作曲者、音楽出版者などから信託を受け、演奏や録音などで音楽を利用する人に対する利用許諾や使用料の徴収、権利者への分配、著作権侵害への対応などを手がける。西坂 萌さんは「世の中を支える仕組みに携わりたい」と考えて、JASRACに入社した。

 

入社後、2週間の新人研修を受けたのち、大阪支部の配属となり、利用者に向けた演奏権の管理を担当することに。
「演奏会やライブハウス、カラオケボックス、飲食店などで、生演奏やBGMで音楽が流れていることはよくあると思います。私が配属されたのは、そうした場での音楽の利用を管理する部署です。主に演奏会(コンサート)での利用を担当するチームのメンバーとして、先輩に教えてもらいながら少しずつ仕事を覚えていきました」

 

西坂さんが任された仕事は、演奏会などのイベントを主催する利用者の窓口となること。利用申込書をもとに、入場料や会場の規模、さらにはどんな楽曲をどういった目的で使用するのかなどを確認し、JASRACが管理する楽曲を利用することに対して許諾を行う。そこから、社内システムを使って使用料を算出し、利用者に向けた支払いの案内も行うという。
「配属直後から大阪府内の北側の地区を担当しました。ひと言で演奏会と言っても、個人の方が入場料を取って催す小さなものもあれば、大手のコンサート事業者が開催する夏フェスのような大規模なものまであります。また、演奏を目的とするのか、あるいはダンスイベントの背景音楽として使用するのかなど、音楽の使われ方によって使用料の算出方法が変化します。一つひとつの利用状況が異なるので、それらを正しく把握した上で使用料を算出しなくてはなりません。毎日のようにたくさんの問い合わせがありますし、忙しい時には一日中ずっと許諾手続きを行っていましたね」

 

とはいえ、入社当初の西坂さんには、著作権法の知識など一切なかった。利用者から問い合わせを受けても即答できず、先輩にフォローしてもらうこともしばしばだった。
「間違った説明をするわけにはいかないので、多くの利用者の方とやりとりする中、どんな質問をされることが多いのかを自分なりに把握し、関連する法知識を重点的に覚えていきました。大阪の都市部ではいろんなイベントやコンサートが開催されますし、劇場や大きなテーマパークもあります。ショーや公演、BGMに音楽を使用する場合にも使用料が発生しますし、それぞれ規模も使われ方も違い、判断が難しいケースがたくさんありましたね」

 

利用状況を判断する際には、申し込み書類だけでなく、イベントのチラシやプログラムなども確認するが、それだけでは判断できないことも多い。そんなときは、利用者に内容確認の問い合わせをしたり、実際にイベントを見て判断するという。
「入社1年目の終わりに、あるイベントの案件で悩んでいたら、上司から『自分の目で確認してみては』とアドバイスを受けました。実際に見に行くと、ただの演奏会ではなく、踊りや朗読などもあり、楽曲の歌詞がその演出において重要な役割を果たしているシーンもありました。『書類だけでは判断できない』とあらためて実感しましたね。大阪支部時代は、いろんなイベントを見て回り、ケースバイケースの事例を一つひとつ学ぶことができたと感じます。学生時代はイベントを楽しむ側だったけれど、イベントを提供する人たちとかかわる立場となり、そこに大きなやりがいを感じるようになりました」

 

入社4年目、西坂さんは東京の本部に異動し、作詞者、作曲者、音楽出版者などの権利者に向けた著作権管理の信託契約関連業務を担当することになる。
「権利者の方の問い合わせ対応や、信託契約の手続き、契約内容の変更、解約手続きなどを手がけました。それまでは利用者の方に対応してきましたが、今度は権利者の方の窓口となるので、仕事内容がまったく違い、最初のうちは戸惑いましたね。楽曲や歌詞の権利をお預かりしている方からは、住所の変更やペンネームの追加、契約内容の変更など、さまざまな連絡がありますので、一つひとつに対応していきました。権利を預けていない方からも、著作権に関する問い合わせが多くありました」

