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ピンピンコロリを目指すのは矛盾。シニアの健康管理は「自然体」がいい

NIKKEI STYLE 10/7(金) 7:47配信

 シニアになると、体のどこかに具合の悪いところが出てきます。そこで多くの人が健康を維持するために食事に気をつけたり、運動したりします。特に最近は健康志向が高まり、ちょっと行き過ぎた「健康オタク」のような人も珍しくありません。
 いつまでも元気でいたいと思うのは当然です。現代は「平均寿命」よりも「健康寿命」に関心が集まるようになりました。「どんな状態でもいいから長生きする」よりも「健康な状態をいつまでも維持する」ことがより大切だという考え方が広まってきています。
 そんな風潮の中で、「PPK」という言葉を聞きます。これは「ピンピンコロリ」のローマ字表記の頭文字をとった言葉です。年をとってから、病気に悩まされたり、寝たきり状態になったりすることなく、死ぬ間際まで元気に活動して最期を迎えたいという願望を表しています。昨年は、この問題を扱ったテレビドラマも放映されていました。
 人生の終末期の問題というのはなかなか難しく、常に微妙な問題をはらんでいます。PPKにしても本人にとってはいいかもしれませんが、家族にとっては必ずしも良いとは言い切れません。突然の死は心の準備ができていないからです。
 さらにこのPPKには大きなパラドックス(矛盾)が隠されているのです。突然亡くなるというのはどんな原因でしょうか? おそらく脳梗塞や、くも膜下出血、心筋梗塞などが多いと考えられます。そういう病気の原因の多くは、動脈硬化などの血管の障害や、高血圧などです。つまり食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足という不摂生をすればするほどこうした突然死を招きやすくなるともいえます。
 しかしながら、これはパラドックスです。つまりポックリ逝きたければ、不摂生をして脳卒中や心臓病で亡くなるほうがいいというおかしなことになってしまうからです。
 ずっと不摂生をしていていいはずはありません。若いうちから不摂生を続けていればその蓄積は体に大きなダメージを与えているに違いありません。その結果、長生きしてポックリ逝くのではなく、もっと早い時期の40歳代や50歳代で突然死を迎える可能性が高くなってしまいます。
 かといって、病気になりたくないので普段から健康に気を使い、体を鍛えて丈夫になっていくと、そう簡単には死ねません。
 つまるところ、長生きしてポックリ逝くというのは大きなパラドックスを抱えているわけです。
 では一体どうすればいいのでしょう? 私は基本的には健康に留意して食生活にも気を付け、適度な運動を続けるという健康管理はすべきだと思います。ただ、そういった健康維持活動を過剰にやり過ぎる必要はないと考えています。特に年をとって以降は無理して食べたいものを我慢したり、つらいのに無理して運動したりする必要はありません。
 ひと言でいえば、「自然体」を維持することが大切だと思います。食べたいものを制限するというのはストレスがかかります。過激な運動も体に負担をかけます。
 結局、いつまで生きることができるか、どんな死に方をするのかは事前には誰にもわかりません。だとすれば、若いうちは節制をしても60歳以降になれば食事や運動は自然体で無理することなく、留意するという程度にしておくべきでしょう。
 残念なことに多くの人は逆で、若いうちは仕事のストレスで暴飲暴食、運動不足に陥りがちな半面、年をとると過剰な健康管理にハマりがちになってしまいます。過去を取り戻すことはできませんが、少なくともリタイア後の人生では無理をせず、自然体で過ごすのが賢明ではないかと思っています。
 「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は10月20日付の予定です。
大江英樹(おおえ・ひでき) 野村証券で個人の資産運用や確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。行動経済学会の会員で、行動ファイナンスからみた個人消費や投資行動に詳しい。著書に「定年楽園」(きんざい)など。近著は「投資賢者の心理学」(日本経済新聞出版社)。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。オフィス・リベルタス ホームページhttp://www.officelibertas.co.jp/フェイスブックhttps://www.facebook.com/officelibertas

最終更新:10/7(金) 7:47

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