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ボクどこに行けばいいの?高齢者のもとから来た「シェルター猫」たちの行方

サライ.jp 10/7(金) 19:40配信

ひとり暮らしの高齢者にとって、猫家族は癒される存在となっている。ところが、ひとたび体調を崩したり、やむなく施設入所や入院という事態になった時、残された猫たちは行き場を失い、保健所に引き取られたり、野に戻されたりすることもある。

不幸な猫を減らしていくために今こそ、愛猫家の知恵が求められている。

■お年寄りのもとからやってきたシェルター猫たち

きぢとら猫のふぶきは、推定4歳。大きな体ながら、おっとり、優しい性格の雄猫だ。

今年の春まで、ひとり暮らしをしていたおばあさん・みよさん(仮名)の家で、他の兄弟猫たちと一緒に幸せに暮らしていた。

ところが、みよさんの健康状態が悪化。施設にはいることになった。

みよさんには自立している娘たちがいるが、みな、ペットを飼うことができないマンションに住んでいる。娘たちをはじめ、ふぶきを引き取ってくれる人は、みよさんの周辺にはいなかった。もちろん、これから入居する施設には、猫たちを連れて移ることはできない。

みよさんは、一時はふぶきをはじめとする飼い猫たちを保健所に連れていくことも考えた。自分が面倒を見切れない上、引き取り手もなく、外に放つわけにはもちろんいかない。

これまで家猫として飼われた猫が、外の世界で生きていけるわけがない。そんな辛い思いをさせるのなら、保健所で処分してもらうしかないのか――。

みよさんは胸を締めつけられる思いで、ふぶきの行く末を案じていた。

猫の保護活動をするボランティアの秋葉さんが、みよさんのそんな苦境を知り、手を差し伸べてくれた。ふぶきたちを引き取って、新しい飼い主さんを探すと申し出てくれたのだ。

こうしてふぶきたちは、東京板橋区の猫シェルターに引き取られてきた。

36平方メートルのマンションの一室で暮らす約20匹の猫たち。実は、このうちの約半数が、お年寄りの飼い主と暮らしてきた、ふぶきと同じような境遇の猫たちだ。

推定2歳の秋帆は、都内の某所で、お年寄りが“半野良”状態で飼っていた猫だ。半野良とは、猫が家の中と外とを自由に出入りし、飼っているのか餌をもらうために通ってくるだけなのかわからないような状態でいる猫たちのこと。

飼い猫と野良との判別がつかず、不妊・去勢もしていなかったため、芋ずる式に猫が増えて、近所からもクレームがきていた。

しかし、そのお年寄りが亡くなり、猫たちの世話をする人がいなくなってしまった。地域の人に相談を受けた秋葉さんが、猫たちを救出。その中に、秋帆もいた。秋帆は子猫を出産した直後で、子猫も一緒に保護することになった。

半野良で、人から餌をもらっていた秋帆だが、当初はなかなかシェルターで猫たちのお世話をするボランティアの人たちに慣れなかった。それでも、毎日、毎日、ボランティアの人たちの優しさに触れ、最近、徐々に心を開くようになってきたという。

ボランティアがシェルターの掃除を終え、猫たちが食事を済ませ、猫たちと戯れる時間になると、定位置の洗濯機の後ろに隠れていた秋帆は、そーっとボランティアに近づいてくる。

やがて、「いいの?」というようにボランティアの顔を見上げ、膝の上にのってくるようになった。背中や頭を優しく撫でると、嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らす。

成猫とはいえ、まだまだあどけなさの残る年齢だ。本当は人に甘えたかったのに、環境がなかなかそうさせてくれなかったようだ。

■里親の年齢と終生飼養の問題

お年寄りに飼われていたものの、様々な理由で飼い主さんのもとから離れなければならなくなる猫たちが、ここ数年急増している。背景には、ひとり暮らしをするお年寄りが、日々の寂寥を慰めるため、散歩に連れて行く必要がなく、小柄な猫を飼う人が増えているからだ。

東京都内でシェルターを運営する、「猫の方舟レスキュー隊」代表の秋葉さんはこう語る。

「ある日突然、飼い主さんがいなくなってしまった……。いつの間にか飼い主さんがご飯をくれなくなった……。せっかく保護され、里親募集に応募してもらっても、新しい飼い主さんも前の飼い主さんと同様に高齢で、再び飼えなくなる、といった悲しい繰り返しをさせたくないのです」

平成25年に施行された改正動物愛護管理法では、ペットの飼い主に終生飼養が義務付けられている。しかし、里親になる人がお年寄りである場合、終生飼養をしたくても、それができなくなってしまう現実があるのだ。

ひとり暮らしの寂しさを紛らわす“猫家族”の存在を否定するのは忍びない。生活にメリハリができ、ペットを飼っていない人に比べてペットを飼っている人の方が通院回数が少ないといったデータもあるように、高齢者がペットを飼うことが心身にもたらすメリットはよく知られている。

最近ではペットを高齢が猫を飼うことを支援する団体や、ペットと暮らせるサービスがついてくる高齢者向け住宅もあるようだ。ただ、そうしたサービスを受けられるのは、それなりに経済的豊かさのある人に限られる。

猫と触れ合うことで心身の健康に繋がるというメリットと、終生飼養とが同時に実現できる、そんな施設があったらと思う。

愛猫家が結束して、知恵を出し合う時期がきているのかもしれない。

取材・文/一乗谷かおり

最終更新:10/7(金) 19:40

サライ.jp

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