 

問い合わせや要望があった場合は、関係する部署との連携が必要になる。例えば使用料の分配についての問い合わせは、それを管理している分配部へ、楽曲の権利情報の内容なら情報を管理する資料部へ、海外で使用されるケースについては国際部へ連絡を取り、詳細を確認するという。
「内容によって連携する部署が違うので、慣れないうちはどの部署に確認すればいいのか把握するのが大変でした。けれど、この仕事のおかげで社内のどの部署がどんなことをしているのか、全体像が見えたと感じました。また、問い合わせをいただいた方から『JASRACに聞けば、どうすればいいのかわかるはずだと思った』とおっしゃっていただくことも多かったです。デビュー前に契約してくださったミュージシャンの方などもいて、自分たちの力が必要とされていることを実感し、著作権を守るこの仕事の意義を強く感じるようになりました」

 

上司やチームのメンバーと、音楽配信サービスの新たな事例について情報を共有。IT技術の革新に対し、スピーディーに状況を把握していく。

 

■ 入社8年目、権利者向けガイドブックを制作。現在は、ネット配信における音楽利用に関する管理業務に携わる

多くの権利者とかかわり、著作権についての知見を積み重ねたのち、入社8年目には、西坂さん自らの発案でガイドブック作成プロジェクトを手がけることに。
「権利者の方々の中には、著作権の使用料を生活の糧としている職業作家さんもたくさんいます。私たちの仕事が創作活動を支える一端を担っているというリアルなやりがいを感じましたし、『自分の楽曲がこんなに使われているのか』と喜んでもらえることもあり、すごくうれしかったですね。そんな経験を重ねるうち、『使用料の分配に関する明細資料の読み方がわからない』という問い合わせが多いことに気づいたんです」

 

そこで、権利者向けのサービスの一環として、明細資料の読み方を説明するような冊子があればいいと思いつく。部署内で話をしたところ、先輩や上司に「それなら作ってみたら」と言われ、チャレンジしてみようと決意する。
「ガイドがあれば権利者の方々が自分の楽曲の使われ方をより把握しやすくなります。さらに、問い合わせが減ることによって、私たちもそのほかの業務に時間をかけられるようになるはず。初めての経験ではありましたが、先輩や上司が背中を押してくれたので、やってみようと思えたんです。よくある問い合わせを基に、どんな内容を盛り込むかという構成を考え、使用料の分配を担当する分配部に必要な知識を教えてもらいながら内容を詰めていくことにしました」

 

また、楽曲の権利情報を管理している資料部、法務を担当する企画部にも相談に乗ってもらったという。西坂さんは業務と並行しながら制作を進め、半年かけてようやく「分配明細書ガイド」を完成させた。
「制作の過程で、まだまだ知らない専門知識がたくさんあるのだと気づきました。そして、専門部署の持つこうした深い知識を権利者の方々にわかりやすく伝えることこそ、窓口を務める私たちの部署の役割なのだとあらためて実感しました。そして、『アイデアとは、ただ発想するだけでなく、自ら働きかけ、実現してこそ意味があるのだ』と感じ、大きな達成感を得ることができました。このプロジェクトを経験したことで、また新たに成長できたと思います」

 

2014年、入社9年目を迎えた西坂さんは、インターネット上での音楽利用に関する著作権管理を行う現部署に異動する。
「音源のダウンロード配信サイトや動画投稿サイトをはじめ、電子書籍からホームページまで、インターネット上で使用されるあらゆる音楽の著作権管理をする部署です。業務の根本は大阪支部時代と同じで、楽曲を利用することに対する許諾や使用料の算出、ご案内が主な仕事ですね。もともとIT知識に詳しくなかったので、ネットのシステムやデジタル配信などの仕組みを学ぶところからスタートし、実際にそうしたサービスを使って試しながら見識を広げる努力を続けています」

