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「二重国籍」問題が逆説的に示す日本の健全性 --- 神谷 匠蔵

アゴラ 10/9(日) 7:01配信

私は以前から西洋のリベラリズムがある種行き過ぎている感のあることを指摘してきたが、今回はもっと踏み込んで日本がいかに世界全体から見てイデオロギー的に「中立的」であるかということを、最近話題の「二重国籍」問題を軸に論じてみたい。

右の極み、ロシア連邦

まず、右の極。国籍に関して最も厳しい政策を取る国のひとつであるロシアでは、2014年以降公人はおろか一般市民も含むすべてのロシア国籍を保有しロシア領内に住んでいる者に対し、他国の国籍を持っている場合はそのことを移民局に報告しなければならなくなった。つまり「二重国籍」者のあぶり出しである。この記事(https://themoscowtimes.com/articles/russia-targets-traitorous-dual-citizenship-holders-35973)によれば、「二重国籍者は無条件に(反逆者である可能性を)疑う」のがロシア政府のデフォルト姿勢である。ロシアほど政治性の強い国ともなると、二重国籍者に対し疑いの目を向けるくらいのことは「常識」であり、そんなことをするのは「差別だ」と言い立てる声は圧殺されるのかもしれない。

左の極み、西欧

反対に左の極である西欧の中でも最もリベラルな英国では、法律上「二重国籍」の者でも首相にでも何にでもなれる。また完全に無条件ではないとはいえ、少なくとももう片方の国籍がNATO加盟国であれば二重国籍者が英国軍に入ることも不可能ではない。無論、法律上不可能ではないというだけで、現実に二重国籍者が「歓迎」されるわけではない。アメリカも米国生まれの人間しか大統領にはなれないが、単に政治家になるだけであれば二重国籍でも法律上問題はなく、実際二重国籍者は多数いる。(保守派の国民は当然そのことに憤り、特にイスラエルとの二重国籍者に対しての風当たりは強い(http://educate-yourself.org/cn/dualcitizenship03dec07.shtml#top)が、リベラリズムが国是のアメリカではあくまで少数意見にとどまる)

つまり、西欧では二重国籍者が政治や軍などの重要な公職に就くこと自体は概ね法律上認められており、しかも政治家や軍人の中に二重国籍者は少なくないのだが、だからと言って国民がそれを承服しているわけではない。にも関わらず、二重国籍者が公職に就くことを禁ぜよという主張は「hate speech」に該当するとして処罰対象にさえなるので、西洋では事実上要人の二重国籍を問題化するような形の議論は公にはできない。

つまり西欧と東欧では方向性が真逆だとはいえ、国籍問題に関して議論することは、東欧では反逆罪で処罰されるがゆえに、西欧ではヘイトスピーチ罪で処罰されるがゆえに、いずれの場合もできないのだ。

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最終更新:10/9(日) 7:01

アゴラ

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