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イラクに辛勝したサッカー日本代表。オーストラリア戦に向けて残った最重要課題とは?

週刊SPA! 10/8(土) 16:20配信

サッカー日本代表は6日(木)、ロシアW杯アジア最終予選グループBの第3節でイラク代表と対戦し、2-1で勝利した。日本は前半26分、原口元気のゴールで先制。後半15分にFKから同点に追い付かれたものの、終了間際に途中出場の山口蛍が右足一閃。劇的な決勝ゴールを沈め、苦しみながらも勝ち点3を獲得した。

◆劇的勝利も課題は山積み

 勝ち方は劇的だった。エンターテイメントとしては、ある意味圧勝するよりも遥かによい仕上がりだった。だが、やはり勝ったのをいいことに試合の本質の部分を見失ってはならない。「内容は良くなかった。ただ勝ったという結果だけが収穫です」。試合後、何人かの選手がそう語ったとおり、予選2連敗中のイラクを相手に日本は苦戦を強いられた。軽快な動きを見せたのは原口元気と清武弘嗣の2人くらいのもので、全体的に重たいプレーに終始。2次予選初戦でシンガポールを相手に0-0で引き分けた時のような「圧倒的に攻め続けながらもツキがなかった」という展開ではなく、「普通に苦戦した」というべき内容で、日本代表の現状がそのまま表れた一戦となった。この日、出色の出来だった原口は独力で何度も左サイドを突破し相手の脅威となったが、原口がいなければ後半さらに押し込まれる展開になっていたのは明白だ。全体を押し上げる回数が減っていれば守備の時間が長くなり、イラクに勝ち越し点を決められてしまう可能性も大いにあったし、少なくとも山口の決勝弾は生まれなかった可能性が高い。

 なにか1つを修正すれば済むような状況ではなく、課題を挙げればキリがないというのが現状だ。この先の最終予選や、(出場できればの話だが)その後の本大会に向けて1つでも多くの課題を解決し、チームの完成度を高めていかなければならない。

 そんな数ある課題の中でも、11日(火)に行われるアウェイでの対オーストラリア戦に向けて修正が急務な事項がある。セットプレーにおけるディフェンスだ。

◆次節、最重要課題となるセットプレーのディフェンス

 UAE戦でも直接FKとPKで2失点を喫した日本は、この日も後半15分に酒井宏樹が与えたFKから、FWサード・アブドゥルアミールに酒井高徳が競り負け同点ゴールを許した。今のところ、最終予選での失点は全てセットプレーからということになる。以前に比べ試合運びの部分で安定感を欠いており、不用意なボールロストから自陣深くに侵入され、慌てて対応した結果FKを与える、またはシュートまで持ち込まれてCKになる、といった場面が増えている。勝利したことですっかり忘れ去られているが、前半2分、この試合最初のCKからヘディングを許し右ポストを叩いたシーンも、失点になっていてもおかしくないシーンだった。

吉田麻也「チームとしてセットプレーを与える回数をまず減らしていきたいです。失点シーンに関しても、誰が競り負けたから悪いということではないですけど、やはり1対1で負けないようにしないといけない。競り勝たなければいかないシーンというのは試合中誰にでも起こり得ることなので、マンツーマンで各自が責任を持ってやれるようにしていきたいです」

 日本はCKのディフェンス時にはニアに2枚の選手を置き、それ以外はマンツーマンで対応している。誰かがマークを外し、明らかにフリーの選手を作ってしまいその選手に決められたのであれば戦術的な修正が必要だが、この試合ではそういった場面は無かった。立ち上がりのCKのシーンでも酒井高徳が競り負けたが、1対1でマークできているのであれば、あとは吉田が言うように1人1人がそれぞれの相手に競り勝つしかないのだ。イラクよりも高さがある次節のオーストラリア戦では、空中戦での競り合いはさらに厳しい戦いとなる。だからこそ、チームとしてセットプレーに対する意識を今一度高めておく必要があるはずだ。

◆勝敗を左右しかねない、GKの判断

 現在日本代表のゴールマウスを守るGK西川周作は、その左足から繰り出される正確なフィードなどが高く評価されているが、ハイボールに対する強さにおいては、以前レギュラーだった川島永嗣に軍配が上がる。セットプレーのディフェンスにおいてGKの役割は当然ながら非常に大きいわけだが、前に出て、大きな相手と競り合いながらも強靭なフィジカルでボールを遠くへ跳ね返せるのは、川島の大きなストロングポイントだ。

