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「小池劇場」が河村名古屋市政に波及? 2026年アジア大会一時白紙に

NIKKEI STYLE 10/7(金) 7:47配信

 2026年夏季アジア競技大会の開催都市が愛知県と名古屋市に決まった。10年後のビッグイベント開催決定に喜びと期待が広がる地元だが、開催都市が決まる3週間前になって突然、名古屋市がいったん共催での立候補を撤回するドタバタ劇もあった。
 騒動の裏には「都民ファースト」を掲げる東京都の小池百合子知事に影響を受け、市として共催を白紙撤回してまで事業費抑制をアピールする狙いもあった。今後、他の自治体が国際大会を誘致する際も同様の動きが起きる可能性がある。
 愛知県と名古屋市は5月、大村秀章知事と河村たかし市長が記者会見で共同立候補を表明。その後、開催都市として適切かどうかの判断を仰ぐために、アジア・オリンピック評議会(OCA)や日本オリンピック委員会(JOC)の評価委員の視察などを受け入れていた。
 順調に見えていた招致活動が一転、暗礁に乗り上げたのは、開催都市を決定する9月25日のベトナム・ダナンでのOCA総会まで約3週間と迫った同月5日。河村市長が「市民や議会に説明責任が果たせない」として、共催立候補の白紙撤回を表明。大村知事が「普通、行政がとるやり方ではない」と驚きを隠せない手段に出たのだ。
 市側によると、県と市が大会の全体経費や県市の負担割合で折り合えなかったことが端緒だった。7月から8月にかけ何度も調整が行われたが合意に至らず、県側は8月下旬、OCA総会までに提出する開催構想に開催経費と負担割合を載せないと市側に通告した。
 市側はこれに反発。同じころ東京都では知事選に勝利した小池氏が、20年東京五輪・パラリンピックの開催経費が膨張した経緯を調べる考えを表明していた。当初7千億円程度とされた経費が2兆~3兆円に膨らむ見通しとなり、批判の声が噴出していた。
 小池氏と河村市長は1993年に衆院議員として初当選し、細川護熙元首相が結党した日本新党などで共に活動。都知事選でも河村市長が小池氏を支援していた。
 河村市長は立候補撤回を表明した9月5日、「小池さんは全て決まってから見直している。決まる前に見直して何がいけないのか」「東京五輪みたいにならないように、納税者の顔を見ながらやらないといけない」などと強調した。
 市は県との交渉で最終的に「開催費用850億円、県と市の負担割合2対1」という提案をしていた。立候補撤回という市長の揺さぶりで県側はこれを受け入れ。さらに開催費用から入場料やスポンサー収入などの見込み額を引いた600億円を「県と市の負担上限とする」との合意文書も交わし、OCA総会5日前の20日、ようやく共催復帰の合意にこぎ着けた。
 東京五輪の問題の後に発覚した、豊洲市場の「盛り土」問題でも明らかになったように、大規模プロジェクトの費用見積もりは、東京都のような財政規模の大きな自治体にとっても難しい。
 愛知県と名古屋市も「開催費用850億円、県市の負担割合2対1」で合意したが、今年5月の立候補表明から時間がなかったこともあり、約440億円と見込んだ運営費などは14年の仁川(韓国)大会を参考にして算出したにすぎない。
 名古屋市議の一人は「市民の負担を少しでも減らそうとした市の姿勢は評価できる」と前向きに捉えるが、実際の費用が今後、膨らむ可能性は否定できない。アジア大会招致を巡る今回の一件で見えてきたのは事業費の正確な積算を可能にするシステム構築の必要性だといえよう。
 名古屋大大学院の後房雄教授(行政学)は「東京五輪の問題以降、外部のチェックの眼は厳しくなっている。そもそも行政には(事業者側の言い分をうのみにするなど)適正額を判断する能力がない可能性もある」と強調。「不透明に費用が膨れあがるようなシステムは改善しなければならない。外部の専門家を登用するなどして費用見積もりのプロセスを透明化し、市民が適切な額なのかどうか判断できるようにする必要がある」と話している。
(名古屋支社  文 高橋耕平  写真 今井拓也)

最終更新:10/7(金) 7:47

NIKKEI STYLE

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