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魚河岸看板娘の嘆き「都民の台所はどうなるの?」

デイリー新潮 10/7(金) 9:02配信

 本来予定されていた11月7日はおろか、無期限延期となってしまった市場移転。23万平方メートルに及ぶ広大な都民の台所を、長らく傍で見続けてきた「看板娘」も、その行く末を大いに嘆いていた……。

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 場外にある鮮魚販売店「浅田水産」は、96年に開業。高級料亭や寿司店などの“本職”を得意先にしながら、一般客にも鮮魚を提供してきた。父親とともに店を切り盛りする浅田尚子さん(38)は、高校時代からセーラー服姿で早朝の仕入れを手伝い、魚の匂いを身にまといながら通学していたという。「築地小町」としてメディアでも度々紹介されてきた彼女に聞くと、

「うちは場外なので、どっちみち豊洲には移りません。でも築地は、場内と場外が一体化してこそ価値があったのだと思います。全国から一番多く新鮮な魚が場内に入り、場外で買える魅力。だからまるで文化を壊すような感じがして、寂しいと思ってきました」

 もともと移転には反対だったものの、決まったことだと自らに折り合いをつけていたという。

「移転費用の負担などが理由で、これを機に店をたたむ人もいます。例えば場内にはアナゴの専門店がありますが、何十年も同じ魚を見続け、産地による味の違いはもちろん、脂のつき方、身の色などの微妙な差を見分けてきた目利きが、いなくなってしまうわけです」

 今回の騒動については、

「私たちは建築の専門家ではないから、盛り土すればよかったのか、安全な実例があったのかとか、そんなことは分かりませんが、築地ブランドは長年かけて作られたもの。このまま豊洲に移れば悪いイメージが先行し、『豊洲を通さない魚のほうが価値がある』という流れになりかねません」

 すなわち、以下のような懸念が生じるというのだ。

「漁師が獲って業者が配送、というような産地直送が増えると、魚がお客さんの手に届くまでの間にプロの目に触れる回数がぐっと減ります。今年4月、毒性のあるバラハタが、食用のスジアラと誤って場内で売られていた問題が発覚しました。現在、これだけ多くの目を通していてもミスが起きてしまったわけです。『これはおかしい』と、流通の過程で見極めてくれるプロは必要なんです」

 まさに悪循環に陥ってしまうというわけだが、

「働いている私達からすれば、何をしても問題はクリアにならないし、早く結論を出せる話ではないでしょう。すっぱりと見切って別の施設を考えるのか……。『日本一の市場は一体どうなるの』という思いです」

 魚河岸名物の“看板”は、曇りっぱなしなのだった。

「特集 どんどん湧き出る『アルカリ地下水』と疑問点 イースター島より不思議な豊洲アイランド! バカな話が多すぎる『豊洲のパンドラ』10の疑問」より

「週刊新潮」2016年10月6日号 掲載

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最終更新:10/7(金) 9:02

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