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人民元のSDR構成通貨入りで「人民元高・ドル安」へ

マネーポストWEB 10/7(金) 16:00配信

 中国の人民元が10月1日より、IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)構成通貨に採用されることになった。これをきっかけに、人民元の国際化が加速、中国は国際金融市場においてますますその存在感を強めることになるだろう。

 SDRとはIMFが1969年に創設した国際準備通貨である。当初、世界の金融市場はブレトン・ウッズ体制(ドルを基軸とする固定為替相場体制)下にあったが、為替相場を維持するために必要な金(ゴールド)、ドルが不足。SDRは、それを補うための国際準備資産として創設された。

 ブレトン・ウッズ体制が崩壊し、主要通貨が変動相場制に移行した後も、SDRは世界的な金融危機の発生を防ぐためのツールとして機能した。

 IMFは出資分に応じてSDRを各国に配分する。各国は、無条件、コストなしの国際準備資産を得ることができる。各国は、SDRを他国に売却することで、自由利用可能通貨(ハードカレンシー)を受け取ることができ、それによって為替相場の安定を図ることができるのだ。

 加盟国は、過去に4回、SDRの配分を受けている。最初は1970年から1972年にかけて行われ、合計93億SDRが配分された。その後、1979年から1981年には121億SDR、2009年8月10日には215億SDR、2009年8月29日には1612億SDRが配分された。現在のSDR累積配分額は2041億SDRとなっている。

 SDRは世界の主要通貨からなるバスケットによって算出される。その構成が10月1日より変更され、これまでの4通貨に人民元が新たに加わった。構成通貨は米ドル、ユーロ、人民元、円、ポンドで、構成比率は順に41.73%、30.93%、10.92%、8.33%、8.09%である。人民元が米ドル、ユーロに次ぐ3番目に大きな比率であるということは、IMFが人民元を国際通貨の中で、そのような位置付けとして考えているということだ。

 SDRはハードカレンシー(国際決済通貨)と交換できるが、SDRの構成要素として人民元が入っているということは、IMFが人民元をハードカレンシーと認めているのに等しい。少なくとも、世界各国は今後、人民元について、“国際的に信用力が高く、他国の通貨と自由に交換が可能な通貨”とみなすだろう。アメリカ、日本はともかく、EU加盟国、ASEAN加盟国、ロシア、中東、アフリカなどでは、人民元に対する需要は着実に強まるはずだ。

 2015年における中国の輸出額は2兆2749億ドル。世界第1位で、全体の13.8%を占める。第2位アメリカの1.51倍、第4位日本の3.64倍に達している。同じく輸入では世界第2位で10.1%。第1位アメリカの72.9%、第4位日本の2.59倍である。

 人民元市場は、国内市場とオフショア市場とに分かれ、オフショア市場を通じた開放といった変則的な市場形態となっている。さらに、オフショア市場の歴史は7年程度と浅く、市場の厚みが薄い。

 使い勝手の悪さから、中国貿易について、現状では人民元による決済比率は低い。たとえば、8月の人民元による貿易決済は3393億元で、貿易総額の15.5%に過ぎない。しかし、そのことは、逆に今後、人民元需要に大きな“伸びしろ”があることも示している。

 貿易において人民元決済が増えるということは、米ドルによる決済が減ることを意味する。人民元の国際化が進み人民元オフショア市場が拡大するということは、米ドル圏内にある金融市場が縮小することを意味する。

 大きな流れとして、人民元需要は増加し、米ドル需要は減少し、その結果、人民元は上昇基調へ、その分、米ドルは下落基調となりそうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週間中国株投資戦略レポート」も展開中。

最終更新:10/7(金) 16:00

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