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キヤノンMJがドローンで組んだ異色の相手

東洋経済オンライン 10/9(日) 5:00配信

 測量から農業、インフラ点検、警備、宅配まで、幅広い分野での活用が期待されている「ドローン」(小型無人機)。個人向けに販売されているものなら、今や1万円前後の低価格な機種まである。2015年4月には首相官邸にドローンが落下する事件が発生、改正航空法(同年12月施行)の制定にもつながり、一躍注目された。

 AI(人工知能)や自動運転と並ぶ成長分野で、”空の産業革命”としても注目されているドローンは、2020年には国内だけで1138億円の市場が想定されている(インプレス総合研究所調べ)。民生用では世界シェア首位の中国DJI社が一強状態である一方、産業用には多くの会社が参入し、勝者がまだ見えていない。そこへ9月5日、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)がドローン市場への参入を発表した。

 キヤノンMJは、産業用ドローンのシステムメーカーであるプロドローン社(本社:名古屋市)による第三者割当増資10億円のうち、1億円を引き受けて出資。キヤノンMJのほかにはアイサンテクノロジー社などもプロドローンに出資している。

■ドローンにはキヤノンの映像機器を搭載

 今回の出資によって、キヤノンMJは国内における販売契約をプロドローンと締結。プロドローン製のドローンにキヤノン製の映像入力機器を搭載することになる。販売開始は2017年中だ。

 そのプロドローンは、2015年1月に設立されたベンチャー企業である。放送用大型カメラを積むドローンを作れないかと相談され、河野雅一社長が1989年に立ち上げた放送用映像音響機器企業の一事業部として始まった。この事業部を母体に独立したのが2015年1月。現在はプロドローンが設計から製造まで受託するODM方式をとっている。調査・コンサルから機体の設計・開発・製造、修理やメンテナンスまで、自社によるワンストップでの一括提供が武器だ。

プロドローンはあのクボタも顧客

 プロドローンは空撮や測量、農薬散布で顧客を抱え、代表的な大口客にはあの農機メーカー国内首位のクボタがいる。ほかにも、たとえばプロドローンとアイサンテクノロジーとは、自動走行用マークシステムで協業。車にGPS(全地球測位システム)とカメラを搭載して地図を作成する際、撮影し切れない部分について、ドローンを利用して上空から撮影した映像を組み合わせるシステムを両社で共同開発している。

 ただ規模的には、2015年12月期の売上高でまだ5000万円程度。今2016年12月期に売上高4.5億~5億円、来2017年12月期には売上高15億円で黒字化が目標だ。2メートル以上の大型機、1メートル程度の中型機と小型機を手掛けている。一般的に大型機は高価で、何もついていない基本形の機体のみでも数百万円になり、レーザー測量機をつけるとさらに追加でかかる。

 では、キヤノンMJとプロドローンが手を組めば、一体どのような化学反応が起こりうるのか。まず、メーカーで販売ノウハウの薄いプロドローンにとって、キヤノンMJの持っている全国的な営業網は魅力的。また現状でもプロドローン製のドローンには、「CINEMA EOS」などキヤノン製品が搭載されている。プロドローンは今後、より小型・軽量化されたドローン向けのデバイス供給をキヤノングループから受けることも考えている。「米国でも『プロドローンの製品を見てハードの重要性を感じた』という会社もある」(河野社長)。

■新たな商材を開拓したいキヤノンMJ

 一方、キヤノングループの国内販社であるキヤノンMJにとって、ドローンは新たな商材の候補だ。今回の出資を機に、未開拓だったドローン事業の情報収集も可能になる。

 キヤノンMJの2015年12月期の営業利益のうち、約半分をカメラや交換レンズなどのイメージングシステム部門、3割超をプリンタや複合機などのビジネスソリューション部門が占める。が、国内市場に限られるうえ、ペーパーレス化の進行やスマホカメラの性能向上により、これらは高い成長を見込めるものではない。中期的に伸ばしたいのは、ネットワークカメラなど新規のキヤノン製品群に加え、ウイルス対策ソフトをはじめITソリューションなどキヤノンMJ独自のサービスである。

 いわば今回のドローンもその中の一つ。産業用ドローンの分野には、楽天のほかエアロセンス(ソニーとZMPの合弁)など、多くのプレーヤーが参入しており、混戦模様を見せている。業者が数多く乱立する中、キヤノンMJとプロドローンはどこまで他社と差別化できるか。この異色の組み合わせから目が離せない。

遠山 綾乃

最終更新:10/11(火) 18:30

東洋経済オンライン

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