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ますます政治化するノーベル平和賞に権威はあるのだろうか --- 神谷 匠蔵

アゴラ 10/8(土) 7:16配信

先ほどノーベル平和賞受賞者が決定されたというニュース(https://www.theguardian.com/world/live/2016/oct/07/nobel-peace-prize-2016-announcement-live)があった。

受賞者はコロンビアの大統領Juan Manuel Santos氏だ。受賞理由は「大統領の平和に向けてのなお一層の尽力を応援するため」だそうだ。

以下の投稿を引用する。

「The Nobel committee spokeswoman applauded President Santos for saying he would fight for peace until his last day in office.

“The committee hopes that the peace prize will give him strength to succeed in this demanding task. Further, it is the committee’s hope that in the years to come, the Colombian people will reap the fruits of the reconciliation process.”

She said that though the peace accord was rejected in the referendum, the negotiations have “brought the bloody conflict significantly closer to a peaceful solution” and Santos’s “endeavours to promote peace demonstrate the spirit of Alfred Nobel’s will”.」

英語なので訳す必要はないかもしれないが今回は念のため訳そう。

『ノーベル賞委員会の代表者はサントス大統領が「平和のために大統領職の任期最終日まで戦い続ける」と発言したことを称賛した。

「我々ノーベル賞委員会は平和賞がコロンビアにおける平和の実現という困難な任務において成功する力となることを願っています。また、委員会はコロンビア国民が和解交渉過程の果実を享受する(=和解を達成する)ことを願っています。」

また委員会代表者は、和平合意が国民投票において否決されたとはいえ、和平交渉は「血塗られた抗争を平和的解決へと大きく近づけた」のであり、またサントス大統領の「平和を推進しようとする努力は、アルフレッド・ノーベル氏の意思を十分に示すものだ」と発言した。』

つまり、ノーベル賞委員会は国民投票で和平合意を否決したコロンビア国民に対し、暗に「大統領は努力しているのだから、和平を早急に受け入れてほしい」と「希望」しているに等しく、もはやノーベル賞委員会によるコロンビアの内政への政治介入と受け取られかねない。

実際委員会に対しそのような疑問は既にぶつけられている。

「The committee spokeswoman is asked whether awarding the prize to a president who negotiated a peace deal that was then rejected by the people of Colombia was disrespectful to Colombian democracy.

She says no, she thinks the Colombians rejected the specifics of the peace deal, not peace itself, and is hopeful that this award will encourage the country’s leaders to continue to strive for peace and not let tensions reemerge.」

再び訳すと、

『今回の受賞はコロンビアの民主主義政治に対する敬意を欠いているのでは、という質問に対し、委員会代表者は、「いや、私はコロンビア国民は平和合意を否決したに過ぎず、平和そのものを否決したのではないと考えており、その上で今回の平和賞受賞がコロンビアのリーダーが平和に向けて戦いつづけ、緊張を再び表出させないことを応援することに繋がることを願っています」、と返答した』

ということだ。「国民は平和そのものを否決したのではない」というのは、どんな場面でも言えるマジックワードである。ヒトラーを大総統に民主的に選んだ当時のドイツ国民だって、別にそれによって平和そのものを否決したのではないだろう。

オバマ氏が受賞してからというもの、ノーベル平和賞は完全に政治化してしまっている。以前から選考基準の不鮮明な賞ではあるが、ここまで来るともはや英米のリベラル派でさえ呆れてしまうほどだ。

ちなみに、英国のガーディアン氏はシリアの “White Helmets”が受賞すべきだと論じていたようだが、さすがのノーベル委員会も現状で中東問題には触れたくないらしい。

神谷 匠蔵

最終更新:10/8(土) 7:16

アゴラ

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