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意外に悪くない中国景気

会社四季報オンライン 10/7(金) 16:36配信

 中国経済をめぐっては、「減速に歯止めがかからないのではないか」とみられていたが、このところ発表されている景気指標は意外に悪くない。特に同国製造業の景況感が上向きつつある。9月の国家統計局発表の製造業PMIは50.4。2カ月連続で景気判断の分かれ目である50を超えた。同国の製造業景気が上向きつつあることを示している。同数値は15年以降、49.0~50.2の範囲で推移していた。8、9両月の50.4は14年10月(50.8)以来の高水準だ。

 国家統計局発表のものに比べて調査対象に中小企業を多く含む、財新・マークイット発表の製造業PMIを見ても悪くない。2015年3月以来50割れで景気悪化を示していたが、この7月以降は回復。7月50.6、8月50.0、9月50.1とやはり50以上の数値を維持している。

 大企業、中小企業を問わず、中国製造業の景況感が好転している背景には、(1)最近のインフラ投資増加(1~8月のインフラ投資は前年比19.7%増)、(2)住宅価格値上がり(主要4都市の住宅価格は7月時点で27%上昇、70都市の平均でも6%上昇)、(3)金融緩和効果、に加え、自動車減税の打ち切りを前にした駆け込み的な自動車販売増など一時的な要因もあるとされる。

 9月分の経済指標は13日に貿易統計、14日に物価統計、10~15日にマネーサプライ、銀行貸出、19日に鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資が発表される。19日の7~9月GDP統計にも注目だ。最近の景気指標好転が自動車の駆け込み販売など一時的なものか、それとも持続性があるのか、といった点について、これらの指標を通して見極める必要がありそうだ。

■ 人民元安でも外貨準備減少せず

 インフラ投資や金融緩和のほか、中国の製造業景気を押し上げ始め注目すべき要因に最近の人民元安がある。人民元の対ドル相場は14年以降、下落に転じた。足元は1ドル=6.70元近辺まで値下がりしているが、重要な点は人民元安が年初のような混乱材料にはなっていないことだ。

 年初には人民元安とそこから連想される中国経済の悪化懸念が世界の市場を混乱させた。当時の人民元相場の最安値は1ドル=6.5人民元程度で今よりも人民元高に振れていた(図1参照)。当時よりも人民元安になっていわけだが、同国の外貨準備はほとんど減少していない。

 14年後半から16年初めにかけての人民元安は中国からの巨額な資本流出を背景にしたもの。貿易黒字を上回る大幅な資本流出があったため、外貨準備が減少した。現在は外貨準備がほぼ横ばいで推移。これは、資本流出が貿易黒字とほぼ同程度に抑制されていることを意味する。

 銀行を通した海外への送金に歯止めをかけるなどの資本流出規制が実施されているとも言われており、「金融自由化の流れに背く措置」との批判もあるが、結果的にこれが経済を安定化させているのは事実だろう。

 14~15年の人民元安は、むしろドル高であり、円やユーロなどの通貨がより大幅に下落。このため、全般的な人民元相場の強さを示す実質実効レート(BIS統計による)は15年中、高値圏で推移した(図2参照)。実質実効レートが下落し始めたのは16年に入ってからだ。同レートは、16年2月まで前年比プラス圏で推移していたが、最近になって下落に拍車がかかり始めた。8月時点の下落率は前年比7%超(図3参照)。

 人民元安は中国の輸出数量押し上げにもつながっている。人民元相場の動きと中国の輸出数量(中国では輸出数量統計がないため、ここでは輸出金額÷輸出価格で計算した推計値)には明らかな相関がみられる。つまり、人民元が安くなると、若干の遅れをもって、輸出数量が増加するという関係だ。

 輸出数量は今年3月ごろから前年比で増加に転じ始め、6~8月は前年比4.6%増加。数量のトレンドは明らかに上向きへ変わった。人民元安が中国の輸出競争力を回復させ、製造業中心に中国景気回復の起爆剤になりつつあると考えられる。

 心配されるのが、中国の通貨安政策が近隣窮乏化をもたらし、日本や欧米の景気を悪化させるのではないか、という点だ。確かに、日本の円安局面では、日本のメーカーは輸出数量を増やすこともせず、単に円安分の水増しされた儲けを懐に入れただけ。円安が国内の生産活動を高めることもなかった。円安は日本の一部輸出メーカーの収益を増加させたが、世界経済にとってむしろマイナスに作用した。

 しかし、現在の中国の輸出企業は、人民元安の局面で輸出先での輸出価格を下げてある程度、輸出数量を増やそうとしている。その結果、中国の輸出数量は増加し、その分の国内生産も増えることになる。中国の場合、加工型貿易であるため、輸出増は輸入増に直結する。輸入増は海外経済にもプラスに働く。

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最終更新:10/12(水) 13:11

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