ここから本文です

なぜ週刊文春だけがスクープを連発できるのか?【週刊文春編集長×大根仁監督】

週刊SPA! 10/8(土) 9:10配信

 今年の年明けから破竹の勢いで特ダネを連発し、一部では“文春砲”と畏怖されている『週刊文春』(以下、『文春』)。その立役者が、’12年から編集長を務める新谷学氏だ。昨年には一時休養を挟んだ期間があったが、今年1月に現場復帰をしてからの文春の勢いは前述の通り。そんな新谷編集長を、映画『SCOOP!』が絶賛公開中の大根仁監督が直撃! スクープを飛ばし続ける秘密に迫った。

⇒【写真】“スクープ・ラッシュ”ぶりがわかる今年の中吊り広告

大根:この映画は企画が2年前に立ち上がったんですが、去年の前半に脚本を書いていた頃は、スクープ一発で雑誌の売上げが伸びるという描写にあまりリアリティがないのでは、と不安だったんです。ところが、今年に入ってからの『文春』のスクープ連発のおかげで、すごくタイムリーな題材になったなと思って。

新谷:劇中で、雑誌『SCOOP!』が特ダネを載せるたびに部数が伸びて、最終的に30万部を超えますよね。「お、うちのほうが勝ってるじゃん」と思いましたよ(笑)。

大根:それはそうですよ(笑)。あれは複数の写真週刊誌の編集部をモデルにしているんですが、編集者が「今は30万部いけば万歳じゃないですかね」と言ったリアルな数字を反映させました。

新谷:うちは完売すれば60万部とかいきますからね。部数を貼り出すことはしませんが、営業部員が「完売御礼」と朱墨で直筆したものをみんなに見せて、「来週もフルスイングでホームラン狙うぞ!」と私が言う。そうそう、映画を見ていて一番笑ったのは、二階堂ふみさん演じる行川野火が、「なんで静さんたちの世代は喩えがいちいち野球なんですか」と言うセリフ。私もいつも現場の記者たちに言っちゃうんで(笑)。

大根:僕も野球世代なので、若い世代、特に女の子と話してると「この喩え、伝わってるのかな」と不安になりますね。

新谷:そういう細かいところを含め、随所にリアルなところが多かったです。うちにも毎年新人の女の子が入ってくるけど、野火と反応が似てるんですよ。「マジ最低ですね」とか「こんなことするために入ったんじゃない」とか、最初はみんな言う。そういう子たちが1年もたたずにガラリと変わるから面白い。

大根:張り込みの手法については、もちろん映画的な嘘も混ぜていますが、だいたい間違ってないですよね? びっくりしたのは、斎藤工くん演じる若手イケメン議員のエピソード。あれは小泉進次郎さんをイメージしていて、彼はすごくガードが固そうだから、もしスクープされるならホテルに誰かを呼び出したところを撮られるパターンかなと、ほぼ想像で脚本を書いたんです。そしたら去年の夏、『文春』で本当に彼のホテル密会がスクープされて、「現実が追いかけてきた!」と興奮しましたね。

新谷:あのシーンはすごくリアルだと思いました。取材ターゲットと同じエレベーターに乗り込んで、何階に滞在しているか確かめる、という手法は日常的に使っているんですよ。

大根:ちなみに、打ち上げ花火にも元ネタがあって、あれは大昔に『FOCUS』が、入院しているターゲットを窓際におびき寄せるために外で爆竹を鳴らしたというエピソードをアレンジしました。映画のように、記者やカメラマンが危ない目に遭うこともあるんですか?

新谷:元少年Aに走って追いかけられたときは、優秀な男性記者コンビが「一番怖かった」と言ってましたよ。「シャレにならないっすよ」と、編集部に戻ってきてからもまだ震えてましたから。僕らの仕事は究極の結果オーライなところがあって、いくら段取りを立ててもその通りにならないことのほうが多いし、トラブルはつきもの。とっさの判断でもう直撃しちゃえとかここで撮っちゃおうとか、最後は野性の勘が勝負なんですよね。そして、勘がいいカメラマンほど動物的なハンターの素質があるのか、よくモテる(笑)。都城静を演じる福山雅治さんは、そういうカメラマン特有のオスのフェロモンがよく出ていましたね。

◆社会正義ではなく人間への下世話な興味

大根:世間の人たちは、週刊誌の記者やカメラマンのことを、「よくそんな仕事できるな」とか言って、はっきり見下してるじゃないですか。そのくせ、みんなスキャンダルは大好きで、報道されるとやっぱり読んじゃう。そのアンビバレントな構造を切り取りたいというのが、この映画を作る一番のモチベーションでした。