 だが、GKが前に出るプレーには大きなリスクも伴う。サッカーファンなら誰しも、06年ドイツW杯の初戦、日本-オーストラリア戦での同点ゴールを忘れてはいないだろう。後半38分、オーストラリアの左サイドからのロングスローに対して川口能活が飛び出し、パンチングを試みる。しかし途中投入されたケネディの圧力もありうまく弾ききれず、こぼれ球を今もオーストラリア代表に名を連ねるケーヒルに押し込まれてしまった。あのシーンでも分かるように、「GKが前に出る=ゴールがガラ空きになる」ので、ボールに触れられなかった、もしくは遠くに弾けなかった場合、一気に大きなピンチとなってしまうのだ。

 川島も、空中戦に強い反面、無理にキャッチにいってファンブルし、決定機を招いてしまったことが多々あった。W杯本戦はもちろんだが、この最終予選でも1つのミスが命取りとなる。たった一度、ほんの少し判断を躊躇することでW杯行きを逃すということも、十分にあり得るのだ。

◆空中戦で不利だからこそ求められる、選手間の密な連携

 CKやサイドからのFKなどにおけるGKのハイボールの処理は、前に出てキャッチするのがベストだ。それが難しければパンチングでできる限り遠くに弾き飛ばすのがベターなプレーだが、「先に触れない」もしくは「触れるが遠くに弾けない可能性がある」場合は、ゴールライン付近に残っていち早く対シュートの準備をするのが重要だ。この日の西川のハイボールに対する判断は、試合後に本人も「(前に)出る・出ないの判断はしっかりできたと思う」と振り返った通り、どれも的確で素早いものだった。

西川周作「事前のスカウティング通り、相手のセットプレーでは速くて鋭い、GKが前に出づらいボールが入ってきていたので、迷って中途半端になるくらいだったらステイするようにしていました。前に出たときもしっかりボールにアプローチできたかなと思います」

 相手のハイボールが入った際、GKから味方DFへは①自分で出て対応するのか、それとも②GKは残って対シュートの準備をし、DFに競らせるのかを伝える指示が出る。ディフェンス時の守備の声はGKからDFに出されるのが基本だが、GKがファーへのボールに自分で出て対応する場面では、逆にDF陣からの声かけが重要だ。例えば、自陣左サイドから上がったファーへのハイボールにはGKは右にステップしながら対応することになる。この時、GKは左から飛んでくるボールを見たままステップしなければならないため、走り出した先(自分の右側)は完全な死角となる。そこに①相手選手がいるのか、それとも②GKがフリーの状態でキャッチできるのかを、DFがGKに伝えなければならない。

西川「ファーのボールに対しては、今日は味方がしっかり声をかけてくれていました。後半も『フリー!』と声をかけてもらったことでパンチングせずにキャッチできた場面があったので、そこの連携は継続していきたいです」

 この日の後半、ハイボールをキャッチした西川から左サイドに開いた原口に素早く展開し、そこから原口が約70mを持ち上がり左足でクロスを供給した場面があった。攻撃が停滞気味の現在の日本代表において、展開力に長ける西川から原口を走らせるカウンターは、相手ゴールへの数少ない突破口と言える。西川がハイボールをキャッチできる場面が増えれば、自ずとそのチャンスも増えるはずだ。

 次節の対オーストラリア戦、身長185cmを誇る右SBの酒井宏樹は累積警告により出場停止だ。ただでさえ高さで分が悪い日本にとってはかなりの痛手だが、だからこそなおさら、わずかな判断ミスや連携ミスが命取りとなる。相手のセットプレーに対していかに集中力を高めて対応できるかが、次節の大きなポイントとなることは間違いない。活動期間が限られている日本代表はセットプレーの確認にほとんど時間を割けていないのが現状だが、オーストラリアに渡ってからのトレーニングでは、相手のセットプレー対策が必ず組み込まれるはずだ。

 勝たなければならない、最低でも引き分け以上が求められるアウェイでの大一番。現在の日本代表の状態を見る限り、難しい試合になるのは間違いない。悲観的な戦況予想が大勢を占めているが、日本がその予想を良い意味で裏切ってくれることを願ってやまない。 <取材・文/福田 悠 撮影/難波雄史>

日刊SPA!

最終更新:10/8(土) 16:20

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