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「財源のない子供手当ならば、軍事費の増大を」発言の稲田大臣は、明治の政治家の顰に倣え

HARBOR BUSINESS Online 10/7(金) 9:10配信

 シベリア鉄道の北海道延伸が日露間で協議されたという。実にロマンのある話だ。しかしなかなか実現は難しい。何よりもまず、日本とロシアでは軌間(線路の幅)が違う。同じ列車は走れない。

 実はこの「ロシアと日本の軌間の違い」、明治末年に日本を二分する大論争の引き金を引いた歴史を持つ。

 日露戦争の結果、日本はロシアから満州の鉄道を引き継いだ。しかし日本の在来線とは軌間が違う。これでは物流が繋がらないと、満鉄総裁に就任した後藤新平が「しばらく新規の鉄道延伸を止めてでも、日本の線路の幅を満州の線路の幅に合わせて改造すべきだ」という改主建従論を展開。これに「国家全体の経済発展のためには全国に鉄道を巡らすことの方が先決だ」という建主改従論で原敬率いる立憲政友会が対抗した。この改主建従と建主改従の論争は数年に渡って帝国議会で激しい対立を生むこととなる。

 紆余曲折あって、帝国議会の論争は建主改従が勝利を納めた。鉄道が延伸されれば自分の選挙区への利益誘導となるため、立憲政友会の政治家たちが必死に建主改従運動を展開したからだ。今も昔も政治家は利益誘導となると血眼になるものなのだろう。当時の新聞はそんな政治家の姿を「我田引鉄」と揶揄した。

 確かに選挙区への利益誘導ばかりに必死になる政治家の姿は見苦しい。だがそれでも「自分の選挙区」という範囲に限って言えば、有権者の利益増大には繋がっている。しかし利益増大の範囲が「自分の選挙区」ではなく「自分の財布」となると大問題と言わざるを得ない。

◆稲田大臣の我田引「銭」

 稲田朋美防衛大臣は、「財源のない子供手当ならば、軍事費の増大を」と主張していたという。明治の改軌論争になぞらえば、「軍主子従」ともいうべき立場だろう。子供の予算よりも軍事費をという主張が、感情的な反発を生むのは無理からぬこと。しかし、一蹴すべき議論とは言い切れない。不測の事態に備えて防衛設備を増大するべきだという主張は大いに検討されるべきであろう。日々困難な任務に当たる自衛隊員の処遇改善も必要だ。

 その意味では、稲田大臣の主張そのものは、国家の安全保障を万全なからしむるために展開されたものだと理解することも可能ではある。

 だが、彼女の配偶者が防衛関連企業の株を大量に取得している事実は見逃せない。彼女が軍事費の増大を主張することは直接的に彼女の経済的利得に繋がる。これほどあからさまな「自分の財布への利益誘導」もなかなか珍しい。これでは「我田引銭」ではないか。

 後藤新平も原敬も、立場の違いはあれ、鉄道会社からの金銭供与を強く戒めたという。癒着が明るみになればどんな主張でも説得力を失うのを知っていたからだ。明治の伝統がお好きな稲田大臣ならば、その顰に倣い即刻、職を辞すべきではないか。

参照:参議院インターネット中継

<文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie)>

※菅野完氏の連載、「草の根保守の蠢動」が待望の書籍化。連載時原稿に加筆し、『日本会議の研究』として扶桑社新書より発売中。また、週刊SPA!にて巻頭コラム「なんでこんなにアホなのか?」好評連載中。

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:10/7(金) 9:10

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