新谷:取材していても「あなたたち、人を不幸にして楽しいですか?」とか聞かれますからね。でも、私たちは決して人のプライバシーを暴き立てて不幸にしようと思ってやってるわけじゃない。ベッキーさんの不倫報道にしたって、彼女を番組やCMから降ろそうなんて思っていないんです。好感度ナンバーワンでこれまでスキャンダルのなかったタレントが、実は恋をしていて、しかも相手が妻帯者で、そのバンド名が“ゲスの極み乙女。”なんて、「おもしろすぎるでしょ、みなさん!」と伝えたいだけ。

大根:芸能人にしろ政治家にしろ、権威が落ちる瞬間に、人間は本能的な快感を感じるんじゃないでしょうか。

新谷:人間が人間である以上、ゲスな俗物である部分は誰しもが持っている。そこをかっこつけて建前で押し通すのか、ぶっちゃけて本音で勝負するのかというときに、『文春』は建前やかっこつけではない本音のメディアであるべきだと思っているんです。例えばアイドルだって恋もすれば酒も飲むし、泥酔して泣きわめく夜もある。そんな、単なる着せ替え人形ではない、人間としての一面を見せるメディアがあってもいいじゃないか、という気持ちです。

大根:立川談志が「落語とは、人間の業の肯定である」という名言を残していますが、スキャンダルにはおそらくそういう側面があるんじゃないですか。

新谷:“業の肯定”とは、まさにその通りです。美しかったり素晴らしかったりする一方で、醜かったり愚かだったりする面もひっくるめて人間のおもしろさ。そういった“人間への興味”が、週刊誌報道の最大の原点だと思っています。ただ怖いのは、最近は一度焚き付けてしまうと、インターネットもテレビのワイドショーも、水に落ちた犬を安全圏からボコボコになるまで叩き続けるでしょう。そこは行き過ぎないように気をつけないと危ないなと我々も思っているんです。

大根:でも、いまや『文春』自体が雑誌を超えて、テレビや新聞と同じひとつの“メディア”になった風格すらありますよね。舛添元都知事や甘利元大臣の件にしろ、もはや『文春』が日本を動かしているんじゃないかって勢いですよ。

新谷:結果的にそうなってしまっているとしても、最初から「社会の悪を裁こう」なんて思うほど不遜じゃないですよ。舛添さんの件にしたって、私たちは彼のクビを取ろうとしてやっていたわけじゃないのに、やがてテレビが悪ノリし始めて、「どうやったら辞めていただけるんですか?」と会見で質問する記者まで現れた。あなたは何様のつもりだと。

大根:『文春』としては、世の中を正そうなんてつもりはなくて、あくまで“人間への下世話な興味”なんですね。

新谷:そうです。正義の味方になろうとはまったく思っていません。甘利大臣にしても、TPPの立役者でアメリカ相手に一歩も引かないタフネゴシエーターと言われていた人が、大臣室でとらやの羊羹と一緒にお金をもらっちゃうって、けしからんけど“おもしろい”じゃないですか。すべては意外な素顔が知りたいという人間への興味ですよ。「舛添を辞めさせろ」とか「ベッキーをテレビに出すな」なんて書いたら誌面も暗くなるし、後味も悪いでしょう。週刊誌ってそんな偉いものじゃなくて、新橋でお酒飲んでるサラリーマンや、昼下がりにランチ食べてる奥様たちが、「舛添ふざけてるよな」とか「ベッキーの手紙読んだ?」とかって話のネタにしてくれたら、それが嬉しいんです。目線は低くすることが何より大事だと思ってます。

 対談はまだまだ続き、橋下徹大阪市長(当時)や甘利元大臣、元巨人の笠原被告、ゲス不倫ブームの取材秘話など「センテンススプリング」な裏話も満載。その詳細は福山雅治の表紙が目印、現在発売中の「週刊SCOOP!」でぜひとも確かめてほしい。<取材・文/福田フクスケ 撮影/尾藤能暢 構成/日刊SPA!取材班>

日刊SPA!

最終更新:10/8(土) 9:10

週刊SPA!

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊SPA!

扶桑社

2016年12月13日号
12月06日発売

¥390

・[転売で儲ける](秘)メソッド
・[ゲス不倫ブーム]知られざる波紋
・[痛すぎる発言]ランキング
・冬のボーナス[有名企業50社]対決

Yahoo!ニュースからのお知らせ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。