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人が死ぬ瞬間を見たい―湊かなえ『少女』が青春映画に

日経トレンディネット 10/8(土) 13:00配信

 2010年に中島哲也監督、松たか子主演で劇場公開され、興行収入38.5億円の大ヒットとなった映画『告白』。その原作で第6回本屋大賞に輝いた湊かなえが、『告白』の後に発表した文庫累計100万部を超えるベストセラー『少女』が、本田翼と山本美月主演で映画化された。

【関連画像】(C) 2016「少女」製作委員会

 17歳という微妙な年齢で、過去のトラウマなどから心の闇をそれぞれ抱えている2人の女子高生が、ふとしたことから“死”に魅了され、「死を見たい」と願うようになる禁断のミステリーだ。

●「人が死ぬ瞬間を見てみたい」と願う、闇を抱えた少女たち

 主人公は女子高に通う由紀(本田翼)と親友の敦子(山本美月)。敦子は幼いころから剣道を習い将来を嘱望される存在だった。しかし剣道の団体戦でミスをして足に大けがを負い、自身がイジメの対象になってしまう。由紀は何とか敦子を励ましたいと、彼女のために小説を書き始める。しかしようやく完成させたその小説は、教室に置いたままにしたために誰かに盗まれてしまう。

 そんなある日、転校してきたばかりの紫織(佐藤玲)から「死体って見たことある?」と聞かれたのをきっかけに、二人はそれぞれ、「人が死ぬ瞬間を見てみたい」という願望にとらわれるようになる。やがて夏休みに入ると由紀は小児科病棟で本の読み聞かせを始め、短い生命を終えようとしている少年たちと仲良くなり、自らの思いを遂げようと画策。敦子は人が死ぬ瞬間を見れば、生きる勇気を持てるのではないかという淡い期待を胸に、老人ホームでボランティアに励むようになる。

純粋さと残酷さ、はかなさと強さ、青春とミステリーを内包する湊ワールド

 原作は基本的に由紀と敦子、それぞれが一人ずつ交代で語っていく構成。あくまでも一人称でつづられていくので、由紀の視点からは由紀の感じた通り、敦子の視点からは敦子の感じた通りの風景が描かれていく。

 主人公を演じるのは本田翼と山本美月という今をときめく若手成長株の女優二人だ。本田は「SEVENTEEN」、山本は「CanCam」の専属モデルを務めており、二人の共演は話題のひとつ。また、本田は『アオハライ ド』(2014年)、『起終点駅 ターミナル』(2015年)、山本は『ボクは坊さん。』(2015年)、『貞子vs伽椰子』(2016年)と、主役級の活躍が増えてきたのはこの1~2年。しかも、少女マンガ原作の作品も多く、女優としての真価を発揮しにくい状況にあった。

 そうした中、今回は、今までにない難役柄に挑戦。見事に演じきっている。二人を一段も二段もステップアップさせているのが、三島有紀子監督だ。『しあわせのパン』(2012年)、『ぶどうのなみだ』(2014年)などを手がけてきた三島監督が、自らもガラリと変わって、純粋さと残酷さ、儚さと強さ、青春とミステリーを内包する湊かなえワール ドに挑み、“自分勝手で繊細な少女たちの青春映画”を見事に仕上げた。

 だが、何よりもこの映画を興味深いものにしているのは、やはり原作の魅力だろう。“イヤミスの女王(読んだ後イヤな気分になるミステリー)”といわれる湊かなえの映像化された原作は本作のほか、映画『告白』(2010年)、『白ゆき姫殺人事件』(2014年)や連続ドラマ『夜行観覧車』(2013年)、『Nのために』(2014年)などがあるが、これらの中には読者にこの人(が犯人)だと思わせておいて、実は別人だったというような布石や伏線が多々含まれており、見ている人を存分に楽しませてくれるのだ。

 特にこの原作のように、一人称で語り続ける物語では、由紀や敦子が勝手に「A」や「B」と呼んでいる人物が、本当は誰なのかが分からないまま、読者が読み進めていることがある。この映画でも後半になるにつれ、これが伏線だったのか、あれもかと気づかされることが多い。

 ネタバレになるので、これ以上のご紹介は避けておくが、劇中に登場するAとB、最初は何の共通点もなさそうに見えた二人の間に実は関係があったという流れは本作にもしっかり仕込まれており、それがミステリーとしての満足度を高めている。

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最終更新:10/8(土) 13:00

日経トレンディネット

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