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ワシントン条約会議が浮き彫りにした9つの現実

ナショナル ジオグラフィック日本版 10/8(土) 7:20配信

「ペット用チーターの弊害」「核実験の残骸でゾウの密猟と戦う」など

 南アフリカ共和国ヨハネスブルクで、2週間にわたり「野生動物保護にとって、これまでで最も重要な会議」が開かれた。183の国と地域が参加するワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)締約国会議だ。

【写真】密猟者の罪、血に染まるサイの角

 気候変動と生息地の減少は世界の野生生物にとって大きな脅威だが、動物の生体やその部位の取引は合法・違法の区別なく盛んに行われており、これが一部の種を絶滅に追いやりつつある。

 サイは角を取るために殺される。ベトナムの一部では、サイの角を粉末にしたものがガンの治療薬や滋養強壮薬になると信じられているからだ。カメやトカゲはペット用に密輸される。トラは薬酒の原料の骨を取るために飼育され、殺される。数万頭のゾウが象牙のために殺されている。

 ワシントン条約締約国は3年ごとに会議を開き、特定の動植物を付属書に掲載するか削除するか、つまり、取引を制限あるいは禁止することにより保護を厚くするか、個体数が回復に向かっているとして取引の制限を緩和するかを決めている。

 現地で取材していて明らかになった、野生動物保護をめぐる9つの現実を報告する。

当局が押収した動物の大半はその後が不明

 爬虫類、鳥類、サルなどが、エキゾチックなペットや観光の道具として密輸される例が増えている。動物たちが過酷な運命にさらされる前に、当局によって没収されることもあるが、それが動物にとって必ずしも良い運命とは限らない。

 多くの国にはこうした動物を保護するための設備がなく、動物たちは結局死んでしまったり、密輸業者の手に戻ったりして終わる。当局が没収した動物のその後に関するデータがないため、資金の流入先も、事態が悪化した場合に責任を負うべき国もわからないのが現状だ。締約国は、押収後の取り扱いについてアンケート調査と分析を行うよう、ワシントン条約事務局に指示することで合意した。

飼育下のライオンから取られた各部の取引は、厳密な取り締まりには至らず

 条約締約国は、アフリカのライオンと体の部位について国際取引を全面禁止する案を検討したが、非公開の会議の結果、野生のライオンの骨、爪、歯の取引禁止にとどまった。飼育ライオンからとられた部位の販売は今後も合法とされるが、南アフリカは毎年の取引量を報告することになった。同国だけで9000頭以上のライオンが飼育され、「キャンド・ハント(フェンスの中に囲い込んだ動物を狩る遊び)」に使われたり、部位が売買されたりしている。ライオンの骨はトラの骨の代用品として需要が増加している。トラは、その骨が長らく伝統医療に用いられてきたが、いまや絶滅の危機に瀕しているからだ。飼育ライオンの部位の取引が引き続き許容されたことは問題だ。激減している野生ライオンの骨を偽って取引する抜け道は残されたままだ。

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最終更新:10/8(土) 7:20

ナショナル ジオグラフィック日本版

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