 

また、コンサートでの演奏と、ネットでの配信管理では利用者の層がまったく違うという。個人や学校法人などがホームページのBGMとして使ったり、音楽を利用した動画を載せるなどで利用することももちろんあるが(※)、インターネットでコンテンツを配信する企業などが新たなサービスを立ち上げる際に事前に相談を受けるケースもかなり多いという。
「JASRACでは、使用料規程に基づいて著作権の管理を行っていますが、ITの世界は技術革新のスピードが非常に速く、新たなサービスが次々に登場しますので、現在の規程がそのまま当てはまらないことも多々あります。その際には、使用料規程の範囲内で、権利者の利益を損なわず、利用者にとっても使い易い適切な取り扱いを考えなくてはなりません。新たなサービス開始に当たっての問い合わせや利用申請があるたびに、どう管理していくかという方法をチームのみんなで模索し、場合によっては利用者団体とルール作りを話し合うこともあります。例えば最近増えている定額制で聞き放題の音楽配信サービスについても、こういった話し合いの中でどのように取り扱うかを決めてきました。最先端のサービスに触れる面白さもありますが、何よりやりがいを感じるのは、自分たちが考えて決めたルールが、今後に引き継がれていく基盤となること。著作権を通じて、ネットコンテンツの世界を支える根幹に携わる喜びを感じています」

 

(※)コンサートなどで演奏する場合は、非営利などの条件を満たせば著作権使用料はかからないが、ネット配信の場合は、個人が趣味で制作したホームページであっても使用料が発生する。

 

入社11年目となる現在、西坂さんはこの仕事の意義をどんなところに感じているのだろうか。
「街の中のカラオケ店や飲食店など、あらゆるところで音楽は使われています。そして、その裏側には、音楽を作る人々がいて、著作権にまつわるさまざまな管理が行われているんです。『音楽を作る人、利用する人がいて、私たちの力がその橋渡しに役立っている』と実感しますし、権利を守ることが、創作活動を支え、音楽文化を支えているのだという大きな意義を感じています。街で見かける音楽のある風景の一つひとつが、自分のモチベーションになっています」

 

 

ネットコンテンツ事業者からの新サービス立ち上げに伴う利用について、どんなルールを適用すればいいのかを検討。問い合わせの対応や許諾申請の処理なども行う。

 

■ 西坂さんのキャリアステップ

STEP1 2006年4月 新人研修時代(入社1年目)

入社後、2週間の新人研修を受ける。ビジネスマナーや社会人としての心構え、業務内容などを学んだ。「入社前から会社の事業内容や具体的な業務についてのガイド冊子を送付してもらっていました。おかげで仕事のイメージもつかむことができ、入社後にギャップを感じることはなかったですね。同期16人と研修を受けましたが、今でもみんな仲が良く、飲みに出かけたり、旅行に行ったりしています」。

STEP2 2006年4月 音楽利用者の窓口を担当し、著作権の知識を身につける(入社1年目)

業務本部の大阪支部に配属され、演奏権の管理に携わる。演奏会での音楽利用を担当し、コンサートやイベント主催者に対する利用許諾を出し、使用料の算出や支払いの案内などを行う。「演奏情報をホームページやチラシなどでチェックし、手続きがない場合にはこちらからコンタクトを取って手続きのご案内をすることもあります。著作権についてまったく知らない方もいて、何かのセールスと間違われて電話を切られたこともありますし、どんなに説明をしても『支払いたくない』という方もいました。公平に管理しなくてはならないため、理解してもらうためにどう説明したらいいのか悩んだこともありましたね」。

STEP3 2009年 権利者に向けた窓口を担当(入社4年目)

