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片時もスマホを離せない人に読んでほしい芥川賞作家の一冊

NEWS ポストセブン 10/9(日) 16:00配信

【書評】『スマホ断食』/藤原智美・著/潮出版社/1296円+税

【評者】伊原和弘(フリーライター)

「スマホ、ご覧にならないの? 新聞でも読みます?」

 先日、初めての店に入って1人で飲んでいたら、女将さんからそう声をかけられた。1人客はほかにも2人いたが、言われてみればどちらもスマホをいじっている。1人でぼんやりと酒を飲んでいた私は、よほど奇異に映ったらしい。

 都内で電車に乗ると、ほとんどの人がスマホを見ている。ちなみに、内閣府が行った平成27年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、高校生のスマホを使った平均ネット利用時間は1日「約2時間半(157.7分)」。「3時間以上」と答えた者も40.9パーセントいたという。

 この状況は少し異常ではないだろうか? 本書は「ネットに潜む危険」を次々と挙げながら、ネット時代に警鐘を鳴らす一冊だ。

 例えば、他人の文章や画像を盗作する事件が多発しているのは、コピー・アンド・ペーストが簡単に行えるようになったから。思慮の浅い無責任なコメントが多く見られるのも、ネットが持つ匿名性と無縁ではないだろう。

 数が多くて競争が激しいネット動画は、必然的に過激で刺激の強いものになっていく。わからない言葉は検索すればすぐに答えが出るため、辞書を引いて「言葉を理解し記憶する」力や「自分の頭で考える」力が衰退している…。

 とりわけ、著者がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に向ける目は厳しい。

 まず、SNSは個人情報を公開することが基本。ポイントカードで企業に消費傾向を分析されるように、特定の友人にだけオープンにしたつもりの個人情報も、いつの間にか思わぬところに流れている。

 SNSで「いいね」をもらうためには、平均的な価値観や感覚が欠かせない。多くの人に共感されにくい個性的な意見はスルーされる。そのため、どんどん思考が平凡で薄っぺらなものになり、独自の感性がすり減っていく。一見のびのびと「個」を発信しているように見えるSNSだが、実は「集団」に参加し、空気を読むことを強要されているのだ。

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最終更新:10/9(日) 16:00

NEWS ポストセブン

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北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。