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プラシーボ?オカルト?アルミテープの謎【渡辺敏史の新型86試乗1】

clicccar 10/7(金) 11:59配信

トヨタの86、発売されたのは2012年4月・・といいますから、かれこれ4年ちょっとぶりで初めてのビッグマイナーチェンジと相成りました。まぁこの間、ダンパーや電動パワステのチューニングを変えたり、バックパネルやレインフォースメントの板厚を増したりと、走りの面でも細かく手は加えられていたわけですが、今回はエンジンの出力向上に合わせてあらかたが見直され、デザイン変更も受けています。

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まぁその辺りは後述するとして、今回の86では動的質感向上のために、びっくりのアイテムが用いられました。そう、巷でも話題沸騰のアルミテープです。

アルミテープって、あの台所の目地なんかに貼るあれ?

そうなんです。僕もトヨタのエンジニアにまったく同じ質問をしましたが、あれだそうです。但し、ポイントは素材よりむしろ接着剤にあって、導電性のものでなければ効果はないと。アマゾンで調べてみたところ、導電性アルミテープ、既に売れ筋ランキングで上位に食い込んでいました。ちなみに今回の比較試乗でトヨタがコラム下やウインドウ下端などにペタペタ貼っていたテープは、幅が約20mm、長さが60mm程度にカットされたもの。アマゾンで調べてみると3Mの導電アルミシートは200✕300mmですから、これで都合50枚を作ることが出来ます。そしてお値段はこの原稿を書いている時点で1177円。何人かの友達とシェアすれば、タイヤを窒素で満たすより遥かに安く試すことが出来ます。ちなみにトヨタが使用しているアルミテープも3Mとの共同開発とのこと。部位によっては耐候性を考えて接着剤に工夫が施されているのではないでしょうか。

で、その原理は何かといえば、空気中の静電気と車両の静電気との関係を最適化して、空力特性を理想値に近づけるというものです。というのも、両者は主に+極で帯電しており、通常は跳ね返し合う関係にあるそうで、特に車体側は稼働時はその電圧も1000V級に達するといいます。


でもクルマがそんなに電気を帯びる要素ってそんなにあるっけ? と疑問に思う方もいらっしゃることでしょう。が、近年は外装品の樹脂化や電装品の多様化に加え、タイヤの化学原料の配合比率が大幅に増すなど、電気を帯びる要素は確実に増加傾向にあるそうです。そこで車体を流れる空気との電気的反発を低減するために、ガラスや樹脂部品といった通電性の低い箇所の帯電を除去する必要から着目されたのが件のアルミテープである・・・と、そういう話なんですね。

とはいっても、室内のステアリングコラムケース下部にアルミテープなんか貼って意味あるわけ? と思うわけですが、タイヤ由来の静電気は強力がゆえ、この箇所でもタイヤ本体の放電処理に対して7割程度の能力が期待できるそうです。だったら、経年劣化の不安が少ないコラムケースに貼った方がいいだろうと、そういう判断だそうです。


ちなみに新しい86の場合、このコラムカバー内側と両ドアガラスの前方、ミラー付け根付近とにアルミテープを貼付。これは新しいBRZも同じ仕様だそうです。


そして86以前では14年にマイナーチェンジしたプロボックス/サクシードのコラムカバー内側に、そしてフルモデルチェンジしたノア/ヴォクシーは前後バンパーフェイシアの裏側四隅に各々貼付済み。バンパーフェイシア用はフォーク型の専用成型品を用いますが、これは貼りやすい形状と共に、広い断面積で放電効果を高める工夫が施されたものです。部販価格は1枚540円。原価はいかほどかは知らずとも、ノア/ヴォクシーともなればネジやファスナー辺りは銭単位の原価管理がなされていますから、相応の効果がなければ即お払い箱になるアイテムともいえるでしょう。

そう、僕にとって最大の興味は、こういうプラシーボともオカルトとも取られかねないアイテムに大のトヨタが手を出したということにありました。担当者に話を聞いてみると、アルミテープ採用に至る経緯の発端は、開発時と実験時での車両挙動の乖離にあったといいます。机上では成立した空力特性が風洞ではなぜか現れない。或いは風洞まで順調だったのに、実地ではどうも様相が違う。こういう揺らぎの事象を社内ではオバケと呼びながら、その原因を探り続けていたそうです。と、そこで行き着いたのが静電気同士の喧嘩だったということなんですね。

もちろんそれは分析による実証をもって、社内稟議を通過、科学的根拠を伴っての特許も出願し、現在に至るわけです。が、想像するに以前のトヨタなら、アルミテープが・・・と口にした時点で一笑されるか一蹴されるか一掃されるかのいずれだったのではないでしょうか。それが日の目をみたのはやっぱり、大将自らが「もっともっと!」といいクルマづくりに発破をかけている、それによる空気の変化っていうのがあったんでしょう。


と、ここまでタラタラと書いておきながらなんですが、僕はこのテープによる効果の有無、断言できるほどには感じられませんでした。試乗は旧86の車内で、同乗したエンジニアがコラム下にテープを貼ったり剥がしたり・・というかたちで行われましたが、んまぁ言われてみれば、操舵初期の応答性や切り返し等でのロールの収まりにシャープさが出たかなぁという感じでして、お前それプラシーボじゃね? と問い質されれば反論は出来ないかなぁという感じです。もっとも、この日は悪天候だったことに加え、テスト車がそもそも動的な優位性の高い86であることがかえって違いが嗅ぎ取れない原因だっという可能性もあります。これが所定の空力特性を得るための手段だとすれば、かえって外乱に弱いミニバンやSUVの側にわかりやすく違いがみてとれるかもしれませんし。

じゃあなんで86でテストするのよ・・といえば、今回がマイナーチェンジ版86の試乗会だったからです。そもそもこのタイミングでの発表に至ったのは特許の目処が立ったからであり、まぁ86のお披露目にヴォクシー持ってくるわけにもいかんだろうというトヨタの気持ちも理解は出来ます。



(文:渡辺 敏史/撮影:前田 惠介)

最終更新:10/7(金) 11:59

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