東京本部の総務本部会務部に異動。権利者の窓口を担当し、契約手続きや問い合わせ対応などを手がける。また、毎月開催される理事会や、著作権を委託している多くの会員が集まる社員総会の運営も担当する部署のため、会場や案内状の手配、資料作成などの準備を行い、当日も受付や出欠の管理を手がけたという。
「年に一度開催される総会にはたくさんの権利者の方が参加し、新しいルールなどの議決も行われます。議決の集計も任されたため、静まり返った会場の中、迅速かつ正確にカウントしていく緊張感を味わいましたね。多くの権利者から権利をお預かりしているんだという強い実感が湧き、なおかつ、自分たちが管理するルールが目の前で決まる瞬間に立ち会ったことで、その責任の重さをひしひしと感じました」。

STEP4 2014年 ネット配信に関する著作権管理に携わる(入社9年目)

業務本部送信部ネットワーク課に異動。音楽、動画、電子書籍などの配信サービスで利用されるJASRAC管理楽曲の著作権管理を行う。新たな利用形態に対して、音楽を円滑に利用できる環境を整えるため、利用者団体とルール作りも行う。「権利者の皆さんが大切な著作権を預けてくれるその思いには、常に責任の重さを感じています。自分自身、音楽のエンドユーザーでもあるので、利用者の皆さんにわかりやすく説明することで、理解を深めてもらえるよう常に心がけていますね。利用者の方や権利者の方から多くの意見をもらう中、著作権管理における私たちの役割がそれだけ期待されているのだという大きな喜びを肌で感じる日々です。今後は、各自が持つ専門的な知識やスキル、知見を部署全体で共有し、誰もが高いサービスレベルで対応できるような仕組みを作っていきたいと思います」。

■ ある日のスケジュール

9:00 出社。メールチェックとニュースのチェック。
9:10 課会に参加。週に一度は、課内全員で業務の進捗や課題などを共有・検討している。
10:00 利用者から申請を受けているサービスについて、許諾処理を行う。取り扱いや楽曲の権利関係について利用者から受けた問い合わせに対し、回答を作成。
12:00 昼食。同期と一緒に社内のパブリックスペースでお弁当を食べる。
13:00 VR(バーチャルリアリティー)の技術を使った動画配信サービスを始めたいという企業が訪問。必要な手続きや使用料の算定方法を説明し、事業化に向かうための相談に乗る。
14:00 楽曲情報を管理する部署と打ち合わせ。権利関係が大幅に変更となる楽曲について、管理に支障が出ないよう課題をすり合わせ。
15:00 課内のチームで打ち合わせ。契約中の音楽配信サービスから新たなサービス展開について相談を受けたため、取り扱いを検討。
17:00 今月分の使用料の請求のため、各利用者から提出された報告資料を確認し、社内システムに登録する。
19:00 退社。
■ プライベート

旅行が大好きで、同期と一緒によく旅に出かけている。写真は15年2月に撮影。「同期の女性陣で、箱根や伊豆、福島などに旅しています。また、週末にはお互いの家に遊びに行くことも。地方に配属されている同期を訪ねる旅もしています」。

 

長期休暇には大学時代の友人などと一緒に海外へ。写真は16年の夏休みに出かけたイスラエルで撮影。「社会人になってからは、アメリカ、ベトナム、タイ、カンボジア、台湾、トルコなどに旅行しました。言葉の通じない国に出かけると、仕事のことを忘れてリフレッシュできますね」。

 

社会人になってから、箸置きを集めることが趣味になり、すでに100個以上に! 「仕事に追われていると自炊がおろそかになりがちなので、食事の時に気分を整えたくて集めるようになりました。写真左下の青い箸置きは、1日陶芸教室に出かけて、自作したものです」。

 

取材・文/上野真理子 撮影/刑部友康

最終更新:10/7(金) 10:00

就職ジャーナル

記事提供社からのご案内(外部サイト)

就職ジャーナル 金融ビジネス読本

リクルートホールディングス

2016年1月12日発行

定価 450円(税込)

就職ジャーナルの姉妹サイト「リクナビ」は、
大学生のための企業情報が満載のサイトです。
1年生からご利用できます。

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。