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新しい文学を開拓! 新鋭の女性作家3人

Book Bang 10/7(金) 8:00配信

 そのオフィスビルの5階ではA田たち、6階ではB野たち、7階ではD山たちが働いている……。どの会社にもいそうな社員たちの、どの職場にもありそうな光景が描かれるのが、松田青子の初小説集『スタッキング可能』の表題作だ。

 スタッキングとは「積み重ねる」という意味。同じ形をした椅子や食器などを重ねて積む時によく使われる言葉だ。職場が積みあげられたビルの中で、代替可能な人間たちが同じ日常を積み重ねていく。個性をないがしろにする状況への風刺がこめられると同時に、心の中で自分の世界を積み重ねて戦う女性の話でもある。単行本刊行当時に「Twitter文学賞」国内編で第1位、「キノベス!2014」で第3位を獲得した。

 新しい文学を開拓していくであろう期待の新鋭は他にもいる。2008年に女性では当時史上最年少の21歳で中原中也賞を受賞、昨年も『死んでしまう系のぼくらに』(リトルモア)で第33回現代詩花椿賞を受賞した詩人の最果タヒも、小説作品をいくつか発表している。最近作の『渦森今日子は宇宙に期待しない。』(新潮文庫nex)は、実は宇宙人である女子高生が主人公。仲間と高校生らしい生活を謳歌し、ささやかな謎やトラブルに直面する様子が軽快な文体で描かれるが、折に触れ宇宙人としての自分のアイデンティティーと向き合う姿も。荒唐無稽なようでいて、思春期の懸命さをしっかりととらえている。

 松本清張賞受賞のデビュー作『烏に単は似合わない』(文春文庫)から一貫して人間に姿を変えている八咫烏(やたがらす)の一族の物語を発表し続け、今や大人気ファンタジーシリーズに育て上げたのがまだ20代の阿部智里。文庫化第3弾『黄金(きん)の烏』(同)は八咫烏一族の若宮と従者の少年が、旅先で大猿の被害にあった村を見つけ、たった一人の生存者である少女に出会う。単行本ではすでに第5弾『玉依姫』(文藝春秋)が発表されており、なんと彼らの世界と現代日本との繋がりが明らかに。毎回驚きの新事実を提示して飽きさせない、物語構築力に圧倒される。

[レビュアー] 瀧井朝世(ライター)
※「週刊新潮」2016年9月22日号 掲載

最終更新:10/7(金) 8:00

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