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学校教育をめぐる誤解と謎(17)――免許がなくても教壇に立てる!? 複雑怪奇な教員免許制度

教員養成セミナー 10/8(土) 11:00配信

■教員になるには2ステップを踏む必要がある

 数年前、ある人と「教員免許」について話をしていた時、こんな質問をされたことがあります。

「教員免許の試験って、難しいんですか?」

 一瞬、何を聞かれているのか分からずに困惑しましたが、すぐに「教員採用試験」と混同していることに気付きました。

 「教員免許は、試験を受けて取るんじゃないんですよ。試験があるのは採用試験。免許状は、大学で必要な単位を取得すれば取れるんです。」

 こう説明したのですが、その方は今一つ腑に落ちない様子…。教員になるには、(1)大学で免許状を取得→(2)各自治体の採用試験に合格という2ステップを踏む必要がありますが、その辺の情報が錯綜しているようです。考えてみたら、教職を目指したこともない一般の人にとって、教員がどうやって教員になったかなんて、さほど考えたこともないでしょう。

 先述した通り、教員採用試験を受けるには、教員免許状の取得が前提条件となります。これがないまま、試験を受けることは、運転免許証を持たないままタクシードライバーの採用試験を受けるようなものです。

 ただし、大学4年生の場合は、例外として卒業時の「取得見込み」を条件として受験が可能です。でも、合格したのに免許が取得できなかった場合は一大事。合格は取り消しとなるだけでなく、翌年以降の再受験に影響を及ぼす可能性もあります。

 実際、単位不足等により、せっかくの合格を不意にしてしまう人は少なくありません。そんな最悪の事態に陥らないよう、教職課程で学ぶ大学生には細心の注意を払ってほしいと思います。


■細分化された教員免許

 教員免許制度の仕組みは、非常に複雑です。免許状には、大きく「普通免許状」「特別免許状」「臨時免許状」の3種類があり、このうち「普通免許状」は「専修免許」「一種免許」「二種免許」に分かれています。さらにそれら3つは「小学校」「中学校」「高校」などの校種別に分かれていて、「中学校」や「高校」は教科別にも分かれています。厳密に分類すれば、その種類は100以上にも上ります。

 日本の学校教育は、原則として、校種・教科に適合した免許を持っていないと、教えられないことになっています。すなわち、小学校で教えるなら「小学校教諭免許」が、中学校で社会科を教えるなら「中学校教諭免許・社会科」を持っている必要があります。これを「相当免許状主義」と言い、日本の教員免許制度の基本ルールとなっています。

 しかし、例外も認められています。例えば、中学・高校を一くくりにした「中等教育学校」では、中高両免許の“併有”を原則としつつも、中学校の免許を持つ教員が前期課程(中学校に該当する3年間)を、高校の免許を持つ教員が後期課程(高校に該当する3年間)を、それぞれ教えることができます。また、例えば中学校の理科の免許を持っていれば、小学校で理科の授業を受け持つことが可能です。さらに、特別支援学校については、小学校免許があれば小学部で、中学校免許があれば中学部で、それぞれ教えることができます。

 例外はこれだけではありません。中学校と高校には、「免許外教科担任制度」という、ちょっと驚くような制度もあります。ある教科の免許を持つ教員が学校内にいない場合、1年間に限り、免許を持たない他の教員がこれを受け持てるというものです。
 「おかしい。そんなことを認めたら、何でもありになってしまうではないか。」

 そう指摘する人もいるでしょう。確かに、免許外の教科を担任できるとなれば、「相当免許状主義」という基本ルールが何の意味も成さないことになります。

 しかし、現実として小規模校には、在席する教員だけでは全教科の免許をカバーしきれないケースが少なくありません。そのため、苦肉の策として、「免許外教科担任制度」を活用し、どうにかしのいでいる現状があります。
 特に、教科が細分化されている高校においては、「免許外教科担任制度」を活用しているケースが少なくありません。無論、決して望ましいことではないことから、今後の状況改善が望まれるところです。


■実物を見ることはめったにない教員免許

 2009年、教育職員免許法が改正され、教員免許制度は大きく変わりました。それ以前、終身有効だった免許に10年という有効期間が設けられたのです。これにより、教員は10年に1回、30時間の「更新講習」を受けることが必要となりました。

 教員として働く上で、免許更新は不可欠ですが、かといって授業を休んで更新講習を受けに行くわけにはいきません。そのため、多くの教員は夏休み等を利用して、大学等まで出向いて、更新講習を受講します。加えて約3万円の受講料は自己負担。まったく、厄介な制度を導入してくれたもんだ…と、恨めしく思っている人もいることでしょう。

 ただ、この更新講習自体、それほど難易度が高いものではなく、普通に受講すれば、まずもって更新できないことはありません。それは、この制度が不適格教員の排除を目的とするのではなく、現職の教員に新しい知識や技能を身に付けてもらうためのものだからです。

 ところで、この制度が導入された時、現職の教員の中には、「果たして、私の免許状は家の中のどこにあるんだろう…」と、探しまわった人もいると聞きます。教員免許状は、運転免許証のように持ち歩く義務がなく、ほとんどの教員が自宅に置きっぱなしにしています。中には、取得から数十年もの間、人目に触れることなくタンスの奥にしまったままというケースもあることでしょう。

 万が一、見つからなかったらどうなるかというと、運転免許証と同じく、必要な手続きを取れば、原則として再交付されます。一方で、先述した更新講習を受け忘れた場合は、免許状が失効してしまいます。実際、毎年何人かの教員が、「うっかり失効」で免許を失っています。この点は、個々の教員が強く自覚することも大切ですが、行政側が制度の周知徹底を図っていくことも必要でしょう。


※「教員養成セミナー2016年11月号」より

佐藤 明彦(『教員養成セミナー』編集長)

最終更新:10/8(土) 11:00

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