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中川淳一郎×呉智英『バカざんまい』につける薬

デイリー新潮 10/8(土) 13:00配信

 バカを論破して痛快・爽快。本誌(「週刊新潮」)連載「この連載はミスリードです」が、『バカざんまい』(新潮新書)として16日に上梓される。この機を捉え、著者の中川淳一郎氏(43)が師と仰ぐ『バカにつける薬』の著者・呉智英氏(70)と対談。知的でタブーなき2時間である。

中川淳一郎 呉さんは今年70歳で、意気軒昂に論壇で発言しまくっているわけです。どういう心境なんですか? 怖くないんですか? 

呉智英 怖いって何が? 

中川 どうしてそんなに泰然としていられるのか。日本の論客のなかでも、かなり口の悪い部類に入るじゃないですか。

呉 入りますね。「三大口悪」には。それと、朝生(テレビ朝日系列「朝まで生テレビ!」)にはここ十数年出ていないんだけれど、俺自身が朝生のプロデューサーであっても多分使わないだろうって思う。俺必ず勝っちゃうから。マズいんだよね、議論していて必ず勝っちゃうって。

中川 負けない人生。それがいつ向こう側からやって来るのかと俺は思っていまして。

呉 それは違うね。俺が前から言っているのは、議論っていうのはあなたもプロレス関係の仕事をやっているならわかるだろうけど、格闘技と同じことなんだよね。相撲の世界だと心技体と言うじゃないの。この3つが大事だって。

中川 と言いますと? 

呉 心っていうのは、絶対勝つ、勝つんだっていう確信。次に技は、向こうがこう来たらこう返すっていう論争術。そして、そのために必要なのが体。常日頃からいろんな情報に接したり、古典を読んだりして教養を身につけておかなければいけない。相撲なら、鉄砲をやるとか、四股を踏み、カロリーが低くてタンパク質が多い鶏肉や魚をちゃんこ鍋で食うとか、それと同じことなんだよ。それやらなきゃ、心技体がなければ強くならない。

中川 モノを書いたり、論を展開したりする人間として、そこは当然やらなくちゃいけないこと。しかしながらここ数年、反知性主義というものが出て来てるじゃないですか。要するに、「そんなに勉強しなくていいじゃん」みたいなことがまかり通っている。

呉 20世紀の前半ぐらいから、すでに反知性主義ですよ。大衆社会は反知性主義を引き起こすからね。まあそれは後で触れるとして、あなたの今回の本には、類型化されたいろんなバカが出てきますね。

中川 はい。「『無難なコメント』しか言えないバカ」に「『ケースバイケース』と言うバカ」……。

呉 そのなかで、茂木健一郎がどっかの三流大学、いや三ではきかない、五くらいか、そこで講演して「偏差値教育は良くない」って。どの口で言うんだ。

中川 「お前東大卒だろ?」って話ですよね。呉さんと僕は、「東大偉い。東大行ったやつは尊敬しないといけない」ってずっと言ってきた。だって呉さんは早稲田で僕は一橋。東大の下じゃないですか。

呉 東大落ちた奴が行くところなんだから。威張ることはないよ、別に。



中川 でもなんで茂木健一郎は東大をこんなに貶(けな)すんでしょう。

呉 その裏には吉本隆明の存在があると思う。茂木は吉本の愛読者で尊敬しているんだよね。だからそこで、吉本の言う「大衆は素晴らしい」っていう概念が出てくる。

中川 その大衆っていうのはつまり? 

呉 もっと下があって、もっと下がある……下であればあるほど救われるというような大衆論。それが現代の社会通念のようになっている。そんなバカなことはないってずっと俺は言い続けてきているんだが。

中川 努力して東大生になったのに、偏差値が戦犯扱いされ、挙句に叩かれるっていうのは厄介なことです。

呉 しかも偏差値教育が良くないなんて根拠は何もなく、むしろ一番合理的なんだ。論文や人格とか教養を試すということになったら、とんでもない差別社会になるし、事実、そうなってきている。ある時代までは、田舎の貧しい子供たちが、学校の教科書以外何もないなかで、教科書のみを何度も何度もガリ勉して東大に入っている。

中川 それはだいたいいつごろまでですか? 

呉 1960年代だな。ところが今はピエール・ブルデュー先生が言っている文化資本論のように、文化資本がある奴じゃないと名門に行けないんだ。親が子供にいろんな本を読み聞かせたり、ピアノを習わせるとか、日曜日には博物館とかクラシックの音楽会に連れて行くとか、そういう家庭じゃないと入試問題が解けなくなりつつある。

中川 つまり、教養、人格が問われる場面がぐっと増えてきている。

呉 となると、上昇のチャンスが無くなってくるんだよ。もちろん偏差値で人間がわかるとは全然思っていないよ。だけど知能をはかるなら偏差値が一番合理的なんだ。

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最終更新:12/2(金) 18:40

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