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トクマルシューゴ、デヴェンドラ・バンハート…芸術の秋に聴きたい、アートの香り高い新作5選

リアルサウンド 10/9(日) 15:00配信

 芸術の秋ということで、今月は実験的な手法を取り入れたり、絵画や文学などアートな香りが漂う個性的なシンガー達の作品を紹介したい。

 まずはトクマルシューゴ『TOSS』。これまでバンド・メンバーを従えて、様々な仕掛けを散りばめたトリッキーなサウンドを緻密に作り込んできたトクマルが、今回はグレッグ・ソニア(ディアフーフ)、上水樽力チェンバーオーケストラ、鳥居真道(トリプルファイヤー)、小林うてななど様々なアーティストとコラボレート。一般の人々から募集した音源をエディットしたり、明和電気の創作楽器を使ったりと、曲毎にコンセプトを決めて曲作りするというアートのデパートみたいなアルバムだ。作風は大きく変わらないが、素材が違うことで曲にこれまでとは違う質感が生まれているのが面白く、トクマル・サウンドの新境地ともいえる快作だ。

 トクマルの音楽の持つコラージュ感を、もっとプリミティヴな感覚で曲に反映させているのがフランス出身の女性シンガー、レオノール・ブーランジェだ。新作『ファイゲン・ファイゲン』は、最近注目を集めるフランスのレーベル、<ル・ソール>からのリリース。ブーランジェは演劇やペルシャ音楽を学んできたらしいが、多彩な楽器の音やフィールドレコーディングされた音源を組み合わせて、民族音楽や現代音楽、フレンチ・ポップなど様々な音楽の要素をコラージュしたエキゾチックな世界を作り上げている。アバンギャルドで無国籍なサウンドは、初期のブリジット・フォンテーヌを彷彿させたりも。

 2000年代にフリー・フォーク・ムーヴメントを象徴するアーティストとして注目を集めたシンガー・ソングライターのデヴェンドラ・バンハート。自作のジャケットのグラフィックも手掛けていたデヴェンドラは、最近ではヴィジュアル・アーティストとしても評価が高く、作品が美術館に展示されるほど。そんな彼の新作『エイプ・イン・ピンク・マーブル』は、80年代の東京のホテルのロビーで流れていたBGMをイメージしてたものだとか。水彩画のように淡くミニマルな音色でさらりと描いた歌は、洗練されたメロディーとアシッドな浮遊感が融け合っている。そして、そこに浮かんでは消えるオリエンタルなフレーズ。甘い官能と空虚さが交差する歌は、どこか坂本慎太郎に通じるものがある。ちなみに日本盤は、デヴェンドラのドローイング・アート・ポスター付き。

 そのデヴェンドラがラブコールを送るのが、スウェーデンのシンガー、サラ・アスブーリンによるソロ・ユニット、エル・ペロ・デル・マールだ。新作『ココロ』は日本や中国、タイなど、オリエンタルなカルチャーからインスパイアされたらもの。リヴァーブをきかせた透明感のあるトラックに、ふわりと浮かぶウィスパー・ボイス。そんな彼女本来のドリーミーなサウンドに、トライバルなビートやエキゾチックなフレーズを織り交ぜなてオリエンタル幻想を艶やかに紡ぎ出している。かつて彼女の音楽を「優雅で素晴らしい」と絶賛したデヴェンドラ。偶然にせよ、新作で同じようにオリエンタルなアプローチをしていると知ったら惚れ直すに違いない。

 最後は文学の香り高い一枚を。ルー・リードも一目置いた、文学性の高い歌詞を書くシンガー・ソングライターのウィル・シェフによるソロ・ユニット、オッカーヴィル・リヴァーによる3年振りの新作『アウェイ』。前作以降、大好きだった祖父が亡くなったり、バンド・メンバーが脱退したりと落ち込むことが続いていたとか。そんな不運から逃れるように、シェフは町外れの家を借りて曲作りに没頭。そうすると、どんどん曲が生まれて、あっという間にアルバムが出来上がったらしい。新たなバンド・メンバーにはジャズやアバンギャルド・シーンで活動するミュージシャンを招くことで自由度の高いバンド・アンサンブルになり、そこにオーケストラ・アレンジも加わって、内省的でふくよかなサウンドスケープを生み出している。そんななか、呟くように歌うシェフのストーリーテラーぶりも健在だ。本人いわく「人生をリセットしてゼロからスタートするアルバム」らしいが、じっくり歌詞を読みながらシェフの新たな決意に耳を傾けたい。

村尾泰郎

最終更新:10/9(日) 15:00

リアルサウンド

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