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なぜおいしくなるのか?「熟成」という魔法の正体

JBpress 10/7(金) 6:00配信

 熟成はさまざまな食品のおいしさと結びついており、「熟成」と聞くだけでおいしそうに感じる。まさしく「熟成」は食品のおいしさを表すキーワードなのだ。熟成させると、なぜ食品はおいしくなるのだろうか。

熟成期間の違いによって、さまざまな色になる味噌(写真)

■ おいしさの決め手は「寝かせる」こと 

 このコラムでも昨年「なぜ『寝かせた肉』はおいしいのか?」という記事で報じたとおり、「熟成肉」がブームになった。そのブームのせいか、「熟成」という言葉をよく耳にする。

 ブームの前から、お酒や調味料などには「熟成」を売りにしている食品はたくさんあった。熟成とは、簡単にいえば「食品を寝かせておいしくすること」だ。

 たとえば、お酒やチーズなどを発酵後に寝かせるのも熟成のひとつ。風味がまろやかになり、色や香りが生まれておいしくなる。つまり、熟成とは、食品を長くおいておくことで、食品の色や味、香り、歯触りなどを変化させ、好ましい状態にすることなのである。

 食品の熟成を研究する日本食品包装協会理事長の石谷孝佑氏は「人によっておいしさの感じ方は違うし、食品の種類によって熟成のメカニズムも多様です。そのため、熟成を定義したり、評価したりするのは簡単ではない」と話す。

 複雑で不明な点も多いが、石谷氏によれば食品が熟成する要因は、(1)微生物の酵素作用によるもの(発酵)、(2)食品自体がもつ酵素作用によるもの、(3)食品や容器などの成分どうしの化学反応によるもの、(4)食品成分の物理的な変化によるもの、に大別することができるという。これらの要因が同時に絡み合って熟成は起こる。

 ただし、食品を寝かせて風味が変化しても、品質が向上しなければそれは「熟成」とはいわず、「変質」である。熟成させる上では、風味の変化を品質の向上につなげるために、温度や時間などの条件を課すなどのさまさざまな工夫がほどこされているのだ。

■ 味噌、うどん、干し柿・・・身のまわりにはさまざまな熟成食品が

 食品中のタンパク質は、微生物や食品そのものがもつ酵素で分解されると、アミノ酸やアミノ酸が少数結合したペプチドになり、うま味が増す。そのため、味噌や醤油などの調味料、ハムやソーセージ、チーズなどは長期間熟成させるものが多い。また、熟成肉のうま味が増すのも肉のタンパク質が分解されるからである。

 味噌や醤油の色が褐色に変化するのは、食品中のアミノ酸や還元糖の化学反応、つまりメイラード反応によるものだ。この反応では香ばしい匂いも生まれる。ウイスキーでは、樽に貯蔵している間に樽の成分が移り、琥珀色になる。

 小麦粉を練った生地を寝かせると、グルテンと呼ばれる小麦タンパク質の構造が変化し、うどんのこしやパンのもちもち感が生まれる。果実は熟成するとやわらかくなり、干し柿では独特の食感が生まれる。

 配合成分を均一にし、安定化させるのも熟成の効果だ。

 たとえばソースは、トマトや香味野菜のジュースやスパイスなどの材料を混ぜ合わせて、寝かせることで、素材の甘味や塩味、うま味、香りなどが一体となり、おいしさが生まれる。バターやチョコレートは熟成させることで、原料の脂肪の結晶の並び方が均一になり、なめらかな舌触りが生まれる。チューイングガムのかみ応えも、製造後の熟成工程を経て安定化することで生まれるものである。

 これらは熟成のごく一部の例であるが、食品のおいしさは熟成の効果によるものが多い。

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最終更新:10/7(金) 6:00

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