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ゴールデンボンバーを国民的バンドにした 「笑われてナンボ」の美意識

NIKKEI STYLE 10/8(土) 7:47配信

 ビジュアル系の“過剰なる美意識”の系譜を、音楽評論家・市川哲史が考察する連載3回目はゴールデンボンバー。完璧な<イロモノ>で「笑われてナンボ」の金爆ワールドは、一見ビジュアル系の美学と対極に位置するように見えて、実はその真骨頂なのだ。
 あの『女々しくて』がリリースされたのは、はるか大昔の2009年10月。2年後の11年8月に再リリースしたあたりから、配信やらカラオケやらの各社チャートで1位を飾り始め、翌12年の歳末にはインディーズ・バンドながら『NHK紅白歌合戦』初出場を果たした。それ以来毎年毎年、<コント『女々しくて』>という同一演目で13年も14年も15年も紅白に出場し続けている。きっと今年も来年も再来年も出るだろう。
 にわかに信じ難い現実だが、ゴールデンボンバー(以下、金爆)はいつの間にか日本を代表する国民的バンドなのだ。おお。
 とはいえ金爆は、楽器を一切演奏しないエアバンドである。しかもビジュアル系(以下、V系)を標榜しているにもかかわらず、演奏中に熱湯風呂に入るし800メートルリレー走るしTバック姿でサンバ踊るし、ステージは毎回毎回「これでもか」のネタライブと化す。
 これまでの常識からいえば、完璧な<イロモノ>ですがすがしいまでの<一発屋>が、矮小(わいしょう)化する音楽業界の救世主になったのだから、なんとも痛快な話ではないか。

■V系の様式美をとことん戯画化

 なんたって雑食性あふれる美意識と音楽性でもって、どこまでもスタイリッシュに<破滅の美学>を構築した音楽ジャンルが、V系である。だとすれば「笑われてナンボ」の金爆ワールドは明らかに正反対なわけで、これが15年前ならYOSHIKIの取り巻き連中に真夜中に呼び出され、間違いなくボコボコにされていた。
 ところが金爆の「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」出演は、X JAPAN、LUNA SEA、GLAYに続いて発表される破格の扱いだ。またGacktはかねてより金爆をかわいがっていたし、YOSHIKIはニコ生の「YOSHIKIチャンネル」に生出演させるなど、レジェンド勢は金爆に理解を示すことで己れの懐の深さをアピールしているように映る。言い換えれば、それだけ金爆が無視できない存在であるということなのだ。
 BUCK-TICKやXの登場を機に80年代末に誕生したV系は、その自由進取過ぎる姿勢もあっていまだに、とでも定義するしかない、日本オリジナルのロックである。しかしその半面、レジェンドたちが強烈過ぎてシーンそのものが様式美化してしまうというジレンマに陥り、世間から見れば2000年代以降はスタイルが硬直停滞している感があった。
 そんな現状を知ってか知らずか、金爆は硬直化を逆手にとってV系ならではの様式美をとことん戯画化した。彼らのライヴ定番曲『十ザ・V系っぽい曲十』なんて、徹頭徹尾V系していて笑うしかない。最初はおちょくってるのかと思ったが、彼らは本気で戯画化にいそしんでいた。
 真剣にやればやるほど、滑稽でおかしい。
 そう、これぞまさしくV系の真骨頂なのである。

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最終更新:10/13(木) 7:47

NIKKEI STYLE

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